第二話「セドナが逮捕される」

彼女は党の中央建物の広い廊下を進んでいた。大きな木製の扉に向かう彼女の後ろには、重い容器が引きずられ、その音が響いていた。廊下は国家儀式に忙殺される官僚たちのささやきで満ちていた。虚ろな演説、果てしない書類作業、進展なき未来への空虚な約束。彼女が委員会室の大きな扉に近づくにつれ、内側からの声が一層大きくなっていった。中では総書記が演説の真っ最中で、その響く声は、党の第13次五か年計画の成功と栄光ある未来を詩のように称賛していた。彼の一言一句の後に拍手が響く。彼女にはそのパターンがよく分かっていた。話し、間を取り、取り巻きが歓声を上げ、それを繰り返す。ただの儀式でしかない。毎日、毎年続く同じ虚しさ。彼女は扉を力強く押し開け、その音に驚いた群衆が一斉に振り返った。悪臭が彼女の周りに黒い雲のように漂っていた。総書記は太った男で、厚い口ひげが顔に広がり、師匠ベアトリサの家に今でも掛けられているスターリンの肖像と奇妙なほど似ていた。彼は壇上に立ち、両手で台を握りしめながら、突然の中断に目を細めた。部屋は一瞬で静まり返った。


「何のつもりだ?」総書記が苛立ちを含んだ声で尋ねた。セドナは一歩前に進み、手袋をはめた手で容器をしっかりと握っていた。


「証拠だが」彼女は大声で言った。その言葉は部屋中に緊張を引き裂いた。委員会の委員たちは座席で落ち着かずに動き、視線をセドナと総書記の間で行き来させた。何かが起ころうとしている、それは決して起こってはならないことだと感じ取っていた。


総書記は眉を上げ、口ひげが微かに動いた。「証拠?何の証拠だ?」その声には嘲りが混じっていた。まるで状況の不条理さに愉快ささえ感じているようだった。セドナの声は揺るぎなく、鋭かった。


「党の腐敗の証拠だ。お前の大切なノーメンクラトゥーラが、お前の目を盗んで、いや、むしろお前の承認を得て進めている大麻密輸計画の証拠だ」


部屋中にざわめきが広がったが、セドナは言葉を続けた。彼女はさらに一歩前へ進み、総書記に鋭い視線を投げかけた。「この容器には、その計画の残骸が入っている。だが、それだけじゃない。これが今のお前たちの党だ。汚物だ。廃棄物だ。お前たちはここで国家の輝かしい未来を説くが、外では民衆が飢え、富裕層は肥え太り、党のエリートたちは民衆の苦しみを利用して贅沢を貪っているんだ」


総書記の顔は暗く変わり、その声には怒りが満ちていた。「タボリツカヤ、お前は越えてはならない一線を越えたぞ!」


「まだ始まったばかりだけど」セドナはすぐに返した。彼女は壇上に上がり、容器を講壇の横に置いた。


委員会の委員たちは、彼女が容器のプラスチックを一枚一枚剥がしていく様子を、恐怖に目を見開いて見つめていた。悪臭が彼らに届いたのは、中身が見える前だった。部屋中に広がる強烈な悪臭に、何人かの委員が口を押さえた。「何しているんだ!」委員の一人が叫んだが、セドナは無視した。最後の一枚を引き剥がすと、容器の中身が現れた。どろりとした人間の排泄物が溢れ出し、その臭気が部屋中に充満した。


「これが、お前たちが国を変えた結果なんだ」セドナは叫んだ。「どんなに綺麗に飾り立てようとも、その中身はただの汚物!」


総書記の顔は怒りに染まり、彼は声を荒らげた。「狂っているぞ!誰か、こいつをここから追い出せ!」だが、セドナは止まらなかった。彼女は容器を持ち上げ、痩せた身体からは想像もつかない力で、その中身を委員会の部屋の床にぶちまけた。汚物は病気のように広がり、磨き上げられた大理石の床を汚し、逃げ惑う党員たちの足元を汚した。


総書記の側近たちが彼女を制止しようと駆け寄ったが、セドナは彼らを振り払った。「お前たちは民衆を裏切ったんだ!」彼女は叫び、その目には狂気が宿っていた。「お前たちは人々の命を、未来を奪った!社会主義を約束しながら、与えたのは貧困と絶望だけだ!」


総書記は壇上から後ずさり、恐怖と嫌悪の入り混じった表情で、汚物が自分に迫ってくるのを見つめていた。「早くこいつを追い出せ!」再び総書記が叫んだ。その声は今や恐怖に震えていた。


セドナは拳で講壇を叩き、その声は怒りに震えていた。「父は、より良い世界のために戦って死んだ!彼は、民衆と共に歩む党を信じていた!だが今、お前たちは民衆を見捨て、この国を焼け野原にして、何もかもが崩れ落ちようとしている!」


ようやく側近の一人が彼女を押さえ込み、その腕を背後にねじり上げた。「これで終わりではない!」彼女は叫び、怒りに燃える目を委員会に向けた。「民衆は立ち上がる!党は崩壊する!その時、お前たちは自分たちが生み出したこの汚物の中に埋もれるんだ!」


側近たちは彼女を部屋から引きずり出し、ブーツの音が冷たい大理石の床に響いた。だが彼女の視線は一度も委員会の委員たちから離れることはなかった。彼女は笑い続け、その笑い声は冷たく無機質な建物の壁にこだまし、彼女が解き放った悪臭と混じり合っていった。彼女の頭は高く掲げられ、誇り高く、屈することなく、まるで人形のように引きずられていった。廊下に出るとすぐに、事態は一変した。その笑いは冷酷な暴力によって迎え撃たれた。扉の前で黙って立っていた警備員たちは、冷徹な動きでセドナを壁に叩きつけた。彼女の頭がコンクリートにぶつかり、鈍い音が響いた。舌を噛み、血が口の中に広がったが、それでも彼女は笑みを浮かべた。その唇には軽蔑の笑みが広がっていた。彼らは言葉もなく、ただ殴り始めた。最初の一撃は彼女の肋骨に当たり、鋭い痛みが走った。息が詰まるが、彼女は声を上げなかった。次の一撃が腹部に入り、息が止まった。拳は彼女の体に降り注ぎ、ブーツが足や脇腹、頭を蹴りつけた。それでも彼女は声を出さなかった。殴られるたびに、彼女の正しさが証明される気がした。党は腐っていると、彼女が訴えた通りだと。彼女は殴られるたびに微笑み続け、血が顎から滴り、服を赤く染めていった。


「もっと叩け」彼女は心の中で呟いた。「打たれるたびに、お前たちの帝国にはまた一つ亀裂が入る」守衛たちは容赦なく、規則正しく暴力を加えてきたが、彼女の心は決して砕かれることはなかった。ここで、今、折れるわけにはいかない。何分が過ぎたのか、それとも何時間だったのか。痛みの中で時間は意味を失った。ついに、永遠にも思える時間が経ち、殴打が止んだ。セドナは床に倒れ込み、息を荒くしながら横たわっていた。体は完全に打ちのめされていたが、頭の中はまだ冷静だった。重々しい足音が近づくのが聞こえた。それは、KGBの要員たちだ。軍人のように硬直した動きで、一目でそれと分かった。彼女を殴った守衛たちは、すでに仕事を終えたかのように脇へ退いた。


KGBの将校が二人、黒いコートを羽織り、まるで腐肉をついばむカラスのように現れた。彼らは無言で、セドナを立たせ、薄暗い長い廊下を引きずっていった。彼女の頭は前に垂れ、腫れた唇から血が滴り、床に落ちていった。消毒液と冷たい鉄の匂いが彼女の鼻を満たした。彼らは政府の建物から彼女を運び出し、待機していた黒い車へと乗せた。誰一人として口を開かないまま、車はKGBの本部へ向かって走り出した。車内は静まり返り、セドナの体は道の凸凹を通るたびに激しく痛んだ。肋骨が浅い息のたびに悲鳴を上げていた。左右には要員が座っていたが、その顔には何の表情もなく、彼らの目はただ前方を見据えていた。彼らにとって、セドナはただの反逆者、裏切り者に過ぎなかった。


だが、セドナは違った。彼女は殉教者だ。そして、その名を誇らしくも掲げる覚悟だった。たとえそれが彼女の命を奪ったとしても。本部に到着すると、彼女は車から引きずり出され、誰の目にも触れぬように脇道から建物へと連れ込まれた。冷たい11月の風が彼女の顔を刺し、彼女の体を引っ張っていった。彼女はかつてこの場所に来たことがあった。犯罪の世界に足を踏み入れた最初の頃のことだった。だが、今回は違った。今の彼女は犯罪者ではなく、国家の敵だった。彼女は建物の地下へ連れて行かれた。そこは湿気に満ち、壁は囚人たちの絶叫を吸い込んでいるかのようだった。連れて行かれた部屋は小さく、ほとんど牢獄のようなものだった。中央には一脚の椅子があり、それは床にしっかりと固定されていて、上からはちらつく厳しい光が照らされていた。彼らは彼女を椅子に押し込むと、冷たい金属で手首と足首を鎖で固定した。一瞬、部屋には静寂が訪れた。セドナの呼吸は荒く、打ちのめされた体は寒さと痛みで震えていた。顔は腫れ、片目はほとんど閉じかけており、唇は裂け、血で覆われていた。それでも、彼女は頭を高く上げ、挑戦的な目つきで部屋を見回した。その時、ドアが軋む音を立てて開いた。一人の男が入ってきたが、その顔は影に隠れていた。彼はゆっくりと、慎重に動き、セドナの前で立ち止まった。何も言わず、彼は彼女の顎に手を添え、顔を上げさせた。


上からの光がちらつき、彼の顔がかすかに照らされた。若い男だった。彼の目に漂う残酷さには不釣り合いなほど若い。彼の指が彼女の顎に食い込み、青あざができるほどだった。「セドナ・タボリツカヤ」と彼は、まるで会話をするかのような滑らかな声で言った。「総書記はお前に非常に不快感を抱いている」


セドナの血まみれの唇が、にやりと歪んだ。「それでいい」と彼女は弱々しくも軽蔑に満ちた声で返した。「彼はそうあるべきだ」男の目が暗くなり、彼は顎から手を離して直立した。彼は部屋の隅に向かって手を振り、二人の男が入ってきた。彼らは小さなケースをそれぞれ抱えていた。セドナの笑みは、その時、薄れていった。彼らが持ってきたものは拷問道具だった。工具、苦痛を与えるための器具だった。彼らはケースを開け、中に入っているものを並べた。ペンチ、メス、針、クランプ、ワイヤーが整然と並べられており、そのすべてが厳しい光の下で冷たく輝いていた。KGBの要員は慎重に道具を選び、一番細く、鋭い針を手に取った。それをじっくりと眺め、まるで宝物でもあるかのように指で回した。


「お前がなぜここにいるか分かるか?」と彼は、今度はまるで子供に話しかけるように優しい声で尋ねた。セドナは答えなかった。要員はさらに近づき、針を手にしたまま微笑んだ。「お前は騒ぎを起こし、党を侮辱し、総書記を辱めた。そして今ー」彼は一瞬言葉を止め、針を彼女の指の下に当てた。「今、二度とそんなことができないようにしなければならない」


彼は素早く針を彼女の指の下に突き刺した。セドナの体が反射的に跳ね上がり、痛みが彼女の腕全体に燃え上がるように広がったが、彼女は歯を食いしばり、叫び声をあげなかった。要員はその挑戦を楽しんでいるかのように微笑んだ。そして、次の指に針を刺し、その次の指にも同じことを繰り返した。針を差し込むたびに、さらに深く、わずかに捻ることで痛みを増幅させた。痛みは激烈だったが、セドナは彼の思うつぼにはならなかった。彼女は叫ばなかった。時間が溶けていく中で、拷問は続いた。針、クランプ、電気ショック、すべてが痛みの交響曲となって彼女に襲いかかった。彼女の体は震え、筋肉は痙攣し続けたが、彼女の心は鋭く、ただ一つの思いに集中していた。彼らは決して私を折ることはできない、と。ようやく、永遠のように感じられた後、拷問が終わった。要員は彼女の前に立ち、汗が額に滲んでいた。


「彼は膝をつき、再び彼女の顎を持ち上げた。「お前は強いな、セドナ・タボリツカヤ」彼は、まるで賞賛するかのように静かに言った。『だが、お前もいずれは折れる。皆そうだ」セドナは血を吐き出しながら、かすかな笑みを浮かべた。彼女の声はほとんど聞き取れないほど弱々しかったが、その中には不屈の精神が込められていた。「私の勝ちよ」彼女は、かすれた声で囁いた。「いつか、人々は真実を見る……。お前たちが崩れ去るのは時間の問題だ」一瞬、要員の顔に動揺が走ったが、それもすぐに冷たい微笑へと戻った。彼は立ち上がり、背後にいる男たちに目配せをした。「連れて行け」彼は命じた。「明日また続ける」男たちは彼女の鎖を外し、ぐったりとした体を引きずるようにして部屋から連れ出した。セドナの意識は朦朧としていたが、彼女の心は一つの考えにしがみついていた。戦いはまだ始まったばかりなのだ。

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