第2話 「一億総白痴化現象」


太郎:さてー、2回目の「ジジババ放談」ですけどもね、なんか今年が始まってすぐ

   に能登で地震が起こってしまってねー、もう大変な始まり方だったよねー。

花子:いやー、もうホントにねー、被災地の方たちにはなんて言っていいかわからな

   いですけど……、お見舞い申し上げます。としか言えなくて、何にもしてあげ

   られないものねー。

太郎:北陸地方もしっかり雪降るところだからねー。国全体としてさ、何とか手を尽

   くして欲しいよね。

花子:そだよねー。なんか他人事に聞こえるかもしれないけど、そんなことしか言え

   ないものね。

太郎:やっぱね、いろんな報道見てると感じるのはさ、政府としてもっとね、早く厚

   く対策取るって言ってあげられないかなって。「最善の努力をします」って言っ

   てる間にすぐ動けないもんかねー。

花子:あのね、場所が場所だけにね、半島だしさ、道が寸断されてるみたいでしょ。

   それで海からとか空からでないと行けないとこもたくさんあるらしいですよ

   ー。そう簡単にはいかないんでしょうよ

太郎:そうだと思うけどよ、なんかその理由自体がさ、言い訳に聞こえてしまってな

   らないんだよね。

花子:いやいや、そんなことないんじゃないの。だってねー、中継見てたら、ひどい

   状態だもの。

太郎:うんそれも良くわかるけどさ、なんつったってよ、リーダーたちがさ、国会議

   員の人たちね、例の「裏金疑惑」でさ、そっちのことばっかりで動こうとして

   ないんじゃねえのかな!そう思わないかってことよ。個人で現地に行ってなん

   かしようって人のことは批判ばっかしてるけどね、自分たちは何なの? ってこ

   とよ。

花子:そうね。そのことも新年早々気になってしょうがないことのひとつだよね!


太郎:もう一つ気になることがあるんだよね。

花子:そうね、あんたは何でも文句言いたい人だからね。黙ってると腹膨れて「王様

   の耳」状態になってしまうらしいから、まあ聞いてあげるよ。どうぞ。


太郎:ニュースだとか情報を伝える手段のことを「メディア」っていうけどね、例え

   ばそれを代表としてテレビで考えるとさ、どうしても視聴率だとか人気だとか

   だけを意識してさ、「ウケ」だとか「話題性」ばっかり追っかけすぎだと思うん

   だよね!

花子:あらま、そんなこと今に始まったことじゃなくて前々からだよー!何を今更っ

   て感じでしょう。だって、テレビ局なんかいくつもあるんだから、面白くなき

   ゃ見てくれないでしょ!ウケナイ番組創ってもスポンサー付かないわけだし、

   当たり前っしょ!

太郎:そこそこ、そこなんですよ!

花子:なにがそこなのさ?

太郎:「ウケればいい」「面白ければいい」ってことがさ、見てる側にどう伝わるのか

   ってことさ。

花子:はぁー! どゆこと?

太郎:その、「はぁー!」ってのやめなよ。聞いてる方は腹立つだろ?まあ、それもテレビの影響だろうけどさ、会話を険悪にさせるだろ?

花子:そう?

太郎:それなんだよ!「一億総白痴化現象」って言葉聞いたことあるだろ? この言

   葉はさ、俺が生まれた頃にね、評論家の大宅壮一という人がね「テレビは非常

   に低俗なものでテレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてし

   まう」というような意味で使った言葉で、もっと強烈な言い方にするとさ、「テ

   レビばっかり見てると日本人はみんな馬鹿になってしまう」という意味さ。

花子:「白痴」ってほんと強烈な言い方。今そんなこと言ったら大バッシングだろう

   ね!

太郎:当時だってかなりインパクトあったんでないかい。なんつったって、テレビ放

   送が始まった頃だからね。でもそれだけにさ、日本全国同じ番組を見てて「面

   白ければいい」「ウケればいい」だけでしかない番組に危機感を覚えたんだろう

   ね。だって、面白さはどんどんマンネリ化してく訳だから、さらにどんどん過激

   な内容になるし、「バカなこと」やりだすに決まってるんだからさ。今ならもっ

   とだろ!

花子:そうねー、何が馬鹿なことかわかんなくなってるかもしれないよねー。

太郎:それこそ「総白痴化」でしょ!

花子:でもそんなこと誰も感じてないよ。

太郎:だから、まずいんだべさ。

花子:あら、珍しくもモロ北海道弁で!

太郎:いやあのね、やっぱさ「メディア」全体をテレビで代表させて言うけどね、や

   り方間違ってるよ。独自性も工夫もなんもかんも手抜きでさ、どっかの「ウケ

   タ!!」と言われてるものシラーっとパクッテるものばっかりなんだから。

花子:あら、あんたも「パクッテる」なんて言葉使うの? 爺さんっぽくないからや

   めなって。そういう言い方。薄っぺらい人にしか見られなくなるよー!

太郎:はいはい、わざとそんな言い方してみたんだけどさ、同じようにテレビの番組

   作りも薄っぺらいと思わないのかい?どの番組見てもさ、お笑い芸人って言わ

   れるタイプの人とかタレントばっかり使ってさ、トーク番組だとかさ、ニュー

   ス番組だとかさ、コメンテーターだとか、ドラマだとか、みんなお笑いやジャ

   リタレって呼ばれてた人ばっかりなんだわ。なんで……? 

花子:ジャニタレでしょ? ジャリタレって言い方じゃ失礼すぎるっしょ!まあ、ど

   っちにしたって使われるのはその人たちが人気あるからでしょ? その人使え

   ば視聴率あがるんだから。しょうがないでしょ!

太郎:そうなんですよ。そこだよね。人気があるから、視聴率が上がるから、ウケる

   から。で、ニュース番組? コメンテーター? ドラマの俳優? テレビ作る

   側としてはさ、それで……いったいどうしたいの? 棒読みで活舌悪いのに、

   あえて俳優として使いたいわけ? 専門的な知識なんかまったくないのに時事

   問題や国際問題のコメントをしゃべらせたいわけ? で、別な番組ではその人

   が馬鹿なトークで盛り上がってるわけなんだよね。

    それ見てる視聴者はどうなるのかなってこと考えない? 

花子:そんなこと言うなら見なきゃいいでしょうに!

太郎:そう、見なきゃいいんだよね。でもね、日本全体を考えたらさ、それでいいの

   かってことさ。何が本物なんだかわかんなくなってしまわないかい?良いもの

   と悪いものの区別がつかなくなんないかいってことさ。

    アイドルで人気があるからって、まったく似つかわしくないドラマの主人公

   になっちゃったタレントをほめ散らすテレビやメディアの白々しさを黙って見

   てていいのかってことさ。日本をダメにすることだよ! それこそ「一億総白

   痴化現象」だよ。

    特に本物を見せられないまんまの子供たちなんかだとさ、何にも違和感覚え

   もしない、考えもしない人間を作ることになってるんじゃないのかってこと

   よ。だって誰が見ても下手なものは下手。中学の学校祭の劇以下だよ!それを   

   どのテレビ局も同じように何で褒めなきゃなんないわけ?


花子:そんな大げさなこと言ってんのあんただけだよ!

太郎:そうだな、俺だけだからダメなんだよ。

花子:だっていいじゃない楽しけりゃ?

太郎:そこなんだよ、白痴化された人間は何にも考えなくていいから楽しいと感じる

   んだよね、なんでも。それがいいのか悪いのかわかんないんだからさ。それこ

   そ、大宅壮一さんたちが恐れてたことなんじゃねえの?!

花子:そうなの?

太郎:俺はそう思いますよ。

花子:なんか私たち二人に似合わない重いテーマになっちゃってますよ。

太郎:いやー、単純なんだ。ちゃんと良い番組創れよってえことさ! ウケ狙いのユ

   ーチューブと変わんない番組創ってどうすんのさ!

花子:ユーチューブだってきちんとしたのあるんじゃないの? あんたもしょっちゅ

   う見てるじゃない。

太郎:はいもちろんそうですよ。でもね、そうじゃないの多いだろ? 公共放送でな

   きゃなんないテレビがそんなのと一緒でいいのかって?

花子:そうね。そういえばそうかなー。ユーチューバーがそのままテレビに出て幅聞

   かせてたり、ずれまくってたりする発言も多いものねえー。

太郎:困ったもんだろ?

花子:だったらどうすればいいと思う? 文句言うだけじゃなんも始まらないっし

   ょ?


太郎:あのね、芭蕉先生に関する話でね『不易流行』って言葉があるんだ。

花子:芭蕉先生好きだね!

太郎:このタイトル『笈(老い)の小文』だからね。で、その意味はね「変わらないも  

   のと変えていくべきもの」みたいなことなのよ。

    日本の良いところは変わるべきでなく、新しく変えていった方がいいものは

   積極的に変えていく。そんな考えで行かないとダメなんじゃないかな。古いも

   のはダメで新しいものに価値があるってことじゃないんだよ。また、古いから

   良いし、新しいからダメってことでもない。

花子:じゃ、何がいいんだかわからないじゃない?

太郎:そう、だからしっかりと考えて研究しながら進めなきゃなんないんだけど、簡

   単にまねして終わりになっちゃうだろ。真似するにしても、何が良いのかしっ

   かり突き止めて真似なきゃなんないのにさ、ただ形だけ飛びついちゃう。ん

   で、なんだかわかんないけど放送しちゃう。結果ウケれば成功で、ウケなきゃ

   失敗で没になる。これじゃ進歩しないし見せられる方は「バカ」になる。それ

   が今のメディアの状況じゃないかい?

花子:ちゃんと考えて勉強しろって言いたいんだね。

太郎:そういうこと。

花子:なあんだ!

太郎:なにが?

花子:たいした小難しいことばっか言っても、結局は勉強不足ってことな訳ね。

太郎:見る見ないにかかわらずさ、全国民に対して発信してんだから、当然そうある

   べきでしょうが!

花子:そうね。当たり前って言えば当たり前だよね。

太郎:そういうことをちゃんとやりましょうよ! ということで、今日は終わり。し

   ゃべりつかれた。

花子:これじゃ、またいっぱいどっかからお叱り受けそうだけど、「ジジババ放談」だ

   から、まあ良っか!!

    ああっ、そういえば思い出したぞ。「総白痴化現象」ってあんたがずいぶん昔

   に書いてた「ショートショート」だっけ? あの星新一真似して書いたやつ。 

   あれに出てたっしょ?

太郎:あれー、よくそんな古いの覚えてたんでないかい! まあ、初めて形にした作

   品だったな。

   『天使のスクリーン』って題名でさ。まあ、珍しそうだから見てみたいっていう 

   変わったのが好きな人はどうご自由に……。



   じゃあ本当に今日はこんなところで。またいつか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る