アンコントロールウェザース
花森遊梨(はなもりゆうり)
第1話
もう知ってるかもしれないけど、私は赤井丹。
化物の心を宿す小暑のせいで凍死しかけてから2ヶ月ほど経った。
今日は昔で言うところの白露今日の最高気温は17℃。暦の上では秋…という猛暑でこれから死ぬ前フリにしか聞こえない言葉とは裏腹にきちんと季節は進んでいる。最近憎たらしかった小笠原気団もようやく息切れだ
空は明るいスカイグレー。この前みたいに青い空に白い雲、見てくれは最高なのにちょっと日差しの中で輝いてるだけでホッケみたいに干物になって死ぬ日々は終わりを告げた。
「
ー
荒川の河川敷、私の故郷
普段愛用の赤パーカーは一休み。ピジョン・ブラッドのメンズキャップをかぶっている。トロミのある赤色 半袖にハーフパンツの外出用の服装
野外でドーナツ
丹は三恵商事製の袋にぎっしりあんドーナツ
萌葱は山口製菓のアンドーナツ
一個500キロカロリー、
この近くの工場直売店
家に置いておくと両親に食い尽くされてしまう。
こういう特別な時間を友達
心と胃袋が満たされるまで食ってちょっと運動を面倒くさがれば老いも若きも地球もたちまち肥満になる布陣だ。
「将来基礎代謝が落ちて太ってから夫に痩せようと言われて返事がわりに助走つけてぶん殴ると自信を持って言える
持ち寄ったカロリーを摂取し終えたところで測ったようにスカイグレーの空の明度は下がり、やがて水滴で景色が白く霞みだした。
ゲリラ豪雨襲来。
私の手元にあるのは水泳用ゴーグルだけだ。
魔法の力で雨雲を新宿駅の真上に移動させられる魔法の少女や、手刀で全部雨を跳ね除ける戦闘少女以外は雨の中、長距離移動するなら傘をさすなりかっぱを着るなりするだろう。
私がかけるのは水泳用ゴーグルのみだ。
私は普通の女の子だが「ちょっとの距離」の場合傘などささない、プライベートなお出かけのために雨が降るかどうかもわからないのに、折り畳んだ傘やカッパを持ち歩くなどありえない。集中豪雨な分短時間で止むゲリラ豪雨のためだけに余計な荷物を増やす必要などない。
だから水泳用ゴーグルをかけ、視界さえ確保できれば良いのだ。
ー死んでいる、ここに死んだ 女子がいるー
萌葱もゴーグル以外雨に対処する装備を持ってきていないことが判明したのだが、お互い何も言わなかった、お互いに荒川から私の家までの短距離に傘の必要性を感じていないのである。
雨の中、死んだホモ・サピエンスのメスがただ二匹。
ドン引きしないツボは間違いなく一致
雨の中、三人で悠然と自転車をこきながら
そう確信した。
ゴーグルだけつけて悠々と自転車
海軍向けの人材である
せっかくだから買い物もして帰ろう
なぜかワンワンも売ってる家具屋、王川
どこかの県ではもっとデカくて立派な店舗を構えているはずのロピ3
グーグノレ先生に「やばい」を予測変換につけられるスーパー、SV《スプリームバリュー》
いまだに集中を持続させる豪雨の中、
そんな三つの店舗が融合した青い目のアルティメットドラゴン的な店舗に立ち寄ることにした。
「透けてる!!」
「雨で濡れたから必然だね」
「だから待ちなよ!こういう店に入るなら体を隠して大至急!」視線をわずかに下げて、現状を確認する。パステルカラーの我ながら可愛い上下の下着がビッタリと張り付いた上着からはっきりと透けている。そのまま店の入り口に向かうことにした
「なんでこう、お前はその、恥って概念を知らないの!」
腕を強く引かれて(地味なグレーのスポーツ下着の)萌葱と向き直らされる
「こういうのは こっちが頼まれてもないのに恥ずかしがったりするからただの透けてる人が美味しいオカズになってしまうだけでしょ。萌葱のやつだってインスクダラムじゃそれ一枚着て踊ったりカメラの前で着替える動画を全世界に晒すという成人の儀式で有名なデジタルマオリ族の民族衣装じゃないこのまんまお買い物したって道ゆく男が全員自家発電機を起動させるわけでも」
「いいから 上着を羽織れ!!」
久しぶりに聞く萌葱の怒りに思わず背筋が伸びる
「ここはスーパー、荒川みたいな自然界とは違う、人間の世界なの‼︎]
萌葱がいつの間にか取り出した何かが顔面にヒットして、ビシャッと間抜けな音を発させた。
「入るんだったら人間のコスプレくらいちゃんとしろ!!」
手に取ってみるとビニールパックに包まれたブカブカのジャージのようだ。大学やバイト先でもないのに、こういうところにまで気を使ったりという面倒を厭わないあたり、萌葱のやつはよくやると思う。
この辺のオンオフがお互い逆ならもう少し怒らせることが減りそうな気もする。
アンコントロールウェザース 花森遊梨(はなもりゆうり) @STRENGH081224
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます