第27話 最も汚れているモノ①
ノノさんが意外にも乗り気になってしまったので『帰らずの森』と呼ばれる場所へと向かう俺たち。
大昔から認知されている森だからか、冒険者ギルドにも特に依頼は入っていないらしい。
完全にただ働きである。
「近くに村があるらしいよ」
「んじゃあ今日のところは聞き込みをして、そのまま村に泊めてもらおうか」
ピヨヨたちのおかげで移動は早くなってはいるが、さすがに疲れる。
そして村が見えてきたので、早速高度を落としてもらおうとした時――。
「た、助けてぇーっ!」
「レージ、あれ!」
突然聞こえてきた悲鳴。
ノノが指さす方向へ目を向けると、そこには狼のような魔物に追われている少年が。
「ピヨヨ、急降下してそのままやっちまえ!」
「ぴよっ!」
スララを出すのもめんどいなと思い、そのままピヨヨに命令したのだが……俺はこの命令を即座に後悔した。
「ぴーっ!」
「ぐえぇっ!?」
ピヨヨは俺を掴んだまま、急降下。
俺はその急加速、急降下にさらされた上――。
「ぴよ?」
「ちょっ!? ピヨヨ!?」
ハーピーの武器である逞しい両足は俺を掴んでいて空いていない。
どうすれば攻撃できるのかなぁ?
そんなピヨヨの悩みは、俺とともに吹っ飛んだ。
即ち、俺を狼にぶつけることで……。
「ギャアんっ!?」
「うごぇっ!?」
「レージ!? 『回復』」
幸いにもノノの置きヒールで事なきを得た俺だったが、ぐちゃっとした物まではどうにもならず……。
「や、やぁ少年! 無事かい?」
「ひっ!? ひえぇぇ……っ、オロロロロロ……」
狼のミンチを頭に乗せた俺。
当然、耐えられる訳もなく。
「ですよねー」
「オロロロロ……ごべっ、んなさっ……オロロロ……」
少年の吐瀉物までもが、俺に降り注いだのだった。
「泉が本物だったら、1回入った方がいいね」
ノノ……お前……!
◇
「本当にごめんなさいっ」
いろんな意味で衝撃的な出会いの後、近くの川で必死に汚れを落とし、村の少年の家に案内してもらった。
「いいよいいよ、おかげで村に案内してもらえたし」
村を守る門番に事情を説明してくれたりしてすんなりと村に入ることができた。
俺の尊厳と引き換えに……。
「ところで……少年の家族は?」
「俺はチールだよ! 家族は……姉ちゃんがいるんだけど……」
おっと、安易に聞かない方が良かったか……?
「そうだ! 兄ちゃんたちも協力してくれない!? 姉ちゃんを助けたいんだ!」
「んん?」
一見平和そうな、落ち着いた村に見えたが……。
何か問題でも起こっているのだろうか。
「実は……姉ちゃんの様子が最近おかしくって――」
「チールさん! 大丈夫ですか!?」
話の途中、勢いよく少年の家に入ってきた綺麗な女性。
おそらく彼女がチール少年の姉、だろうか? 少しよそよそしいが……。
「だ、大丈夫だよ姉ちゃん。この人が助けてくれたんだ」
「まぁ! 私ったらご挨拶もせず申し訳ございません。私はチールさんの姉、ピュールと申します。この度は弟を助けて頂き、本当にありがとうございます!」
丁寧かつ朗らかにピュールさんが挨拶をしてくれる。
大切な弟を助けた美男子である俺。
……ワンチャンあるかもしれん。
「私も助けた」
ノノさぁーん! お前が助けたのは俺だけだろう! ありがとう!
「まぁ! あなた様もありがとうございます! ぜひお名前をお聞かせください!」
「ノノ。こっちの煩悩に塗れた男はレージ」
「……僕はレージ。煩悩なんてそんなそんな……はっはっは!」
最も身近な最高の笑顔、ユートの笑顔を真似てみたぞ!
「まぁ! 確かに汚れ切った笑顔をしていますね……いかがですか? あなたも泉にご案内――」
「姉ちゃん!」
泉。確かに聞こえたその単語。
しかし、詳しく聞く前にチール少年が大きな声を出して遮る。
「姉ちゃん! 村長さんのとこに行く時間だったんじゃないの!?」
「あら、そうでした。途中で門番さんにお話を聞いて急いで戻ってきたんでした。では、旅の方、どうぞごゆっくりしていってください。お夕食には戻りますから」
慌ただしく、美人の姉ちゃんが行ってしまった。
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