第4話

 二日目のダンジョン配信が始まった。


 昨日は緊張して上手く話せなかったけど、今日は頑張るぞ!


 視聴者数が少なく、冷やかしのコメントも多かったけど、最後は皆さんフォローしてくれて、視聴者になってくれたんだ。


「えっと、本日も配信を始めていきます。ユウタです。昨日に続いて、ヒノキ棒でゴブリンを倒していきたいと思います! 初心者配信者の戦いをご覧ください!」


 昨日と同じ四人の視聴者が見てくれている。それだけで、なんだか嬉しい。誰かに見守ってもらっていると思えるからだ。


「えっと、Eランクダンジョンのゴブリンは、巣を作る性質があって、この辺り一帯を縄張りにしているそうです。ちょっとだけマメ知識です」


 俺は昨日勉強したことを話しながら、進んでいく。


『それぐらいは知ってるぞ〜』

『ルーキーファイト!』

『お兄ちゃんだろ! 負けるなよ!』


 昨日は冷やかしをしていた三人が応援してくれている。 なんだか、それが温かくて嬉しい。


「それでは戦闘に入ります!」


 目の前にゴブリンが現れて、僕はヒノキ棒を構えた。


 昨日は初心者講習を受けた後の初めての戦闘だったから色々と緊張したけど、今日はカリンさんと話して、ヒノキ棒で戦ってみる決意をしたことを思い出す。


 そして、バイトの嫌な人たちのことを思い出す。


「俺だって好きでトロいわけじゃないぞ!!! 陰キャで悪かったな!」


 バイトを始めたのは、一週間前だ。


 正直、まだまだ仕事内容を覚えていない。それなのに、とことん嫌気がさすほどに社会っていうのは弱者に対して厳しい。僕は容量が悪い。それぐらい自分でもわかってるんだ。


『おうおう、鬱憤溜まっているねぇ〜』

『はは、いいぞ! もっとやれ!』

『社会で生きた者だな』

『色々と苦労されているんですね!』


 コメント欄では、同意してくれたり、笑われたりしている。


 だけど、ゴブリンを殴りつける際に、今日のバイトで思ったことを叫びながら殴るとスッキリできた。


「ふぅ! えっ? あっ、レベルが上がったみたいです」


 昨日に続いて、10体ほどのゴブリンを倒したところで、レベルが上がった。冒険者になるためには、講習で弱いモンスターを倒すことでジョブを習得できる。


 僕はウォーリアという職業を習得した。


 習得して初めてのレベルアップだ。レベルは、モンスターを倒すと上がるのだと講習で教えてもらった。


「ステータスオープン!」


 ダンジョンができて、モンスターを倒した人はレベルアップという現象と、ステータス魔法が使えるようになる。ステータス魔法は、自分の能力が見える魔法だ。


 名前:ミタライ・ユウタ

 年齢:18歳

 ランク:Eランク冒険者

 職業:ウォーリア

 装備:ヒノキ棒、動きやすい服

 能力:身体強化

 SP:15


 ここからレベルが上がったことで、SP(スキルポイント)が得られて、自分の身体能力を向上させられるようになる。


 ・身体強化+1

 ・地頭アップ+1

 ・直感

 ・スイング

 ・自身の回復(小)

 ・精神耐性(小)

 ・耐久力アップ(小)

 ・シスコン補正


 うわっ!? 一気にスキルが増えたぞ。


「えっと、皆さんを放置していて、すみません! レベルが2になりました!」


『おいおい、大丈夫か? まだレベル2かよ』

『レベル2って何ができるの?』

『レベアップ、おめおめ』

『おお! おめでとうございます!』


「ありがとうございます。新しく8個のスキルを習得できるみたいです! 一応全部習得可能なので、スキルを習得しちゃいますね!」


 視聴者さんを待たせるのも悪いと思ったので、スキルを確認もしないで、全て習得した。


『確認しないで大丈夫か?』

『確かに変なスキルもあるとかないとか?』

『ハゲになってしまうスキルがあるらしいぞ!!』

『ちゃんと確認してください!』


 コメントが一気にたくさん来て、読めなかったけど、みんな興味を持ってくれているようでよかった。


「さて、せっかくレベル2に上がったので、張り切ってゴブリン退治をしてみます!」


 魔物を倒すときに、バイトの鬱憤を晴らして、レベルも上がって、しかもヒノキ棒は壊れないで、ゴブリンを殴り続けられる。


 案外、これは悪くないんじゃないか?


「うわっ!? 大きい!」


 意気揚々と進んでいくと、大きなゴブリンが現れた。


『うわっ?! あれって、ホブゴブリンじゃないか?』

『マジかよ! 新人が相手していい相手じゃないぞ!』

『逃げろ!』

『逃げてください!』


 コメント欄が激しく荒れ出して、僕も逃げるために一歩後へ下がったところで、石を踏んでしまう。


「うわっ!?」


 大きな声を出してしまったことで、ホブゴブリンに気づかれた。


『GYAAAAAAAA!!!』


 叫び声をあげて、こちらに迫るホブゴブリン。


 恐怖でパニックになり動けない。


 殺される!


『お兄ちゃん、頑張って!』


 不意に流れてきたコメントを見た瞬間、体が熱くなった。


 間違いない、サクラだ! サクラが僕の戦いを見てる?!


 視聴者の数が五人になっていて、サクラがいるのがわかるだけで、僕は自然と笑顔になった。


「ありがとう、サクラ」


 心の中でそうつぶやき、僕は立ち上がっていた。


「身体強化+1! 直感! ヒノキ棒スイング! そこっ?!」


 ホブゴブリンが殴りかかってきたのをかわして、思いっきり脛に向かってヒノキ棒をスイングする。


 サクラが見てるんだ。お兄ちゃんだからかっこいいところを見せないとな?!


「スイング! スイング! スイング!」


 新しいスキルスイングで、ヒノキ棒を振るスイングするだけで威力が上がっている。それに耐久力アップのおかげで全然疲れない! 何度でもヒノキ棒を振り続けられるぞ!


「お兄ちゃんは負けないぞ!」


『お兄ちゃん、頑張って!』


 コメントが画面に流れてくる。サクラの応援が、僕にさらなる力を与えてくれている。


「大丈夫だよ、サクラ。お兄ちゃん、頑張るから」


 そう言いながら、僕は前方のホブゴブリンレベル10相当をレベル2で撃退した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 久しぶりの現代ファンタジーです。

 私の読者様なら、似た話がちょっと匂うかもしれませんw


 一応、この話までが序章として、書き上げたものです。


 一気に投稿したのは、ここまで読んで欲しいなと思ったからです。


 楽しく読んでいただければ嬉しく思います!

 今後の投稿はゆっくりして行きます。

 どうぞお付き合いくだされば幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

義妹の応援が僕を救う 〜覚醒したお兄ちゃんはダンジョン配信で人気者へ〜 イコ @fhail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ