おいでよ!モンスターパーク!~魔王を討伐したのに元の世界に戻れなかった俺たちは能力を使ってテーマパークを作る~

公公うさぎ

第1章

第1話 始まりの終わり

 ――魔王封印の地。




 長い長い旅の果て、遂にこの時が来た。

 俺たちが異世界召喚された目的、魔王討伐。


 それが今、目前に迫っていた。


「食らえ! 魔王! 『煌瑠刹斬・黎明』」

「グルォォァァアアアアッ!!!」


 我らが『勇者』、ユートが聖なる魔力を剣に纏わせ、既に傷だらけの魔王を斬りつける。

 爆散した魔力は、まるで朝日のように眩しい。


「グルル……ゴァァァアアアッ!!!」

「させないっ……『結界・絶』」


 魔王がその膨大な魔力を込めたブレスを放ってくる。

 人間なんか掠っただけでも消滅しそうだが、ノノの結界魔法が難なく防ぐ。


 彼女は光魔法のエキスパートで、『聖女』だ。


「グル……」


 防がれるとは思っていなかったか、魔王がたじろいだ。


「食らいなさい! 『フレアプロミネンス・オーバードライブ』!」


 その隙を突き、ミライが火炎の嵐を魔王に叩きつける。

 彼女は基本属性全てを最大限に使いこなす『大賢者』だ。




 これが俺の仲間であり、同郷の友だ。

 勇者、聖女、大賢者と、魔王を討伐するのに申し分ない能力を持っている。

 正直羨ましい。


 一方の俺は……『魔物使い』。

 その名の通り魔物を使役して戦うのだけど……魔王を相手に戦える魔物なんかほとんどこの世にいない訳で。


 加えて俺の身体能力は一般人並み。魔法も使えない。

 なのでこうして、ノノさんの後ろに隠れて解説役をしています!




「フシュゥ……!」


 砂埃が晴れ、そこにいたのはミライの強力な魔法を障壁で防ぐ魔王、カルマシオン。

 ミライの渾身の魔法は、魔王どころかその障壁にすら傷1つ付けられなかった。


「……やっぱりね」

「『魔王の障壁』……あれを破れるのは聖魔法だけ……」


 勇者など一部の者にしか使うことができない聖魔法。


 魔王が勇者にしか倒せないと言われる所以でもあるが、その勇者の攻撃でさえ並みの攻撃ではびくともしない。

 障壁を破るほどの攻撃を放てばユートの魔力が尽きてしまい……前回魔王と対峙したときはこの障壁の前に逃げるしかなかったのだ。




「……頼むぞ! レイジ!」


 そして俺……『魔物使い』レイジがここにいる理由は解説役でも足手まといのためでもない。

 3人の仲間にも劣らない能力があるからだ!


「行くぞ! 煌龍皇シィルリィーンズ!」


 魔石を頭上に掲げ、魔王とも戦える一握りの魔物を召喚する!


「『人魔一身――』!」


 さらに! これが奥の手! 俺だけが使えるとっておき!


「煌龍皇モード!」


 ドラゴンのような腕と翼、白く輝く2本の角。

 魔物との融合を果たし、白き龍王の魔力と力を身に纏う!


 『人魔一身』、言葉通り魔物と一体化し、その力を何倍にも引き上げる!


「煌龍皇、力を借りるぞ!」

「――!?」


 勇者以外で唯一……神獣の持つ聖なる魔力。

 それを両手に集め、集め、ひたすら集め……!


「『ホワイトジャッジメント』!」

「ゴァァァアアアッ!?」


 先の魔王のブレスには劣るが、それでも高密度の聖なる魔力が障壁を打ち砕く!


「……さすが」

「今よ! ユートっ!」


 俺が障壁を破ることを信じ、極限まで力を溜めたユートが魔王に飛び掛かる。


「終わりだっ! 『斬魔光刃破・終』!」

「グゴォォォァァアアアアーッ!!!」


 天を裂くほどの巨大な光が魔王を貫き、やがて魔王は沈黙した。


 ◇


「……終わったのね」

「あぁ……これでやっと……」


 4年以上にも及ぶ俺たちの旅。

 それがようやく終わりを迎える。


「うーん……転送、始まらないね」

「……ん」


 ここまで頑張ってきたのは、偏に元の世界に戻りたいからだった。

 しかし一向に召喚や転移が行われる気配がない。




「……とりあえず、一度王都に戻ろうか」


 仕方なしに、俺たちを召喚した王がいる国へと戻ることとなった。

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