落とし物

クライングフリーマン

ひらりと飛んだ落とし物

 骨折り損のくたびれもうけ、である。

 もう20年位になるだろうか?

 自転車で帰宅途中、通り過ぎて行った軽トラの窓からひらりと何かが落ちた。

 何かの申込書のコピーだろうか?人の名前や住所が書いてある。

 捨てたようにも見えたが、町内の交番に届けた。

 1ヶ月くらいしてから、電話がかかって来て、「ありがとうございました。」と不服そうな声で言った。

「どういたしまして。」

 電話はすぐに切れた。どうやら、やはり捨てたようだ。車内の灰皿の灰や、火の点いたタバコを捨てる「手合い」の人間と同じか。

 駐在さんに言われたのだろう。お礼を言うように、と。

 勿論、こちらは、お礼の金品が欲しかった訳では無いから、それでおしまいの話。

 吸い殻はともかく、火の点いたタバコを捨てる神経は、いかがなものだろう。

 詳しい数字は分からないが、ポイ捨てタバコが出火原因だった年は毎年である。

 以前、他の文章で書いたが、ろうそくの火の『消し忘れ』や線香の火の『消し忘れ』が原因の火事もある。

 火事は悲惨である。泥棒に入られたとき、「泥棒!」と叫ぶより「火事だ!」と叫ぶ方が効果的だそうである。

 春夏秋冬、この季節だから火事は少ない、なんて季節はない。

「自己責任」の場合もあるが、他人の「無責任」の場合もある。

 インターネット上で大騒ぎになることを『炎上』と呼ぶ。

 ともあれ、道路は『ゴミ入れ』ではない。

 ―完―



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落とし物 クライングフリーマン @dansan01

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