第2話 少年は忘れられる
少年――「
彼はただ、「皆に忘れられている」だけなのだから。
彼は生まれつき、「忘れられやすい体質」なのだ。逆に言えば、彼の存在を認識しているのは、彼を見ているときのみである。家族にも、ましてや妹にも忘れられている。だが、彼は気にしない。むしろ、感情と声を無駄に出さなくて楽だとも思っている。
〝キーン、コーン、カーン、コーン。″
一日の授業の終わりのチャイムが鳴り響く。
「はい、それでは今回の授業はここまでだ。次回までにしっかりと予習をしていくように。それじゃあ……彼方」
先生が一人の女子生徒を指名し、その生徒が静かに席を立つ。
「……起立、礼」
『ありがとうございましたー』
彼は席に座ったまま、大きく、あくびをした。
ガチャ、と家の玄関をカギで開ける。
ギィ……と少し不気味な、小気味よい音を立てながら玄関の戸を開ける。外の光度に慣れた黎人の目に、暗闇が襲う。
「ぅ……」
闇に慣れないまま、靴を脱いで部屋に上がる。親にもその存在を忘れ去られた黎人は、縁を切って一人で暮らしている。無論、そのための金は縁を切る際にもらった両親の財産と、自らの身を使って稼いでいる。と言っても、バイトの先で彼のことを覚えているのはおそらく直接顔をみた同期の一人か、または名簿の写真をみた店長だけだろうが。
「……はぁ。」
学生バッグを乱雑に投げ、最近新調したふわふわのソファに体を任せて脱力する。
(学校の授業体制については遅すぎず早すぎずちょうどいいが、やっぱり疲れるものは疲れるな……)
彼はそのまましばらく、ソファに疲れた体を任せ、意識を手放した。
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