第5話 初の高額報酬

 ホブゴブリンを倒し、ダンジョン内で手に入れた戦利品を確認すると、そこにはホブゴブリンの牙と魔石が落ちていた。


 ダンジョンでは必ず「魔石」がドロップし、たまに「牙」や「皮」などのモンスターの体の一部が手に入ることがある。


 今日は運が良かった。ホブゴブリンの牙も、魔石もゲットできた。


「やった、これで換金すれば少しは生活も楽になるかもしれない」


 ホクホク顔で僕は冒険者ギルドに向かい、早速換金をしてもらう。


 ギルドに戻ってカリンさんに買い取ってもらった。


「ユウタ君、凄いじゃん!」

「自分でも驚きですよ。10万円か……これで少しは懐が温かくなるな」

「よかったね。念願の新武器買っちゃう?」

「いえ、家族のために使おうと思います」

「そっか、ユウタ君は家族思いだね。ポイントを多めにつけておくからね!」

「ありがとうございます!」


 財布にお札を入れ、いつもとは違う足取りで家路につく。


 電子決算、冒険者銀行に貯めることもできるそうだけど、サクラとおばあちゃんにしたいことを聞いて、叶えてあげたい。


 ダンジョンでの激しい戦闘の疲れも、懐に入ったお金のおかげで少し軽く感じる。


 今日は久しぶりにサクラやおばあちゃんと、外食でも行こうかな。


 そんなことを考えながら家に着くと、玄関先でサクラが出迎えてくれた。


 だが、彼女の顔を見ると、普段の無邪気な笑顔ではなく、涙をこらえているような表情だ。


「お兄ちゃん……おかえり……」

「サクラ、どうしたんだ? なんで泣きそうなんだよ」


 僕は驚きつつも彼女の顔を覗き込むと、サクラは小さな声で言った。


「お兄ちゃんが! お兄ちゃんがデッカいのと戦ってた! 見てて……すごく怖かった……」


 どうやら、サクラは僕の配信を見て、危険な戦いを心配してくれていたようだ。ホブゴブリンとの戦いはかなり厳しいものだったし、きっとサクラには僕が危ない目に遭っているように見えたのだろう。


「そっか……ごめんな、サクラ。怖がらせて」


 僕は優しくサクラの頭を撫でながら言った。けれど、今日の勝利はサクラのおかげでもある。サクラの応援が僕に力をくれたことは間違いない。


「でも、大丈夫だよ。サクラのおかげで、ホブゴブリンに勝てたんだ。本当にありがとう」

「サクラのおかげ?」

「ああ、サクラが頑張れって送ってくれたから、お兄ちゃん頑張れたんだ。本当にありがとう」

「本当?」

「ああ、だから、これからもお兄ちゃんのことを応援してくれると嬉しいな」

「うん! サクラ、いっぱいお兄ちゃんの応援する!」


 サクラは少しずつ笑顔を取り戻してくれた。


 涙を拭きながら「本当? 応援嬉しい?」と小さな声で聞いてきたのは可愛かった。


「本当さ。おばあちゃんもきっと喜ぶよ。今日はお祝いに外食でも行こうか」


 その言葉に、サクラの目が輝いた。僕たちは早速、祖母にも声をかけて、家族三人で外食に行くことに決めた。臨時収入も入ったことだし、たまには贅沢もいいだろう。


 向かったのは近所のファミリーレストラン。店内に入ると、サクラはすぐにメニューを開いて、お子様ランチのページを指さした。


「これ、食べたい!」


 お子様ランチを頼んだサクラは、目をキラキラさせながら待っている。


 その姿を見ているだけで、僕も自然と笑顔がこぼれた。しばらくすると、サクラの前に小さな旗が立ったお子様ランチが運ばれてきた。


 彼女は嬉しそうにスプーンを手に取り、少しずつ食べ始める。


「美味しい?」と僕が聞くと、サクラは満面の笑みでうなずき、「うん! お兄ちゃん、ありがとう!」と言ってくれた。


 その笑顔を見ると、ダンジョンでの辛さや疲れが一瞬で吹き飛んだ気がする。


 サクラとおばあちゃんのために、これからも頑張らないと、そう心に誓った瞬間だった。


 ♢


《sideネットスレッド:最近ちょっと気になる新人冒険者》


 スレッド:最近、気になるEランク冒険者【新人チェック】


 1. [名無しさん]

「お前ら、最近出てきた新人冒険者の配信見てる? なんかEランクのやつが頑張ってるみたいだけど、気になるよな」


 2. [バイト帰りの冒険者]

「ああ、なんか2回くらいしか配信してないけど、地味に話題になってるやつだよな。ヒノキ棒で戦ってる新人がいるって聞いたけど」


 3. [名無しさん]

「そうそう、まだ2回目なのに。武器がヒノキ棒ってw そこまでして配信するのは逆にすごいわ」


 4. [初心者冒険者]

「1回目の配信ではゴブリンと戦ってて、正直見ててヒヤヒヤしたけど、2回目でホブゴブリンに勝ってた。新人にしては悪くないよ」


 5. [名無しさん]

「ホブゴブリンに勝ったってマジ? Eランクで? ホブゴブリンってレベル10相当だから、Fじゃなかった? ヒノキ棒だけど、実力あるのか?」


 6. [実況好き]

「面白くなって参りましたね! 勝てたのはギリギリだったとか? 次は見にいくとしましょうか? 2回目で急に視聴者数増えておりますねぇ。私も次こそは!」


 7. [ファン候補]

「妹さんのコメント見て、馬鹿力発揮するとか、草」


 8. [武器好き冒険者]

「でもヒノキ棒でどこまで行けるか、興味あるかも!」


 9. [名無しさん]

「いや、さすがに新しい武器が必要だろ?w でも金ないんじゃない? 2回目の配信の時、ホブゴブリンから魔石とかドロップしてたみたいだけど、それで買えるかな?」


 10. [道具屋勤務]

「いや、ギルドで換金してるだろ? 多分10万円くらいはあると思うよ」


 11. [ベテラン冒険者]

「Eランクにしては頑張ってるとは思うけど、ほかの新人と比べてどうなんだろうな。最近の新人、みんな結構いい装備持ってるし、見栄えもいい配信してるやつ多いだろ?」


 12. [実況初心者]

「たしかに、他の新人と比べると地味ですよね。逆にそこが面白いっていうか。ヒノキ棒でギリギリの戦いしてるところに、ある意味リアリティがあるし」


 13. [名無しさん]

「あとさ、あの配信者ってバイト帰りにダンジョン行ってるらしいよ! それ聞いてなんか応援したくなったわ。ダンジョンで戦ってバイトまでこなすとか、体力ありすぎじゃね?」


 14. [ギルド見習い]

「バイトの後にダンジョンとか、普通にすごいですよ!? 私なんて学生時代にバイトだけでヘトヘトなのに、冒険者さんすごい!」


 15. [ギルド職員]

「ちなみに、最近他の新人冒険者も目立ってきてるらしいよ。このヒノキ棒の子は特に視聴者の成長見守りタイプだな。2回しか配信してないのに、次が気になるんだよな」


 16. [名無しさん]

「確かに、装備豪華な新人はたくさんいるけど、逆にそこらへんの金持ち新人よりもこの頑張ってるタイプが面白いかもな」


 17. [装備オタク]

「まあ、さすがに次のダンジョンからは武器新調しないと危ないだろw ホブゴブリン相手にギリギリだったんだから」


 18. [名無しさん]

「次の配信がどうなるか気になるよな。ヒノキ棒を強化するのか、ついに新しい武器を手に入れるのか。次が楽しみだわ」


 19. [冒険者ギルド関係者]

「実は他にも新人が結構いて、その中でも残るといいな。次はどんな戦いになるか気になるし」


 20. [ファン見習い]

「新人配信さんはみんなチェックです!」


 21. [実況マニア]

「最近さ、新人冒険者ってみんな強い武器揃えて派手にやるから、逆にこういう地味に頑張ってるやつが目立つんだよな」


 22. [名無しさん]

「そうそう、そういう努力型が意外と後々強くなるんじゃね? ヒノキ棒であれだけやれるなら、強い武器持ったらどうなるか楽しみだわ」


 23. [武器職人]

「まぁ、俺的にはそろそろヒノキ棒卒業してくれって感じだけどなw 次の配信でどんな武器持ってるかが見もの」


 24. [冒険者養成校生徒]

「僕らも次に続きます!」


 25. [名無しさん]

「次の配信では妹の応援もまたあるかもしれないし、それも見どころだな。頑張れ、ヒノキ棒の新人!」

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