第6話 アルスル
アン「退屈だ」
薔薇「はい?」
アン「喉元過ぎれば熱さを忘れる、一時の感情も時の海に薄れていくものだ」
薔薇「はい?」
アン「結局私達は、海の中に生まれて海の中で死ぬ。虚しい存在だと思わないかね?」
薔薇「何が言いたい」
アン「白紙──白紙である時こそ人は海を一望できる。そんな風に思うんだよ。」
薔薇「何がしたい」
アン「今回はアルスルの話を作っていこうと思う。だがディアークの様ではなく。」
薔薇「ほう?」
勇者アルスル、彼の父と母は世界を旅する冒険者である。各地での魔物退治を生業にしていた。
アルスルの父は旅の途中で、ある魔物と戦い戦死してしまった…その因縁ある魔物は今どこで何してるかは別の話である。
薔薇「え?」
さて、相方を失った母は小さな村に定住する事にした。長閑で良い村だ。母はアルスルを父の様に強い男にするべく育てた。
だが母は気づいた。アルスルが魔物と戦う者になれば、父と同じ死を迎えると……。
アルスルは村の幼馴染みと楽しく暮らしていた。母は決心した。父の意志を継ぐのはアルスルではなく、自分であると…。
アルスルの母は旅立った。
薔薇「いや最初に母いたよね!?」
アン「あれは近隣の優しいおばちゃんさ」
また、アルスルの父は一国の王子であった。
薔薇「は?」
その国は魔物によって跡形も無く滅ぼされ、父は放浪を余儀なくされた……。
また、母は然る地の乙女であった。
然る地とは天にある神の神殿である。
薔薇「あん?」
父の国の守護神であった母は魔物に為す術無く討ち負かされ、堕天したのだ。その後は人間として、父と共にいた。
また、アルスルの幼馴染みは魔物の肉体を持っていた。
薔薇「???」
幼馴染みは生まれたての頃、魔の川で溺れかけた。その水を浴び、呑み込んだ身体は見た目は変わらないものの、魔物の強靭な能力を手に入れた。人間のままであるのは心だけであった。
それからというもの、幼馴染みは齢3歳から村を守るために魔物と戦い、力仕事はお手のものだった。アルスルに戦闘技術を教えた師も幼馴染みである。
また、アルスルのいた村はある伝承の地である。
薔薇「おい!何をするつもりだ」
この地でははるか昔、ある強大な魔物との戦いがあった。当時の勇者達が魔物を封印し、それを見張るために残った人々が村の始まりであった。
アルスルが洞窟で語り掛けられた声は封印された魔物のものである。
薔薇「いやお前だろ!」
魔物は永き封印の中、魂が浄化されかかっていた。神を騙りアルスルの身体に力として入った後の吉凶は…アルスルと魔物次第である。
封魔『げへへ、アルスル。お前は俺の加護を使って人間共を支配するんだ』
アルスル『またそんな事言って…お前のおかげで助かってるよ』
封魔『そ、そんなんじゃないんだからねっ///』
薔薇「なんだこれ」
幼馴染み『アルスル!俺を置いて旅に出るなんて酷いじゃないか!』タッタッタ
アルスル『幼馴染み!まさか村から単身走って追い付くなんて…流石、俺の師だな』
幼馴染み(女)『い、いや…そんな、別に好きで来たわけじゃないんだから!///』
アルスル『じゃあなんで来たんだ?』
幼馴染み『ふんっ!アルスルの馬鹿っ!』バキィッ!!!
アルスル『…』(壁にめり込み中)
薔薇「そろそろ帰るか」
アン「どこにだよ」
薔薇「天国か地獄?」
アン「作ってないからねぇよ」
薔薇「それを作れよ」
アン「地獄ならいいぞ」
薔薇「じゃあそれで」
アン「なに?地獄の方がマシって事?」
──続く
アン「おい!逃げんな!」
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