第5話 始まりの森でコンにちわ!
モンスター同士本気で戦わせ、勝敗を賭ける『コロシアム』。
早さ自慢を競わせる『スピードレース』。
スライム風呂やドライアドアロマなどのリラクゼーション施設。
セイレーンなどを起用しつつ、安全に配慮したコンサート。
他にもサキュバスやインキュバスと熱い一夜を過ごせる宿泊施設などなど。
姫様とパークの概要を共有し、必要な物を手配して貰ったり土地の活用法を話し合った。
そして各々が今やるべきことに向かう。
◇
――数日後、俺とノノさんが来た場所は……。
「始まりの森……ここから俺たちの冒険は始まるんだ!」
そこは所謂初心者御用達、低級な魔物しか現れないような、冒険の始まりに来るような森だった。
「がんばろ」
ふんすと気合を入れるノノさん。
仮にも魔王を討伐した俺たちがここにいるのには理由がある。
魔物を『封魔』するには相応の魔力を消費する必要があるのだが、今の俺は諸事情でほとんどの魔力を消費している状態なのだ!
その諸事情のせいで白龍王などの強力な魔物とおさらばすることにもなり……今の俺の従魔は先日捕まえた『スララ』だけ。
魔力の回復は、寝てる間に大気中の魔素を吸収しているらしく、十分に寝て起きたらほとんど回復しているはずなのだが……。
俺の場合は回復しても『封魔石』維持に回すことになる。
魔力は消費し続ければ上限が増えていくので、しばらくはその増えた分だけでやり繰りする必要がある。
魔物をテイムするか、緊急用の魔力として取っておくか……。
もちろん、『封魔』しなければ使った分は翌日には回復する。
いずれはまた強い魔物をテイムしたいとは考えているが、それまでのつなぎとして、ここ『始まりの森』でよわよわモンスターをテイムしに来た訳である!
ちなみに、魔力に関しては能力による補正があるようで俺もかなり高いのだが、身体能力は一般人並み。
一方、聖女のノノさんは魔法職にも拘らず、身体能力も結構高い。
大体俺5人分。家の壁を砕ける。一生逆らえない。
「行くぞっ! 新しい魔物を捕まえにっ!」
「おー」
◇
スライムが現れた!
ノノさんの攻撃!
「えいっ」
スライムは弾けとんだ!
「ノノさんや、討伐じゃなくて捕獲に来たんじゃぞ」
「いっけね」
てへぺろっと誤魔化すノノ。
ウインク下手くそだし朗らかさが足りていない。
気を取り直して進んで行くと、いましたゴブリン!
「『光弾』」
ゴブリンが弾けとんだ!
「次行こうか」
「ん」
ゴブリンはテイムする気がない。
ちょっと生理的に無理ですぅ……。
「おや、あれは……?」
前方に見えたのは、黄色いもふもふの集団だった。
「きゃんきゃん!」
「わうわう!」
「……ク~ン」
狐の魔物、ウィンドフォックスの幼体が数匹。
どうやら1匹を囲んで……いじめてるのか?
「やめろお前ら!」
「ギャンッ!?」
すかさず1匹のわき腹を手にした剣で思いっきり跳ね上げる。
「『光弾』」
ノノさんが残りの3匹を魔法で射貫く。
いじめはダメ絶対!
見つけたら加害者は殺してもいいって誰かが言っていた。
「……く~ん」
「おや……」
助けられたと思ったのか、いじめられていた子狐がすり寄ってくる。
足を引きずりながら。
外傷はないので、生まれつきなのかも?
まぁ、弱肉強食の世界でそうだったとしたら……いじめられていた理由もわかる。
「じゃあな! 元気でな!」
「え……?」
「く~ん……」
弱い魔物に興味はないからな!
あれ、弱い魔物をテイムしに来たんだっけ?
「ひどい。こんなに可愛いのに。足も悪いみたいだし。このまま放っておくの、さすがにひどい。テイムしたら?」
「こん……」
ノノさんの長いセリフ、久しぶりに聞いたわ。
俺とノノは昔からの付き合いなのだが……たまにこうなるんだよなぁ。
どうやら彼女なりに譲れないときがあるようで。
こうなった彼女は、俺が折れるまで決して退かない。
「く~ん……」
言葉はわからないはずなのに、見捨てないでと言うように子狐がすり寄ってくる。
小さい体に、それと同じくらいの大きさのしっぽ。
すっごいもふもふな見た目。
「……ま、もふもふ喫茶的な感じでいけるかも知れないしな」
「ん」
『ん』って何だよ! もっとしゃべれよ! さっきみたいに!
「お前もいいか? テイムするけど……」
「こん!」
訳は分かっていなそうだが、とりあえず連れて行って貰えると感じたらしい子狐。
「それじゃあ……『封魔石』!」
手にした『封魔石』に吸い込まれる子狐。
これでこいつを『従魔』にできた。テイム完了だ!
「よし、こいつの名は……フォックス・ザ・スカイジャベリンと――」
「コンで」
その目に強い意志を感じさせるノノさん。
「……」
「コンで」
俺も自覚はあるけどよぉ……ノノさんも大概だと思うよ、そのネーミングセンス。
「コンで」
「はいはいコンですよわかりましたよ!」
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