第8話 魔王の正体

アン「さぁ~て、今回の勇者さんはぁ」


アン「おっと、ちなみに薔薇様が書くとかいうのは無いから。そもそも手無いし」


アン「いやー前回は散々でしたね。まあ何があったかなんて思い出せませんが。なにぶん、頭の出来が悪いもんで!」


アン「おっとっと、脱線脱線!さぁ~て、今回の勇者さんはぁ」


アン「魔王の話を書いていこう!」


薔薇「一個前の台詞とも矛盾してるけど」


アン「もうあいつらの話書きたくないもん。勝手に喋るし勝手に進めるし」


魔王は異界にいた。これはいわゆる「魔界」である。魔王が生み出し、支配する世界。


魔王は諸悪の根源である。人間界を支配せんとし、魔物を送り込む。災禍の源…疫病、地震、隕石、噴火、戦争、人心…


結局、永遠図書館の崩壊も魔王のせいである。決して許してはいけない悪、根絶すべき人類の敵、人の心を持たぬ悪魔。


薔薇「はやく書けよ」


アン「…………」


魔王城。ここにその魔王がいる。しかし魔王の正体は誰も知らなかった。そして魔王軍四天王──


火『フッ、永遠図書館が崩壊したか』


水『ホホホ、さすが魔王様ですわ』


地『人間の最大の力は学びにある。それを崩壊させれば我々に勝る事は無い』


風『アハハ!じゃあ僕はもう休んでもいーい?』


薔薇「またなんか出てきた…」


火『おや、魔王様のお達しだ!』


水『ええっ!魔王様直々に!?』


魔王『…………』


薔薇「いるじゃん」


魔王『…………』


魔王『無用の存在、無に帰すべし。』


地『えっ?』


風『な、なにを』


魔王の手から暗闇の光が溢れ出した。四天王は光に包まれ──身体がただの泥と化した。


火『まっ、魔王さまあああ何故……!!!』


水『が……あ…』ベチャッ


薔薇「何してんの?」


魔王『これでよい』


薔薇「よくねえだろ!」


アン「……薔薇様。」


薔薇「はい」


アン「……書けぬ」


薔薇「?」


アン「私には!!もう書けぬ!!!」


薔薇「はい?」


アン「一体どーすればいいんだ!何もかもぐしゃぐしゃだ!何を書いたって結局私の思い通りにはならない!そして彼らは自ら破綻していく!!」


薔薇「落ち着けよ、まだ慌てるような時じゃない」


アン「いいや!私には見える、奴らはこの先何を為す事もなく何の意味も無く生まれて消えていく。その時間は、誰も用がない、誰にも望まれず、何も示さず、存在自体が歪んでいる」


アン「……最もつまらない時間だ。」


薔薇「……」


アン「誰だよ…ビッグ!バン!とかいう馬鹿な言葉から始まって変な宇宙を作ったのは…神とかいうやつが一番適当なんじゃないか……」


薔薇「…ああ。でも放置するわけにはいかない。やっぱり俺が筆を執ろう。」


──魔王、彼は残虐非道な王である。魔物と人間を虫けらのように扱い、四天王であっても殺し、魔界も人間界の事も何とも思わない。ただの自分のオモチャのように扱う。


だからこそ、彼は孤独だった。


続く

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