おんがくうたかまきり。

@DojoKota

おんがくうたかかまきり。

音楽。歌。カマキリのしたいようなセックス。カマキリの死体。死んだはずのカマキリは死んだままだった。それでもいいかなと思っていたので、ずっとポケットの中に入れておいた。神様。不寛容。神様の前髪。むしり取ったなど。日々の思い出に想いを巡らしている。すると、ぽつぽつと光ってくるものがある。真夜中の電球灯島全体に散らばっている電灯蛍光灯が燃えている。そんなことすべてどうでもなるくらいざざざざざんとかそういう音で波が押し寄せてくる。砂浜があけえなく線文字のジグソーパズルのピースみたいに打ち砕かれる。しかし、ふわりと着地する。昨日は私は線形代数。そういえば粘性力学についての本などを読んでいた。くりかえしくりかえし読んでいた。部屋には数式とか図式とか空想の産物とかをぬいぐるみの表面積などに浮かび上がらせている最中であった。しかし、あたしは、そんなことをずっとやっていた。それでいいかもしれないのだった。机の引き出しには、何にもなくって飴玉一つ口の中に放り込んでおいたら溶けていくのだった。初なのか。とかそういう儀式が執り行われている最中に生まれてきた二の足が生えてきた。胴体が。とかさ。そんなことをあたしは考えつつ、葬儀場を右から左に。左から右に。

ああ。

ああ。とか思った。あたしは。何にもないような気分になり風呂に浸かった。風呂が風呂が。風呂敷包み。風呂敷包みで風呂を包んでろふろふろふろふ。

あたしは、右足が痛かった。けれども、あたしは、散歩に出かけた。道が曲がりくねっていた。けれども、曲がりくねっているっていっても、マイケルジャクソンのような華麗なステップが必要なほどにそんな曲がりくねってはいないのだ。だから、まあ、わりとゆったり歩いた。ゆったり歩いている私の手足が、ゆったり、と、伸びて。

伸びて。

背が伸びているわけではなかったかもしれないけれど。しいていうならば、亀の甲羅から亀の首が伸びて伸びてゆく様にあたしの状態は似ているはずであった。さあ。

さあ。

島をぐるりと一周経巡った。頭の悪い島民たちは豚のように。しかし、豚はこの島には一頭も。牛ばかりがいた。牛を飼う。カウを飼う。カウかう。かうかうかう。そんな町だ一大都市だ。すごく牛がいっぱいな島。この島の首都はすごく牛がいっぱいでした。ツノとツノとの間に人間が挟まってしまうくらいに牛が犇いていた。それは、どういう状況なのか、というと、エレベーターに乗ると先客と牛。高校や中学など部室の中にも牛。満員電車に、牛。だから、この島は、ゆっくりとうしばまれている。

うしばまれているのだろうか。ほんとうに。

わからないほどに、牛。

どうしようか。迷子になってしまいそうだ。あたしは、ぼんやりといつも、歩いていて、ぼんやりと、日光浴をしていて。夜がやってきて、夜の中に光があって、ぴかぴかしていた。

全てを見つめている気分になるほどに、全てを見つめている気分になるほどに。犬を。犬だ。

光が、光だ。

空気が、拳銃の中に詰め込まれて。拳銃を握っているとなんだか体温ひとつ分のあたしがとなりにもう一人、いるかもしれない。けれど私はぼんやりとバス停留所。

バス停留所で、わらっている。草を食べている。わらっている。いつもいつもいつも。わらっている。笑い声が、聞こえている。蜂の巣の中に暮らしているみたいに。ぶんぶんぶんぶんぶんぶん。笑い声が、聞こえていた黄色い気分があたり一面であり、それはまるで形而上学の講義の真っ最中の、誰だろうかそもそもそんなことをしているのはなんのために、何を伝えたくて、誰だろうか、なんでもないはずなのに。誰かに何かを教えるということのそもそもの不便。欠落。犬死に。考えたこともないことを考える時のような。

あたしは、ぼんやりと、青くもない絵の具を垂らされたような、空を見つめた空が見つめた。空だ。

空の中に紙飛行機。紙飛行機から白い糸。あたしはぼんやりと、しているわけではないのだから。今すぐに。

青白い手が空から伸びてきて、その青白い手は、概ね青く、ところどころ雲のように白く。それでもって台風のように風圧を感じさせる手が伸びてきて、私の隣に、座った。


「ところまでは、覚えているんだ」あたしは、あたしの隣で、さっきからあたしの話を聞いていた、村長に、村長というか同級生に、そう呟いた。

「へえ、はい、うん」と彼女は回答を与えた。

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