第3話 負け確定フラグを立てちまった
恋愛において重要なポイントは人によっていくつかあると思うが、「自信をもつこと」の他に、「押したら引くこと」も重要だと俺は思う。
俺は小四から高二まで野球をやっていたので野球で例えるが、どんなピッチャーだって最初から決め球なんか投げないし、キャッチャーだって投げさせない。だからストレートだけじゃなくてカーブなんかの変化球を混ぜるのさ。
なんでそんなことするのかって?
打者に打たせないためさ。
打たれたら、最悪、相手チームの得点につながるだろ?
さらに最悪の事態を招くと想像してみてくれ。
最終イニング、相手チームの攻撃、同点で競っている時、まかりまちがって打者が打った球が長打になったとしよう。三塁に走者がいたら、そのまま本塁に突入されて一点が入る。そうすれば相手チームのサヨナラ勝ちだ。そしたらこちらの負けだろ?
要するに、負けるフラグを折れるだけ折る。それが負けないための唯一の方法だと俺は考える。
恋愛でも同じことさ。
昨日までの俺は日野さんにストレートばっかり放ったので、今日はあえて仕事の話しか振らない。話しかけられたら必要最小限のリアクションと言葉で答える。
だって日野さんは俺のことを相当警戒してる様子だったし、このままだと嫌われかねない。いったん嫌われてから好かれるというのは難易度が高いからな。
ところが日野さんは、いつもと変わらなかった。
「この書式、どこにあるの」
「ファイルサーバの三番の、浅い所にあります」
「これ?」
「そう、それで合ってます」
「ありがとう」
「お安いご用です」
会話も通常運転だ。
何があったんだ?
日野さんは何も語らない。
しかも俺に、自分からメシに行こうと誘ってくれたんだ。
「沢渡くん、今日、お昼持ってきた?」
「いえ」
「じゃあ、一緒に社食で食べない?」
俺はこの間の遠藤みたいに、能天気な声でこう言うところだった。
「マジっすかぁ? 行く行く、行きますぅ」
しかしここはあえて真顔で、いつもより短めに返答する。
「はい」
日野さんはクリアファイルに入れた書類を持つ。
「帰りに売店に寄りたいんだよね。ほら、今度、飲み物とか値上がりするでしょ。そのリストを渡そうと思って」
売店は社員食堂のすぐそばにある。いろいろな商品が値上がりしているので、売店に伝えることも必要だが、この社屋で勤務する全社員に伝える必要もある。
社食ではいつもと同じように、窓際の隅っこで向かい合って食べる。
日野さんを観察する。やっぱり、いつも通りだ。
日野さんとセックスしたら、どうなるだろう?
いつものように想像するが、何も浮かばない。
日野さんに興味も関心も下心もあるのだが、なぜか彼が裸になり、ベッドの上で乱れる姿を描くことができない。
視点を変えてみたらどうだろう。
俺が、受ける側だとしたら。
するとどうだ。フルカラーの音声つきで映像が見えたじゃないか。
まあ俺は基本、男とする時は受ける側が多い。攻めた経験も少しはあるけどね。
日野さんがセクシーなほほえみを浮かべて、俺の脇に手をついている。
なめらかで傷一つない締まった体、長いまつげ、通った鼻筋、形のいい唇が見える。
その唇が開いて、俺に、甘い声でささやく。
「沢渡くん?」
俺は味噌汁のお椀から顔を上げた。
心臓が破裂しそうだ。一気に体温が下がる。
俺は今、たるんだツラを見せていないだろうか?
鼻の下、伸びてないよな? ああ、鏡が見たい。みっともないところを見てほしくない、切実に!
日野さんが俺を、まるで自分の弟みたいに見つめる。
「何かあった? それとも、単なる考え事?」
俺は震える手で味噌汁のお椀を置いた。
脳内であなたと絡んでいる場面を想像して興奮していましたなんて、言えるわけがない。内心の動揺がばれてないことを祈るばかりだ。
フラグを折れ。負け確定フラグを折れ。
俺は胸を張り、入社試験の面接みたいに膝の上で握りこぶしを作り、顔も声も無表情で返答した。
「考え事をしていただけです。ご心配をおかけして申し訳ありません」
日野さんが目を細め、口元をやわらげた。
「なら、よかった。何かあったら、俺でよければ相談に乗るよ」
その優しいイケボが俺の耳を通過して心臓をぶち抜く。
俺は完全に日野さんに恋してしまった。
俺としたことが、完全に。
「売店に行こうか」
優しい笑顔と声で言われ、俺は阿呆のように首を縦に振った。
売店の店長は日野さんからリストを受け取ると、事務所に引っ込んだ。でもすぐに出てきた。きっとリストを置いてきたのだろう。
髪の毛一本も生えてない綺麗な形の頭を俺たちに下げ、店長はレジ打ちを再開する。
日野さんが冷蔵品が並んだショーケースへ向かう。
「俺、コーヒー飲むけど、沢渡くんはどうする」
俺は監督の前に整列した時みたいに直立不動で答える。
「飲みたいです」
「じゃあ、一緒に買うよ」
なんだって?
これは夢か?
とりあえず丁重にお断りしよう。
「お気づかいはありがたいのですが、自分で買います」
ところが日野さんはまたあの優しい笑顔を見せる。
「今日だけおごらせて」
「とんでもない。結構です」
日野さんが俺を見る目は、完全に俺のお兄ちゃんだ。
「これから君と仕事をしていくのだから、俺も君とは友好的な関係でいたいんだ。だからこれは俺の気持ち。どれがいい?」
何だよ、この展開。
何だよ、この余裕。
俺はおずおずと、蓋つきのアルミ缶のボトルに入った微糖のコーヒーを指さした。
「それがいいです」
俺は砂糖とミルクを入れないとコーヒーが飲めない。だから母親と弟にからかわれてばかりいる。
日野さんは俺が指さしたボトルを取ると、その横に陳列されている似たデザインのボトルに手を伸ばした。そちらは無糖。俺が選んだ微糖のコーヒーと同じ飲料メーカーが製造している商品だ。
二本のコーヒーをレジで精算し、日野さんが売店を出た。俺もあとについていく。
売店を出て、二人でコーヒーを飲む。
「ありがとうございます」
微糖だけど砂糖が三倍くらい増量されたみたいに感じる。
「どういたしまして」
日野さんが笑う。俺も笑った。笑顔、ひきつってないかな。心配だ。
「いつもそれを選ぶの?」
「はい、コーヒーを買う時は」
「甘い方が好き?」
「ブラック、飲めないんですよ」
「俺と逆だね。俺は甘いものが苦手なんだ」
ボトルを持つ手が震える。夏の大会、つまり全国高等学校野球選手権大会の県予選に一年生ながらショートで出場した時だってこんなに緊張しなかったのに。
――思い出した。
一年生なのにただ一人だけレギュラーで出場するというので、スターティングメンバーに選ばれなかった上級生からグラウンドの片隅に呼び出されたんだ。
全体練習が終わった午後七時、ようやく暗くなりかけた頃だった。
上級生三人に囲まれた。囲んだ中で一番身長の高い奴がお決まりの脅し文句を俺に言う。
「てめえ、どんなきたねえ手を使ってレギュラー獲ったんだよ」
俺は黙ってそいつの目を見た。
そいつが顔色を変え、上体だけ後ろにそらす。
こういう時は相手の目を真正面から見返すんだ。単純な方法だけど相手にそれなりの心理的ダメージを与えることができる。こちらが相手にひるんでいないことを示せるからだ。
そして、下手に言い返さないこと。相手に、こちらを攻撃する口実を与えてしまうからだ。
そいつは俺の顔を拳で殴った。
俺は黙って殴られてやった。
殴られたあともそいつの目を無言で見る。にらんじゃだめなんだ。相手にこちらを攻撃する理由を与えてしまうから。
「あいつが挑発してきたんです」
そんな風に言われたら、こちらにも非があることになってしまう。
負け確定フラグを折れるだけ折る。だから反撃しない。
そいつらは立ち去った。
そいつらが自転車に乗って校門を出るのを確認してから、俺は顧問がいる体育教官室に駆け込んだ。
「井上先輩に殴られました」
顧問が顔色を変える。
「井上に?」
「はい。その後ろに黒田先輩と小暮先輩もいました。井上先輩はてめえ、どんなきたねえ手を使ってレギュラー獲ったんだよって言って、俺を殴りました」
翌日、俺を殴った奴とその後ろにくっついてた二人はさっそく顧問に呼ばれた。そして二度と練習に姿を現すことはなかった。
こういうケースでありがちな、加害者が被害者に謝罪する場面も設けられなかった。とにかくそいつらを俺に接触させないようにと、顧問が配慮したのに違いない。
夏の大会の予選を一か月後に控えた時期だったから、顧問としては表沙汰にしたくなかったに違いない。それに俺を殴った奴とそいつの後ろにいた二人は全員三年生だ。後輩を殴って特別指導を受けたなんてことになれば、進路活動にも悪影響が出る。てめえの無能を棚に上げて後輩を殴るような奴を、そういう奴に黙々と従う奴らを、学校側だって推薦したくないだろう。
そういう事情を踏まえれば、強制的に退部させることで闇に葬った方がいいに決まってる。
長い回想に沈んでいた俺に、いきなり、友好的でない巻き舌が降ってきた。
「何やってんだよ」
俺は巻き舌でしゃべるそいつに目を向ける。
めっちゃ怒ってる男がそこにいた。
弟が毎週買ってくる雑誌で連載してる、不良が喧嘩ばっかしてる漫画に出てくるような雰囲気だ。
身長も年齢も日野さんと同じくらいだ。多分、一七五センチだろう。引き締まった体つきで、ズボンのポケットに両手を突っ込んでいる。
半袖のユニホームから見える腕はところどころ色が変わっていた。病気なのか、それとも火傷の痕か。アームカバーや長袖のアンダーウェアで腕を隠さないということは、こいつは自分の皮膚を恥じていないのかもしれない。
目鼻立ちが鋭い。けっこうイケメンじゃないか。声だって渋いイケボだ。
でも、俺にガンを飛ばしているのだけはいただけないな。
俺、こいつの気にさわるようなこと、したか?
「日野さぁん、大丈夫ですかぁ」
聞き覚えのある声がした。遠藤だ。遠藤が日野さんの前でおろおろしている。
しかも日野さんは顔面蒼白だ。
誰なんだ、こいつ。
何で、こんなに怒ってるんだ。
俺はとりあえず答えてやった。
「何って、ただ話してただけですけど」
「誰と話してたんだ」
「日野さんとですけど」
そいつの目の色が変わる。
「何、話してたんだよ」
俺は冷静に問いかけた。
「すみませんけど、お名前を教えてくださいません? 俺、あなたのこと存じ上げませんし、なんでそんなに怒ってるのかもわかりませんから」
遠藤が泣きそうな声で言った。
「余田さん、どうしちゃったんすか。落ち着いて」
こいつか。
こいつが余田か。
その場にいないのに、日野さんが遠藤に尋ねてたっけ。
――余田さんは一緒じゃないの。
しかも余田と知り合いなのかと尋ねたとたん、日野さんは俺をにらんだ。
そういうことか。
日野さんの言葉を思い出す。
――俺は君にまったく好意を持ってないから。
つながった。
俺の脳内でパズルのピースが全部組み上がった。
余田が俺にガンつけたまま言う。
「物流の余田だ」
「総務課の沢渡です」
言って俺もガンを飛ばす。
ところが余田はひるまない。にらまれることに慣れていて、対処法も心得ているからだろう。喧嘩慣れしてるな。まあ、どうせ、中学高校の頃、不良連中とつるんでいたに違いない。この想像は間違っていないはずだ。
さて、反撃開始だ。
面白くなってきたぞ。
「俺が日野さんと話してたのが、そんなにご不満ですか」
「んなわけねえだろ」
「じゃあ、なんでそんなにお怒りなんですか」
余田がちらっと日野さんを見る。
俺も日野さんを見ると、日野さんは遠藤の後ろで棒立ちになっている。今にも泣きそうだ。
俺は自分の推測の真偽を判断するべく余田に目線を戻す。
こらえようとしても笑ってしまう。
俺はあえて遠藤にも聞こえる声で言った。
「ああ、わかった。あなたでしたか。日野さんとおつきあいされてるって方は」
余田がポケットに突っ込んだ右手がぐっと動く。
日野さんが目を見開く。
遠藤が目玉が落ちそうな顔で余田に言う。
「おつきあい? 余田さん、なんすか、それ。日野さんとおつきあい? え、な、マジっすか」
ほーら、当たった。
日野さんの彼氏はこいつ、余田なんだ。
ということは、俺の敵ってことになるな。
面白え。
俺は満面の笑みで余田に言う。
「やだなぁ、先に言ってくださいよぉ。ただ単に話してただけですから、そんなに怒らないで。あなた、日野さんと仲がいいみたいですね。それなら俺とも仲良くなりません? あ、もしかして俺に嫉妬してます? 日野さんと同じ部署だから。でもそれで俺を恨むとしたら筋違いじゃありません? この件については誰も悪くないでしょ。日野さんに出向命令を出したのは会社だし」
余田は突然俺をにらむのをやめた。その顔から表情が消える。
何のつもりだ?
このあと起こることは何だ?
俺はこいつから一発くらい殴られるかもしれない。でも手を出した方が悪いんだし、俺が被害者づらしてればどうにか切り抜けられる。
あるいは、このまま奴が立ち去るか。
第三のケースを考えようとした時、突然余田が俺に近づいた。
気づいた時には遅かった。
奴がかかとで俺の左足の甲を踏んづけている。
痛い。
体重、思いきり乗せやがって。重いんだよ。
急に俺は汗をかいた。冷たい、嫌な汗だ。
「顔上げろ」
俺にしか聞こえない声で余田が言う。
俺は顔を上げる。従うしかない。
「話つけるぞ。定時で上がれ。まっすぐここへ来い。わかったら一回うなずけ」
俺はうなずく。
余田が足を離した。俺を見たまま下がり、遠藤に言う。
「帰るぞ」
「は、ハイッ」
余田がいきなり声を張り上げた。
「俺は野郎になんか興味はねえ。野郎とつきあうわけがねえ」
二人は振り返りもせずに足早に去っていく。
情けないが、俺は座り込む。
怖かった。
過呼吸になる寸前だ。
こんな恐怖、人生初だ。
日野さんにかろうじて顔を向ける。
日野さんはその時すでに背を向けて歩き出していた。
俺はなんとか立ち上がり、その背中を追った。
午後五時、俺は席を立ち、リュックサックを背負う。
「お先に失礼します」
隣の席にいる日野さんに声をかけた。日野さんは俺ではなくスマホの画面に目を落としたまま言った。
「お疲れ様」
日野さんは泣きそうな目で画面に指を滑らせている。
余田にメッセージでも送ってるのか。あるいは余田から届いたメッセージに返信してるのか。
どちらにしろ両思い確定じゃないか。
俺は売店に直行する。
余田は売店の入り口で待っていた。壁に背中を預け、両手をポケットに突っ込んでいる。ボディバッグもリュックサックも持ってない。財布とスマホ、家の鍵だけポケットに入れてるんだろう。
「来ました」
ほんとは敬語なんか使いたくないけど、俺は今、こいつが怖い。だから『来ました』以外の言葉が思いつかなかった。
余田は俺をちらっと見ると、歩き出した。
あわててついていく。
こいつ、歩くのが速えな。
奴が足を止めたのは、社員用駐車場の一台の車の前に着いてからだった。
退勤する社員が次々と車に乗り込み、駐車場から出ていく。
何を言われるのか。
リュックサックの持ち手を握りしめ警戒する俺に余田は体を向けて、言った。
「日野さんに興味があんのか」
「そりゃあ、まあ」
「だから俺が日野さんとつきあってるって思ったのか」
「違うんですか」
「違うに決まってんだろ。それよりてめえ、他に人がいっぱいいる所で、俺と日野さんがつきあってるとか言っただろ。もしそれで日野さんが誤解されたらどうするつもりだったんだ」
やられた。
俺は激しく後悔した。
余田にやられた。
俺はやらかした。
俺、自分から負け確定フラグを立てちまったじゃないか!
そうだ、あの時、遠藤にも聞こえる声で言ったってことは、周りにいる社員にも聞こえてたってことじゃないか。
俺としたことが、やらかした。
恋する日野さんを偏見の目にさらしてしまった!
だからあの時余田は声を張り上げたんだ。
俺は野郎になんか興味はねえと。
野郎とつきあうわけがねえと。
それは何のために?
その答えはすぐに出た。
――日野さんを守るため。
腹の底から怒りが噴き上がる。
確定だ。
やっぱり、日野さんと余田は、そういう仲なんじゃないか!
余田が俺に何か放り投げる。
取れなかった。それは地面に転がり、俺と余田の間で止まる。
余田がそれを拾い上げ、俺に手渡した。
一八五グラムの缶コーヒーだった。ミルクと砂糖が入っている。
「何ですか、これ」
「それ飲んで、全部忘れろ」
俺は余田をにらみつけた。
「口止め料にしては、安くありません?」
「絶対に、言いふらすんじゃねえぞ」
「言いふらすわけないでしょ。見くびらないでくださいよ。俺はね」
さあ、みんなお待ちかね、黒歴史の暴露だ。
「高二の時、言いふらされたんですよ。つきあってた女に。俺は部活の男の先輩ともつきあってた。俺たちがしてる所をその女に目撃されて。それで言いふらされた。一か月学校行けませんでした。母親は毎日泣いてばかりだったし、担任と顧問は月曜から金曜まで毎日俺に電話かけてきやがるし。だからそういうのがウザくて無理して学校行ったんですよ。俺だって苦労してるんだ」
最後の一言は余計だったかもしれない。
余田がポケットに両手を入れ、感情のこもってない声で言った。
「苦労してるのはてめえだけじゃねえ。俺は小五の時、親父が家に火をつけた。いろいろ悩んでたみたいだったから、それでだろう。親父と母ちゃんと弟二人はみんな焼け死んだ。生き残ったのは俺一人だ。俺はこの通り火傷だらけ、誰一人寄ってこねえ」
「そうですか? ずいぶんと喧嘩慣れしてるように見えましたけど。喧嘩は一人じゃできない。仲間がいたんでしょ」
「つるむ奴らはいた」
スマホから着信音が聞こえる。俺のじゃない。余田のポケットから聞こえてくる。
「電話、鳴ってますよ」
余田はスマホを出さなかった。
「もう一度約束しろ。絶対に言いふらすな」
「だから、言いふらしませんて」
着信音が止まる。
余田は車に乗り込んだ。
奴がエンジンをかける前に俺も自分の車に戻る。
歩きながら俺は考えを整理する。
余田は日野さんとつきあってる。
俺が日野さんにストレートばっかり放ったあとで日野さんがいつもと変わりなかったのは、どうせ余田から慰められたからだろう。
そしてどうせさっきの電話は、日野さんが余田を心配してかけたものに違いない。
俺は笑っていない。
もう、笑えない。
必ずゲットすると誓った日野さんが、すでに余田のものになってると確信したからだ。
脳内に映像が浮かぶ。
日野さんが余田の火傷にキスをしてる映像だ。しかも余田は日野さんに優しく笑ってる。
周りに車は停まってない。
俺は缶コーヒーを地面に思いきり叩きつけた。
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