腹ペコギャル、友達には見透かされてしまう
本日2話目です
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「ねえ、雫。蘇芳とはどういう関係なの?」
沙羽にそんなことを訊かれたのは、バーガーショップで軽めの夕食を取っている時だった。
まさかの質問に飲み込もうとしたハンバーガーが喉に詰まりそうになった。
咄嗟に白ぶどうジュースでどうにか流し込み、事なきを得てから、雫は小首を傾げて答える。
「……別に、何もないけど」
「うーわ、惚ける感じ?」
白を切ろうとするも、沙羽が胡乱に睨めつけてくる。
「言っとくけど、何もないとは言わせないからね」
ぴしゃりと言い退けられ、気勢が若干削がれる。
そんな雫に追い打ちをかけるように、一緒にテーブルを囲んでいた
「え、なになに? 雫と蘇芳がいい感じって話?」
「ほう、雫に新たなアオハルが……!」
「違う、違うから! すおーくんとは、そんなんじゃ……!」
慌てて否定しようとするも、沙羽がため息混じりに肩を竦める。
「いやいや、無理があるって。蘇芳と話してる時の雫、普段より一段と明るい顔してたし、めっちゃスムーズに会話してたじゃん。あれって普段から互いに話慣れてる証拠だよね?」
「そ、それは……」
言い訳する間もなく、畳み掛けられる。
「それに八町と別れてから雫、学校だとずーっと男子と仲良くするつもりありませんってオーラをバリッバリに出してたのに、蘇芳相手だとそれがゼロだったじゃん」
「うぐっ……!!」
痛いところを突かれた。
確かにそこを指摘されると、雫としては強く反論できない。
岳斗以外の男子とは話すつもりがないことを自覚している分、余計に返す言葉が見つからない。
しかし、沙羽の理詰めによる詰問はこれで終わらなかった。
「何よりの極めつけは……これ」
沙羽が雫を——正確には、雫の目の前に置かれた食べ物を指差す。
Lサイズのポテトとドリンクが二つ、それとハンバーガーが三つ(※完食済みを含めれば五つ)がトレイの上に載せられてある。
「なんで蘇芳が雫が本当は腹ペコキャラだってことを知ってんのって話。このこと知ってるのってウチらだけのはずだったよね? そもそもウチらでさえ知ったの、つい最近のことだし」
「んぐうっ!?」
もうこれ以上の言い逃れは無理だと悟るには十二分過ぎる指摘だった。
ぐうの音も出なくなった雫を見て、傍観者二人が各々に呟く。
「あ、クリティカル入った」
「こりゃ図星っぽいねー」
迂闊だった。
あの時、ナンパに遭うというイレギュラーな状況だったせいで、普段の距離感で岳斗と話してしまっていたことを今更になって後悔してしまう。
——もう、アタシのバカ〜!!
しかし、もう後の祭り。
沙羽は悪い笑みを浮かべて、雫に向かって言う。
「さーて、洗いざらい話してもらおうか。雫と蘇芳の関係をね」
(う〜、すおーくん、隠せなくてごめん……!)
観念して、蘇芳との関係を白状した。
勿論、八町との間にあったいざこざの詳細は全て伏せておいたが、それでも粗方の経緯は伝わったと思われる。
証拠に説明を終えると、三人は納得したような表情でうんうんと頷いていた。
「なるほどね。流れは大体分かった。それで絶賛、蘇芳に片想い中であると」
「かっ、片想い!?」
「いや、完全にそうでしょ。今、ガッチガチにガードが堅くなってる雫が唯一自分から近づく相手なんだから。好意がない方がおかしい」
「ま、まあ……それは、そうなんだけど」
消え入りそうな声で答えれば、夏希がにやにやとスマホを取り出しす。
「雫、めっちゃ少女の顔してんじゃん。マジかわいい〜!」
「ちょっ、写真撮るなし!」
雫が顔を真っ赤にして夏希のスマホを奪い取ろうとする横で、梨乃亜が呑気にシェイクを飲みながら沙羽に訊ねていた。
「ちなみに沙羽から見て蘇芳ってどんな感じだった? さっきナンパ男たちから助けてもらったんでしょ?」
「蘇芳は……ちょっとヤバいね」
真剣な表情で沙羽は、
「あれは隠れたダイヤの原石。運動部並みに体格良いし、性格もスゴく男らしくてカッコよかったしで磨けば確実に化けるよ。それこそ、学校のイケメンランキングが大きく変動するレベルで」
「うわ、マジか」
「マジ中のマジ。正直、ウチも危うく惚れそうになったくらいだし」
まあ、すぐにそれどころじゃなくなったけど。
苦笑しながら付け加えて雫を見遣る。
雫は不安を滲ませたような眼差しで沙羽をじっと見ていた。
「大丈夫、取りはしないから。てか、多分取ろうと思っても無理だし」
「……本当?」
疑うのは良くないと頭では分かっている。
それでも、不安からつい訊き返してしまう。
「本当だって。あれは……うん、まあその内みんなにも分かるよ」
意味深に笑って沙羽は雫を見つめる。
雫も他の二人も不思議そうに首を傾げた。
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