第11話 蟻の行列
良いお天気ですな。家にこもっているのが惜しいほどの晴天でございます。
ご覧下さいませ。花に蟻が群がっておりますぞ。香り良い蜜で虫を集めて、自身の受粉を手伝わせているのですね。
暑い時期になりますと、蟻をよく見かけますな。
甘い果物や花が、盛りを迎える季節であるからでしょうが。食べ物が腐敗しやすい時期でもあるからでしょうね。腐って柔らかく解体しやすい獲物を狙い、いち早く集まるのです。
蟻の行列を辿ったことは? 小さい頃に一度くらいございません?
追っていくと、分解した獲物を運び込む巣穴に辿り着くのが、まあ普通なのですが。
まれに、何処にも辿り着かない、といったこともございます。
虫の死骸やお菓子の欠片を出発点に、ぐるぐる円を描いて出発点にまた戻ってきてしまったり。
途中で一匹減り数匹減り、沢山いた蟻がいつの間にやら消えてしまったり。
腑に落ちない結果になった、とのお話を伺った経験が、私めは何度かございます。
どこに行ったのでしょうね?
無数の蟻を労働に従わせて、トップに君臨する女王蟻。蟻の築く社会構造は、人間のモノと瓜二つであるらしいですぞ。
切り取った葉を苗床に、キノコというか。菌の一種を食料用に栽培する蟻もいるそうな。びっくりでございます。
また、働き者だけでなく。何割かは必ず、仕事をなまける蟻がいるそうですな。
私めのような、お喋り好きな蟻もいるかもしれませんねえ。あはは。
つい昨日も、黒々と長い蟻の行列を発見しましたので、辿って歩いてみましたなら。
手紙が落ちておりました。
蟻は封を切られた手紙の中から、ワラワラと生じております。
封筒に宛て先が無かったものですから。ちらっと便箋に目を通したのですが。
恋文でした。いわゆるラブレターですな。
蜜のように甘く、くどい言葉が書き連ねてある紙に、蟻が誘われ群がっていたというワケでして。
……あ。面白くありませんでした?
【了】
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