第12話 冒険者ギルド受付のカリンさん

《sideカリン》


 ギルド内はいつもと変わらない静かな空気が流れていた。しかし、突然、冒険者の一人が駆け込んできて、ギルドの空気を一変させた。


「緊急事態だ! ゴブリンダンジョンで異変が起きてる! 地震が続いてるし、ダンジョンが崩れかけてるらしい!」


 ショップで書類整理をしていたカリンは、またダンジョンブレイクが起きたのではないかと急いで、ポーションをかき集める。


 緊急事態の報告は珍しいことではないが、ゴブリンのダンジョンはEランク冒険者がよく通う安全な場所ではあるが、それでもトラブルが起きないとは言えない。


 昨年もダンジョンブレイクが起きて、多くの冒険者が負傷することになった。


「まさか……」


 ふと、ある事実に思い至る。


 ちょうどそのダンジョンに行っているはずの人物、ユウタが頭をよぎった。


「ユウタ君、今日もゴブリンのダンジョンに行ってたはず……」


 彼が何度も挑戦しているダンジョンだ。それに、ダンジョン攻略の様子を配信していると聞いていた。


 彼が危険な目にあっていないか、一気に不安でいっぱいになった。


「そうだ、ユウタ君、配信をしてるかも……!」


 すぐにデスクからスマホを取り出し、ユウタの配信チャンネルを開いた。


 すぐに目に飛び込んできたのは、視聴者数が急激に増えている配信画面だった。コメント欄がひどく荒れている。


『何が起きてるんだ?!』

『大丈夫か?! 地震ってマジでヤバいだろ!?』

『妹ちゃんも心配してるぞ!』


 そのコメントを目で追いながら、配信の映像に釘付けになった。ユウタが慌ててダンジョン内で逃げながら、仲間を置き去りにしたハーレムパーティーを目撃し、その中に取り残された魔女っ子を助けていた。


「……そんな! 緊急事態でも仲間を見捨てるなんて!」


 カリンは呆然としながら、画面の中のユウタの奮闘を見守っていた。ハーレムパーティーが無責任に仲間を見捨てたことに視聴者は激怒している。


 だが、冒険者ギルドとしては有事の際には、自らの命を優先させることが許可されていて、動画内で起きている地震は有事と言える。


 ユウタが女性を助ける姿は勇敢で、賞賛される行動ではあるが、冒険者の教えとしては間違っている。


『英雄じゃん!』

『この男、マジですごい!』

『助けたの!? こんな状況で?!』


 配信を見れば見るほど、事態の深刻さが伝わってくる。


 ユウタは単にゴブリンと戦っているだけでなく、崩壊しかけたダンジョンで命をかけて人を助け、さらに異変の原因にまでたどり着こうとしている。


 これはただ事ではない。


 私は胸を締め付けられるような思いで彼の行動を見つめていた。


「このままでは……!」


 私は立ち上がると、すぐにギルドマスターのオフィスへ向かった。


 普段はギルドマスターと会話する機会はない。だけど、今日だけは焦りを隠せなかった。


 ユウタを助けるためにも、ギルドとして何か手を打たなければならない。


「ユウタ君が命をかけて戦ってるのに……」


 ギルドマスターのドアの前で立ち止まり、深呼吸をしてからドアを叩いた。ギルドマスターは寡黙で、何事にも慎重な人物だ。冒険者たちの間でも一目置かれる存在で、彼が動けばギルド全体が動く。しかし、説得するのは決して簡単ではない。


「失礼します!」


 私はドアを開けた。スキンヘッドに迫力ある顔をしたギルドマスターのオフィスは広く、静まり返っていた。無口で威厳のあるギルドマスターが、いつものように書類を整理している。


「?」


 ギルドマスターは書類から目を上げて、私に問いかける顔をした。私は一瞬躊躇したが、ユウタのことを考えて気を取り直す。


「ゴブリンのダンジョンで異変が起きています。新人冒険者が配信していて、その映像が今、話題になっています」


 ギルドマスターは書類を片付け、彼の鋭い視線がさらに強くなる。


「5名の新人冒険者が取り残されているようです。三人は離脱に向かっていますが、二人は今も戦っています。このままでは彼らの命が危険です。ギルドとして何か対応しなければいけません」


 私は必死に言葉を続けた。ユウタの勇敢な行動がギルドの評判を高める可能性を示しながら、状況を冷静に伝える。


「彼を放っておけば、ギルドの評判を落とすことになります」


 ギルドマスターは無言のまま、じっと私を見つめた。ギルドマスターはゆっくりと立ち上がり、重々しく頷いた。


「今すぐ対応を進める」


 そう言うと、ギルドマスターはオフィスのドアを開け、外に向かって大きな声で指示を出し始めた。


「緊急事態だ!!」


 ギルドマスターの迅速な指示に少し驚いたが、彼の背中を見てホッと胸をなでおろした。ユウタの勇気ある行動は、ギルド全体に知れ渡り、彼を称えるための準備が始まった。


 ギルドマスターが動いたことで、ギルド全体が動き出した。


「ありがとうございます、ギルドマスター」


 その背中に静かに感謝を述べ、ユウタの無事を祈りながら、次に彼が帰還したときのために、できる限りのことをしようと心に誓った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 現代ファンタジー80位になれてました!

 明日もランキングを上げたいので、⭐︎レビュー応援お待ちしてます!


 どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)

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