第3話 花

ユカリは、青い花をそっと見つめながら、ため息をついた。ユリンが隣で静かに見守る中、ユカリはぽつりと話し始めた。


「この花、何か言いたいことがあるみたい。でも、心を閉ざしてるの。」


ユリンは驚いた表情を見せる。「花が心を閉ざす? それってどういうこと?」


「うまく説明できないけど、いつもは花が自然に話しかけてくるのに、この子だけは何も教えてくれないの。」ユカリは花びらに触れるように優しく手を伸ばした。「もしかして、記憶が封印されているのかもしれない。花自身の心が…」


ユリンは首をかしげながら尋ねた。「それって、もしかしてユカリ自身の心が閉ざされているからじゃない?」


ユカリは驚いて顔を上げ、ユリンを見つめ返した。ユリンは静かに続ける。「ユカリが本当は自分で気づかないようにしている何かを、この花が映しているんじゃないかなって…」


その言葉にユカリは沈黙した。彼女の中で、思い出したくない記憶の断片がふと浮かび上がるような気がした。



ユカリが静かに考え込んでいると、ユリンが少し言葉を選びながら話し出した。


「ユカリ、もしかして…この花たちは、あなた自身を映し出す鏡みたいなものなのかもしれないよ。」


「鏡…?」ユカリがその言葉を繰り返すと、ユリンは頷いた。


「うん。花は、きっとあなたの心と深くつながってる。でも、もしユカリが自分でも気づかずに心を閉ざしている部分があるとしたら、その部分が花を通して表に出るんじゃないかな。」


ユカリははっとしたように青い花を見つめる。「だから、花が話をしてくれないことがあるの?それって…花が私の心を映し出してるってこと?」


ユリンはさらに説明を続ける。「そう、花はあなたの心の奥底にある思いも映し出す鏡になってる。そして、あなたの中に封印された記憶や感情があるとしたら、その封印が、花たちとの会話を遮ってるのかも。」


ユカリは驚いた表情を浮かべた。「じゃあ、この花が私に何かを教えてくれないのは、私自身が何かから目をそらしてるから…?」


ユリンは微笑んで「そうかもしれないね。もしかしたら、その花との対話を通じて、ユカリ自身の心の中を少しずつ解き明かせるんじゃないかな。」と優しく言った。


ユカリはしばらく黙って考えていたが、少しずつ心の奥に眠る記憶に向き合う決意を固めていった。


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