第4話 つくろうよ! モンスターパーク!

 ――それからしばらく経ち、俺たちは魔王を倒した地に戻って来た。

 

 兎にも角にも人手が必要だろうと言ことで、何人かグランヘイム側に派遣して貰った人たちを引き連れて。

 報酬がっぽり。さらなる支援に期待してるぞ!




「さぁ、ここが僕たちの新しい居場所だ!」

「ここから目指すのね……!」

「……ん」

「えぇ! 一緒に頑張りましょう!」

「おう! とりあえずは……」


 とりあえずは……俺たちのパーティは4人。

 聞こえたセリフは5人分。


「……なぜ姫さんがここに……?」

「今更何を言ってるの?」


 ノノさんに突っ込まれる。

 え、ノノさんすら知ってたの……?

 もしかして派遣されてきた人たちの中にいたの……?


「はいっ! それはですね――」


 その人は、グランヘイムのお姫様。


 名前をクラリスとか言ってたっけな。

 今までも数回しかあったことがないから正直曖昧。


 ザ・お姫様といった風貌で、ゆるふわ縦ロールと整ったお顔がとっても素敵で殴りたくなる!

 年齢は俺たちより少し年上っぽいぞ!


「私はあなた方と各国の調整役を務めまさせて頂くことになりました! それと、祖国グランヘイムからの人質ですね!」


 人質ですね、と朗らかに言ってのける彼女。


「私としましても、皆様のために働けることの方が嬉しいですし! もう国のために役立てはしませんから……」


 何やら特殊な事情を抱えているらしい姫様。

 知らんがな。


「どういうことですか?」

「私はあなた達を召喚するための贄として選ばれ、代償を支払いました。私の血筋が紡ぐであろう――」


 お優しいユート君が姫様に聞いてしまものだから……そこから長々と姫様の長話が始まった。


 姫様の話を要約すると、異世界召喚には多大な犠牲が必要で、特にこの世界において重要な役割を果たすであろう者とその血筋の者たちの未来を全て使って勇者とその仲間を召喚できる、と。


 つまり、姫様は子どもを産めないからだになってしまったそうな。

 一見すると姫様だけの犠牲かもしれないが、そこに子孫が成すであろうことをことを考えると……んん?


 まぁいいや。


 とにかく、王城にて王族の務めを果たすよりも、こうやって外で培ってきた素養や能力を発揮する方が自他共に都合がいいんですって。




「ところで、みなさんはここですることをお聞きしてもいいですか?」


 姫様の長話と慰めが終わり、改めて本題に戻る。

 ていうかこの姫様が誘拐の実行犯なんだよね! やっぱり殺しとく?


「僕たちは……ここで『モンスターパーク』を作るつもりです!」


 まぁ、殺すよりも働いてもらう方が建設的だよね。

 ということで、我らが勇者ユート君が姫様に答える。


 あれ、宰相とはちゃんと話し合ってきたのだが……。

 もしや姫様は何も聞かされずにここまで来たのか……?


「モンスターパーク、ですか……それは具体的にどういった……」


 きょとん顔の姫様。

 マジで知らんのか……もしかして、厄介払いされました?


「ええ! こちらのレイジの能力『魔物使い』を活用して! 世界に1つだけの魔物を扱ったテーマパークです!」

「テーマパーク……」


 尚もよくわからないという顔をしている姫様に、ミライが説明をする。


「要は娯楽施設ですね。所謂コロシアムと言った賭け事を行ったり、魔物の特性を利用した保養施設……例えばドライアドの花の香りを利用したアロマ空間の提供など、まだまだ企画段階ですがうまくいくと思いますよ」


 割と理論派のミライさんが、ユートの足りない説明を補う。


「魔物だなんて危険な存在を……」


 魔物って言ったら、死ぬか殺すかですからね。

 言いたいこともわかります。


 それにしても……この姫様は俺の能力をちっとも知らないのかしら。

 ある程度は王国に俺たちの能力を開示してきたんだけど……。


 ま、いいか。

 こんなところで時間を使うのはもったいないのでさっさと実演してやろう。


「『召喚、スララ』! まぁ試しにさ、こいつに乗っかってみてよ」

「ぴぃっ!」


 道中で捕まえたスライムを顕現させる。

 

 もっとこうさ、ユニコーンとかグリフォンとか出せれば良かったんだけど……今の俺にはこいつと、もう1匹しかいない。

 もう片方のこいつを出した日には……世界中の国々と大戦争だ。


 てゆか、俺が死ぬ。


「だ、大丈夫なんですか……? スライムと言ったら、相手を飲み込んで消化してしまうと……」

「ふーん、俺たちの力になりたいって言うのは嘘だったんだぁ」


 いいからはよ乗れ! そして体感せよ!


「……えーい!」


 その圧倒的ぷるぷる感を! 1度味わえば虜になるその質感を!


「ふわぁっ! 何ですかこれ! 何ですかこれ!」

「いい感じでしょう? そして俺の使役する魔物は人を傷付けはしません。安全に、未知の体験ができるのですよ」


 俺の能力、『魔物使い』。

 自身を強化したり、強力な魔法を用いることはできない代わりに、特殊な技能を使うことができる能力。


 1つめは『封印』。能力で産み出した『封魔石』に魔物を収納することができるぞ! ついでに魔物の情報も見れるぞ!

 2つ目は『命令』。『封印』した魔物に言うことを聞かせられるぞ!


 他にもいくつかあるが、とても便利!

 この力を使って、つくろうよ! モンスターパーク!

 目指せ! モンスターマスター!


「わかりました。いえ、まだ本当に危険性がないのか、とか色々ありますが……とりあえず話を進めていきましょうか」


 姫さんや、せめて体を起こしてからまじめな顔をしておくれ。

 気持ちはわかるけども。




「ところで、なぜ魔物なのですか? 今の話にあったものならある程度他の安全な物でも代用できそうですが……」

「……そうですけど、この方が手っ取り早いから、ですよ」

「それもそうですね!」


 ……。

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