第7話 過去

幼馴染みと封魔(アルスルの体内)を加えたアルスル一行は第二ヵ国目に行こうとしていた──


アン「薔薇様、前二回でよく分かったんじゃないか?」


薔薇「何がだい?」


アン「結局、過去に遡る者が一番偉いんだ。ビッグバンから物質を産んだやつが全てを決めてるってわけ。」


薔薇「はは、嗤える」


アン「回跨いだら正気に戻れよ」


というわけで今から過去の神話を語ろう──と思うが流石にアルスル達が第二ヵ国目に着いてしまう。


なので第二ヵ国で過去の話を織り混ぜるという荒業をやってのけるよ。


ディアーク『ここは時の国、タイムスプット。ここには世界中の歴史の記録が集まってるという。』


アルスル『へぇ~、母さんや父さんの事も何か分かるかなあ!』


封魔『ハハッ!そんな個人の事があるわけねーだろ!』


幼馴染み『きっとあるよ!なんならお母さんがここにいるかも!』


薔薇「なに勝手に会話してんだこいつら」


アン「物語って知ってるか?」


番人『ようこそ、勇者アルスル様ご一行。皆様の事は既に聞き及んでいます。』


タイムスプットの番人は「永遠図書館」なる場所に連れてきてくれた。塔のような巨大な建物がアルスル達の前にあった。


アルスル『これが図書館…!?』


幼馴染み『な、何冊あるんだろう…』


ディアーク『(…何か収穫があるかも)』


封魔『下らねぇ、そんなに記録することなんかねぇだろ!』


薔薇「一度に一斉に色々思わないでくれないか?」


アン「…善処しよう」


番人『しかし、アルスル様だけに入って頂きたい。』


幼馴染み『えーーっ!?』


ディアーク『チッ』


アルスル『ああ、分かった』


封魔『おっと!オレ様はいるぜ!(体内)』


永遠図書館にはアルスル一人が入った。そこには…宇宙の全ての記録が、螺旋状に詰め込まれていた。


番人『では、最初の一冊。起源の書をお読み下さい』


アルスル『起源の…?』パラ…


起源の書 ──その中の文字は読むよりも前に、脳に直接飛び込んで来るかのようだった。アルスル自身の過去にあった事のように、記憶が埋め込まれた。


薔薇「す、すごい」


……無、そこには無があった。それ以外は何も無かった。


しかし、一点の光が表れ──


薔薇「一体、何が…?」ゴクリ


──物書き『タイトルは何にしようかな』


薔薇「ん?」


アン「あれ?」


──『私はアン。小さな瓶に生けられた薔薇と共に物語を書こうと思う。』


アン「わーーっ!!ストップ!ストップ!」


薔薇「あばばばば」


アルスル『うっ…!!これは、一体…』


──『アン『ああ…アルスル、君は多分これから大陸の五ヵ国を…』』


アン「えーーはじめに言葉ありき光ありき神ありき」シュバババ


永遠図書館『』ビビ…バチバチバチ…


番人『な、なんだ!?塔が…!!』


封魔『おいっ!早く逃げろォッ!!』


永遠図書館『…言葉ありき光ありき神ありきなまむぎなまごめなまたまご…──』ピッ


ドカァァァァァン!!!!!!!!!!


番人『──!!』


……


永遠図書館が崩れ落ちた。タイムスプットの賢者が言うには、何者かの「歴史への介入」が起きたのだという。


それが普段なら、ただ改竄されて終いだった。だが「書を読んでいる時」に起こっては…パラドックスが発生し、記録が意味を為さなくなって永遠図書館が自壊した──


賢者『……恐らく、アルスル様が訪れる瞬間を狙ったのだろう。』


薔薇「いや、違います」


ディアーク『…魔王が、永遠図書館を破壊するために?』


幼馴染み『…アルスル、少しでも何か分からなかったの?』


アルスル『ああ…見えた…あれは』


アン「神が卵をレンジでチンする瞬間だ」


アルスル『──だ』


番人『は…?』


賢者『そんな下らないものが見える訳がなかろう!』


ディアーク『……改竄。』


アン「…………」


薔薇「もう駄目かもしんない」


ディアーク『私達が相手にしているものの恐ろしさが垣間見えたわね。』


ディアーク『魔王は…やろうと思えば私達を消す事も容易いんだ。』


アルスル『ごめん…何も覚えてなくて』


封魔『……』


薔薇「どうする?ほんとに消してやろうか」


ディアーク『消される前に消せばいい』


薔薇「お前が言うと真剣みがあるからやめろ!」


アルスル『そうだな!今現在、俺たちは消えてないんだし!』


アン「あああああなーにが話を織り混ぜる荒業だっていうか何でこんなに融通が利かないんだ!!おかしいだろ!!私は神だぞ!」


薔薇「誰だよ過去に遡る者が一番偉いとか言ったのは」


アン「クソがっ!もういい、後は薔薇様が書いてくれ。私は帰る」


薔薇「どこにだよ!おーい!」


続く

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