魔獣や、最強剣士が当たり前の異世界に、猫として転生してしまった話。
@panchitaro
第1話
ここはどこだろうか。何だか体が重い。長いこと寝ていたからだろうか。山田勝彦は、眼をあける。
見たことのない景色だった。50メートル先には風車が回っており、地面は、雑草が生い茂っており、空には見たこともない生物が、何かわからない鳴き声を放ちながら、翼をはばたかせ飛んでいた。
足元を見る。肉球があった。肉球?これは、見たことがあった。猫である。子供の時に実家で飼っていたので分かる。
漫画などで見たことある。これこそまさに”異世界転生”ってやつではないのか?でも、そう決めつけるのは、時期尚早である。きっと、母親が、部屋に勝手に入ってきて、私をたたき起こせば、現実に戻るというものだ。
そう。つまりこれは、夢である。夢と分かれば、自然と目を覚ますものだが、そんな気配は毛頭ない。かといって冷めてほしいとも思わない。冷めればまた、あのつらい現実が待っている。今だけは、猫のまま気楽にいたいと思った。
どん!と大きな音が鳴った。それに山田勝彦はおどろく。風車の奥で、大きな影と二つほどの人影があった。
「だめだ、このレッドドラゴンは聖剣では、全く歯が立たない。」
「しょうがないわねえ。ラフレシア、光を放て。」
すると、その辺の雑草が、次々と花を咲かせ、その花弁から光を放った。レッドドラゴンは、小さな赤い球になった。
「よし、このダンジョンはクリアした!!」
山田勝彦、現・猫はこう思った。猫でよかった。何もせずに済むんだから。だが、エサがないとここのまま餓死するのでは?そう言った不安に駆られた。すると
「ねえ。どこから来たの?」
「え、日本からですけど」青い鎧を着た、小さな男の子が話しかけてきた。勿論現実では見たことない。肩には三角のプロテクト、体には、体格に合わせた鎧を着ていた。見ていて不自然さはない。
「にほん?どこかは分からないけど、仲間と一緒にいないと、勇者や魔法使いに見つかったときに、処刑されちゃうよ。」
「え?何で?」
「だって、珍しいし。そういう生き物は真っ先に処刑の対象になっちゃうんだよ。パーティーにいたら、話は別なんだけど、そういう感じでもないんでしょ?」
「うん。パーティーは仲間外れにされるから行ったことないかなあ」
「何言ってるのか全然分かんないけど。僕の仲間になってよ。僕も、役立たずだって言われて。立派な勇者にならないと、お母さんに怒られちゃうから。」
「そうかあ。大変だな。エサくれるんならいいよ。」
「ありがとう。でも、なんで話せるの?」
「え?」
「知能の高い魔獣は真っ先に狙われたり、奴隷にされたりするから気をつけて。バレると大変だから、何か、しゃべれないふりできない?」
「にゃー」
「にゃー?かわいいね。名前は、なににしよっか。ぼくは、レイ・アルフロッド。君は?」
「山田勝彦」
「変な名前。それだと、変な動物だってばれちゃうよ。」
「じゃあ。ショコラだな。」
「いい名前だね。」
数年前、娘にせびられて、猫を飼ってやったっけ。
「なんて、名前に住んだ?」
「エリザベス・エマワトソン・オードーリー・長澤まさみ」
「一休さんじゃないんだから。もっと短くすれば?」
「じゃあ。ショコラ」
それから、娘は猫をかわいがったが、ある日、トラックにはねられてしまう。それから娘はふさぎ込むようになってしまい。俺も同声を掛けていいか分からなかった。娘の元気な声を聴けないまま、俺は、会社で働き続けた。
そんな妻は俺に愛想をつかし家を出た。娘と共に。生きがいを失った俺は浴びるように酒を飲み、そのまま眠りについた。
そして、気づけば俺はここにいた。
「ショコラ。これから、旅に出るけど、一緒に立派な勇者目指そうな。」
「そうだな。」
勇者 レイ・アルフレッドと猫・ショコラ(山田勝彦)は最強の勇者を目指して旅に出ることになった。
魔獣や、最強剣士が当たり前の異世界に、猫として転生してしまった話。 @panchitaro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます