第2話 魔王討伐を終えて
「魔王討伐……ここまで長かったわね」
グランヘイム王国に向かう馬車の中、ミライが感慨深げに呟く。
俺たちがこの世界に転移してきたのはおよそそ4年前。
当時13歳だった俺たちが4人で遊んでいた時、突然この世界に召喚された。
俺たちを転移させた者たちはグランヘイム王。
何でも、近いうち復活するであろう魔王を倒すために勇者の資質を持つ者を召喚したんだとか。
自分たちでどうにかしてくれと思ったが、魔王を倒すには特別な力、聖属性の魔法が必要とのこと。
この世界の人間が扱える属性は、火、水、風、土の基本属性に加え、光、闇の特殊属性だけ。
神獣など、特別な存在でもない限り聖属性は扱えず、異世界召喚に頼る他ないのだとか。
加えて、異世界を渡るものは副作用的に『特別な恩恵』を得られる。
実際に魔王と戦ってわかったが……この『恩恵』がなければとても魔王に太刀打ちはできなかった。
「けど、やっぱり元の世界には帰れなかったかぁ……」
今話しているミライは、基本属性の高い適性を持ち、魔法の能力を向上させる『大賢者』の恩恵を得た。
この世界のほとんどの人達は1つの属性しか扱えず、その1つを究めるのにも長い年月がかかる。
ミライはこの4年間でほとんどの魔法を究めたと言えるほどの研鑽を積んできたのだ。
そのミライだが、割とわかりやすい性格をしている。
簡単に言うとユートに惚れている。めちゃくちゃ。
だからこれまで、必死にユートと元の世界への帰還を願って頑張って来たんだよなぁ。
そしてその赤っぽい髪の毛と同じように快活な性格をしており、俺たちの旅を明るいものにしてくれたのは彼女だ。
本当……その恋、応援してるぞ!
「予想していたとはいえ……正直、結構堪えるよ……」
ミライに返事をするのは勇者であるユート。
圧倒的な身体能力と聖なる魔法で持って人類の敵を屠る。
この世界を救うため召喚された彼を前に、各国は争いを止め、魔王討伐に一丸となる。
まぁ、ユートと敵対したら国が滅びかねないからね!
ユート本人の強さとしても、それに頼らざるを得ない世界情勢としても。ユートに何かしたら周辺国から集中攻撃を食らうだろう。
ユート本人はお人好しで嫌味な部分もない好青年。
絵にかいたような爽やか金髪イケメンで、その佇まいからすでに聖なるナニカが出てる、気がする。
何がきっかけで仲良くするようになったかは――忘れたけど、それでも大事な友達だ。
こいつのためなら自分の命くらいは賭けられる。そんな関係。
で、聖なる魔法だが……正直良くわからん。
魔王的な奴に特攻なんだと思う!
「本当にやるの、あれ」
ぼそっと、端的に話すのは聖女ノノ。俺の幼馴染。
多分本人は姉ポジだと思っているが、俺としては妹みたいなもの。干物型の。
昔はアルビノだとか背が低いとかいつもボーっとしてるとかで結構いじめられてたっけ。
そんな彼女をいつも守ってやってるたからな、俺に懐いてるはず、多分。
一見すれば、白い髪も透明感もその儚さも、聖女と言うに相応しい見た目ではある。
見た目だけだけど。
聖女である彼女は光属性に強い適性を持ち、回復や結界、身体強化魔法の支援魔法を得意としている。
一応攻撃魔法も使えるが、一般の兵士たちと比べちょっと強い程度。
そして俺! 魔物使いレイジ!
何だよ魔物使いって! 1人だけ完全に浮いてるよ! 見た目も普通過ぎて逆に浮いてるぞ!
能力は魔物をテイムする! 使役する! たまに合体する!
何だよ合体するって!
しかも、この世界には所謂ステータス魔法の類が存在しない。
何となく「あ、これできそう」みたいなのが頭に浮かぶことがあり……それの試行錯誤の連続。
4年間、よく頑張ってきたわ。
ちなみに、『勇者』はともかく、『大賢者』『聖女』『魔物使い』の能力名は王様を始め、グランヘイム国の人達が命名してくれたぞ!
こういうのってさぁ! 神様みたいなのが出てきて説明してくれるんじゃないの!?
ほんと、神様と会話できれば……こんな苦労はしなくても済むのにね。
それで、ノノの言った『アレ』と言うのは……。
「モンスターパークね。正直、元の世界に戻れる方法としては……それしか現状方法がないし……」
「でもさ、いいじゃない!」
渋々と言った感じのミライに対し、ポジティブの塊であるユートは明るく答える。
「確かに、本当にこれで戻れるのか確信はないし、回り道かもしれない。けどさ……何だかモンスターのテーマパークって楽しそうじゃない! ワクワクするよ!」
にこにこと、一切曇りのない笑顔のユート。
1番元の世界の戻りたいと思っているはずのユート。
「まぁ、お前がそういうなら……俺は全力でやるぞ!」
「うん、頑張る」
「そうね……」
作ろうぜ! 俺たちのモンスターパーク!
「まっ! まずは王様に認めさせないといけないんだけどね!」
1番頭のいいミライを筆頭に、どうやって話を進めるか……あーだこーだ言いながら王都への道を進むのだった。
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