第6話 レベル2

 外食を終えて、僕たちは家に向かって歩いていた。ファミリーレストランでお腹いっぱいになったサクラは、満足そうな笑顔を浮かべながら僕の隣を手を繋いで歩いている。


 夜風が心地よく、今日一日の忙しさと疲労が嘘のように、穏やかな時間が流れていた。


「お兄ちゃん、今日のお子様ランチ、すごく美味しかったね!」


 サクラは満面の笑みで僕に話しかける。彼女の笑顔を見ると、本当に幸せな気分になる。


「それはよかった。お兄ちゃんもサクラと一緒に食べられて嬉しかったよ」


 僕が笑顔で応えると、サクラは嬉しそうに跳ねるように歩き出した。その無邪気な姿を見るだけで、どんな疲れも吹き飛ぶ気がする。


 そのとき、ふとサクラが立ち止まった。彼女の視線の先にあったのは、小さな雑貨屋のショーウィンドウだった。


「わぁ……お兄ちゃん、見て!あのリボン、可愛い……」


 サクラはガラス越しに、店内に飾られたカラフルなリボンを見つめていた。鮮やかなピンクのリボンが、彼女の目に留まったらしい。


「サクラ、それ欲しいの?」


 僕がそう尋ねると、彼女は少し戸惑ったように視線を落とした。


「うん……でも、今日はお外でご飯食べたから、買わなくてもいいよ。サクラ、我慢できるから」


 サクラはいつも僕やおばあちゃんに気を使って、我慢することが多い。そんな彼女の健気な言葉に、僕の心は温かくなったけど、ここはサクラのために少しだけ贅沢をしてもいいかもしれない。


「我慢なんてしなくていいよ。サクラが欲しいなら、今日はお兄ちゃんが買ってあげる」


 僕は優しく彼女の頭を撫でながら言った。サクラは驚いた表情で僕を見上げ、次第に目が輝き始めた。


「本当にいいの?」

「もちろん。本当はお兄ちゃんも、サクラがそのリボンをつけたらどんなに可愛いだろうって思ってたんだ」


 その言葉に、サクラはパッと顔を明るくして、僕の手を引っ張って店内へと向かった。店に入ると、サクラはピンクのリボンを手に取り、うっとりと見つめていた。


「このリボン、すごく可愛い……」

「サクラなら、もっと可愛くなるよ」


 僕がそう言うと、サクラは恥ずかしそうに微笑みながら、リボンを大切そうに握りしめた。店員さんに包んでもらい、僕は代金を支払う。


 外に出ると、サクラは嬉しそうにリボンを手に持ちながら、ずっと笑顔を浮かべていた。


「お兄ちゃん、ありがとう! サクラ、大事にするね!」

「うん、似合うと思うよ。家に帰ったら、早速つけてみようか」

「おばあちゃん! 髪の毛結んでね」

「ああ、ああいいよ」


 サクラがリボンを大切に持ちながら、はしゃぐ姿を見て、僕も自然と笑顔がこぼれた。

 家族とのこんなささやかな時間が、僕にとって何より大切なんだと改めて感じる。



 家に帰ってサクラを寝かしつけた僕は、今日の成果であるスキルの確認をすることにした。


・レベル2で得られたスキルは全部8つだ。



1、身体強化+1:アクティブスキル、基本的な体力や筋力を底上げするスキル。

 身体強化がレベルアップすると、ダンジョンでの持久力や瞬発力が増し、より長時間強化した状態で戦闘が続けられ、強化度合いもアップしていく。

 ウォーリアの固有スキルの強化を行える。


「なるほど、ウォーリアである僕の固有スキルなんだ。これでもっと戦えるのは嬉しい! それに身体が強くなるってことは、戦闘でも怪我をしにくくなるよな? それはいいな」


2、地頭アップ+1:パッシブスキル、論理的な思考力や柔軟な発想力、問題解決能力といった、基本的な頭の働きの良さが向上するスキル。

 戦闘中の状況判断が素早くなり、考えなくても理解能力が向上する。


「これは助かるかも、僕って昔から要領が悪いっていうか、頭があんまり良くないって父さんにも入れてたんだよな。勉強はできても、賢く生きないと社会は厳しいって。このスキルを取れたのは父さんのおかげかな?」


3、直感:パッシブスキル、危機察知能力や、判断能力が高くなるスキル。

 敵の攻撃を受ける前に予測して回避行動を取れるようになったり、未知の脅威に対しても警戒を高めることができる。


「これは今までで一番冒険者っぽいぞ! 直感力って、何だかかっこいい!」


4、スイング:アクティブスキル、武器を振る攻撃手段で、物理攻撃の精度と威力を向上させるスキル。

 武器を振る速度や角度が鋭くなり、一撃の威力が増す。これにより、ヒノキ棒のような低ランクの武器でも強力な攻撃を繰り出せるようになる。


「物凄く単純なスキルだから、理解も早かったな。これでヒノキ棒の攻撃ももっと強力になるから最高だよな。もっと効率的に敵を倒せるなら、早く次のダンジョンにも挑戦したい」


5、自身の回復(小):パッシブスキル戦闘中に自身を少量回復できるスキル。

 体力の回復量は小さいが、持続的に回復できる点が強み。対象の打撲や擦り傷は秒で治る。骨折も数日で完治する。


「これを取ったからかな? ゴブリンとの戦闘で受けた打撲が治ってるや。それに今日の疲れも昨日よりしんどくない。回復アイテムって高いから、これは助かる!」


6、精神耐性(小):パッシブスキル、精神的な苦痛に対して耐性を高めるスキル。

 精神にストレスを感じても、それに対する耐性が強くなり、苦痛に感じなくなる。


「精神的に強くなれるか、うーん、確かにダンジョンでモンスターと戦うって結構なストレスだからな。怖い思いをしても、次からは冷静に対処できるかも。それに仕事も結構ストレスだから、何が出てきてもパニックにならないようにしないできるかもな」


7、耐久力アップ(小):パッシブスキル、身体の耐久力を向上させるスキル。

 敵からの攻撃によるダメージに耐えられる。痛いのは痛い。長期で活動する際に体力を向上させてくれる。


「たくさん動けるってことは、それだけ仕事もできるってことだよな。それに防御力も上がるなら。多少のダメージは気にせずに前に進めそうだね」


8、シスコン補正:ユニークスキル、妹サクラに対する強い感情によって馬鹿力を発揮する。妹を想うと変態的な力を発揮する。得意攻撃力が上がるわけではないが、とりあえず強い。

 

「これは喜んでいいことだよな? ユニークスキルなんて、普通は手に入らないっていうし。僕のサクラへの愛情がスキルに反映されたってことだよね? それにしても妹への気持ちがスキルになるなんて……。でも、サクラのためなら、どんな困難も乗り越えてみせる!」


 全てのスキルをチェックして、有用なスキルばかりなので、助かった。



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