第10話 ウシ國社攻略戦
第三の策は、実は数日前に遡る。
巫女達を国都に召し出した後、俺は侍従長のカラスを伴って、ウシ國の
護衛には
その総勢が見事に全員、
(前世で街中歩いたら、きっとモーゼの奇跡のように人波が割れるんだろうなぁ)
もっとも作戦行動中なので、今は丹念に赤土を混ぜたクリームみたいなものが、全身に塗られている。
すると
俺は未だ身体が不自由なままであったため、脇の高さに合わせて作ってもらった簡易的な松葉杖を用意して貰った。
更には王族専用の輿に乗せてもらって、全軍の指揮権を委ねられている。
当地の
四十名程の兵士を中心とした部隊には、手分けをして
俺を中心とした残り六十名の部隊は、
数刻して二名の
報告によると、残された巫女は侍女達がほとんどで、人数は二十名程度が残されているという。
斥候に出した部隊を一旦帰陣させ、俺は作戦を伝えた。
まず部隊の内の十名は、雑務で
次の二十名は侍従長カラスを隊長に
残りの三十名は遊軍を兼ねて、
「今回の作戦で重要なのは二つ。一つ目は決して死者を出さないこと。二つ目は決して火を放たせないこと。それ以外については今回の作戦の指揮官の侍従長カラスの現場判断を仰ぐこと。今回の作戦はウシ國の安全を図るのに重要となる。各員の働きに期待する」
俺は以上のように、作戦内容を訓示した。
侍従長のカラスは、一人残る俺を心配するように目線を送ってくると、
「恐れ入ります。
(誰かに似ている気がするんだよなぁ…)
俺は申し出てくれた、
「
俺は得心したので、
(まぁ
俺は内心では、安全な後方でのお留守番気分で居たので、自分の立場というものを改めて認識した。
改めて作戦開始の指示をすると、手慣れたように各部隊は
俺は輿に座ったまま、隣で仁王立ちしている
「今回は護衛を申し出てくれてありがとう。オクウは侍従長によく似てるね」
隣の
「やはりどこか似ておりますか?皆にはあまり似てないと言われますが」
確かに侍従長はスリムだけど、オクウはどちらかというとマッチョだもんな。
顔立ちもきっと母親似なのだろう、柔和な表情が印象的だ。
「よく似てると思うよ。…その気配とか…」
俺は言葉を濁しながら、そのあとに会話を継ごうとした途端、茂みの奥に気配を感じてそちらを見遣った。
同時に
「あはははは…。失礼いたしましたぁ」
茂みの奥から両手を上げて、敵意が無いのをアピールしながら巫女装束の若い女性が現れた。
「そこで止まれ。それ以上近づくなら容赦しないぞ」
俺はお互いを刺激しないように、ゆっくりとした口調で巫女さんに訊ねた。
「えーっと、ひょっとして貴方は
すると、こちらに跪いて仰々しく挨拶の口上を述べ出した。
「お初にお目にかかります。わたくしは
俺はやれやれといった風情で、敢えて気軽な口調で答えた。
「
「それは手っ取り早いご提案で、わたくしも嬉しい限りですわ」
なんて言いつつも
俺は
「
(うーん。きっとお互い一歩も引かないんだろうなぁ)
俺はそんなことを考えつつ、
巫女装束は薄手ではあるが、色々と武器や暗器を忍ばせるゆとりも持たせている。
特に胸元には短い武器を携帯していそうだ。
(きっと
しかし、相手も
どうせあと半時も経てば、兵士達も帰還してくることだろう。
最初に戻ってくるのが侍従長カラスなら後を任せられるが、現場指揮官を任じてしまったので戻ってくるのは最後の方になるんだろう。
そこで諦めて、俺が交渉の矢面に立つことにした。
「えっと…
俺は時間が事態を解決することは確信していたが、相手は宗主国の高位の巫女ともなると、無用な揉め事を起こすことは極力避けたかった。
「重ねがさね
気軽に応じると、
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…。
足元にはこんなにどこに隠せるのだろう?って数の得物が
さすがに俺も呆気に取られていると、
(なんか俺の周りって、何でこんな人ばっかりな訳?)
まぁ、先程までお互いから発せられていた殺気みたいな気配も、きれいさっぱり無くなっていたので、俺は改めて
「じゃあ…改めまして、
その問いには答えずに、意外にも袖を口元に充てて、クスクス笑いながら言った。
「ウシ國の
(そんな気軽に呼び捨てに出来る訳ないだろ!)
心の中で壮大に突っ込みを入れながら、苦笑いを浮かべつつも何とか円滑に交渉に移りたいと考えていた。
「それじゃあ、巫女…
「ウ・ズ・メ!…ですわ」
すかさず突っ込みを入れてきた。
カチャッ、カツッ…
隣の
(きっと仕える主を侮辱してるのを見て、腹を立てているんだろうな。その気持ちすっごく分かるけど…今は落ち着こうね)
俺は心の中でそんな風に願っていると、
その中には侍従長カラスの姿も認めたので、俺は心の底から安堵していた。
(あれ?ウズメさんって、このタイミングまで待ってたのかなぁ?)
今回の作戦に参加していた
もちろん一部の兵士は
侍従長のカラスが、捕縛した年嵩の巫女を引き連れてやって来た。
そして
すると
「此度の
再度、深々と一礼すると
侍従長のカラスは改めて、近くに寄って小声で囁いた。
「この
(ウズメさん?名前呼びの突っ込みは?)
俺は
年嵩の巫女…
「
(????????)
(あれ?俺の作戦は?…そう言えば嫌に全軍の引き上げが早かったな…って、あれっ?ひょっとして…それって出来レース過ぎるでしょ!)
奥の兵士からは色々なところから、声が聞こえてくる。
「
「俺の部隊も被害もなく、アッサリと終わったぜ」
「儂は若い頃に先代様と共に戦場を駆け回ったもんじゃが、
あちらこちらから聞こえてくる声は、称賛するものばかりだった。
(やめてぇー。
俺が恥ずかしさを堪えていると、
「ウシ國の
(あれ?さっきまでの名前呼びネタはどこへ行った?)
そんな突っ込みどころ満載だったが、努めて冷静にこう答えた。
「全て
「この
俺も端的に答えた。
「
「それでは騒がしくなる前に、あたしと
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