第4話 自殺をライブ配信

とあるどうでもいい1日、スマホを見ていると自殺をライブ配信している人がいるという書き込みを見つけた。速攻で其の配信元に飛ぶと、本当に其れらしき事をしている人がいた。

画像が不鮮明でよくわからなかったが、恐らく若い女性ではないかと思う。コメント欄は様々で、止めなさいと警告するものから早くやれと囃し立てるものまで色々だった。

私は何もコメントしなかった。というかどうせ目立ちたいだけで、何もやらないだろうと思っていた。

案の定いつまでたってもその人物は、高層ビルの屋上でただ配信を行っているだけだった。面白くもなんともないので、アホらしくなって観るのを止めた。

既に数名が警察に通報していた様だったし、そもそも配信者が本気で飛び降りる感じがしなかった。



時折こういう意味不明の配信を見かけるが、自殺を生中継する事に何の意味が有るのだろうか。死体はどうせグチャグチャで見るに堪えない。というより、運営元に途中で垢バンされるのではないだろうか。

私も明日安楽死できますと言われたら、貯金を全額差し出しても良いと思っている人間だ。生きている事にもういい加減、ウンザリしているのである。

しかし安楽死の様子をライブ配信しますと条件を付けられたら、恐らく30分くらいは考える時間をくれと言うだろう。やる事には変わりないが、ボロクソに罵倒されながら最後を迎えるのは確実だからだ。

日本人は心が狭い。楽をしている人間を発見すると、匿名でこれでもかと言う程滅茶苦茶に叩きまくる。個人的には罰金刑を科すべきだと思っている。



結局次の日もその次の日になっても、若い女性の飛び降りのニュースは出てこなかった。抑々やる気がなかったのか、途中で警察官に止められたのか。真実は全くもって私にはわからない。

だが何度考えても、死ぬ前に目立つ事に何の意味があるのだろうか。その数分間だけ、沢山の人に自分に注目してもらいたいのか?

その数分後には、もうその人の事は誰も覚えていないと思う。その方が余計に空しいから、ひっそりと消えるようにいなくなる方がマシではないだろうか。

結局他に何も人を惹きつけられるものがありませんと、世界に向けて発信しているのと同じなのではないかと思ってしまう。

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あの世でもぼっち tokison @tokison

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