第5話 対価は支払いたいのです。

ハンクスさんの執務室にある応接セット。

執務室にある応接ソファもフカフカのいいやつです。

部屋はシンプル。装飾とかギラギラしてなくて落ち着く。


1人掛けソファにちょこんと座りショボショボしたオレ。

目の前にハンクスさん。

「ごめんなさい。」


高台にあるこのお屋敷の周囲までピッカーと光らせてしまったので反省中です。

テンション上げてすみませんでした。


「いえ。使った魔法はクリーンということですし光った範囲や何か変わったことがないかの調査は今させていますので。

マサト様は魔法をお使いになれるのですね。」


「はい。白虎さんにとっくんしてもらいました。」


「今まで幼子の使徒様は居なかったものですからお聞きしておりませんでしたね。

その年齢で魔法が使えるというのは流石と言うべきか…」


「えっと。オレはちいさくみえますが!いやちいさいですけど

もともとはおとなです!!

こっちにきてちいさくなっててこどもですけどなかみはおとなです。」

うーん。この身体になってからうまく言葉で説明するの難しい。

これでもちゃんと話せるようになってきたのだ。


「【オレ】という一人称に違和感がありますな。

3歳くらいに見えますがマサト様は成人された大人ということでしょうか?」


「オレっていうのへんですか?えっとそうです。多分、ハンクスさんより年上です。」

ハンクスさんどうみても30代になってるかどうかだもんな。

オレもっとオッサンです。


「そうですね。まず【オレ】と自分の事をいう方もおりますがマサトさまの見た目の年齢や天使のような容姿ですと違和感がありまして。申し訳ございません。

また、丁寧にお話しされることや私どもとの話の理解度からいっても見た目どおりの年齢ではなさそうなこともわかりました。」


一人称【オレ】はダメだしされてしまった。

ハンクスさんみたいに【私】っていうのはなぁ。会社員の時には使ったことあるけど普段から使うの無理めです。


「えっと【ぼく】ならつかってもいいですか?

【オレ】はもうすこしせいちょーしたらつかいまつ!」


「そうですね。そうしていただけると助かります。」


よし!ぼくを使おう。


コンコン


気配を消していた執事さんがノックされたドアのほうに対応に行き

戻ってきてハンクスさんの耳元でコショコショしている。


「マサト様。魔法で光ったこの屋敷と屋敷周囲の様子の報告がまいりました。」


はぅ。何事もありませんように!


「まず、周囲ですがクリーンの魔法効果でキレイになったうえ、光の範囲が全て浄化されております。

瘴気の影響で悪くなっていた土が元気を取り戻し芽吹いている状態です。

さらに屋敷内ももちろん隅々までクリーン効果が発揮され本日の掃除人の仕事がないほどです。」


「それはもんだいなかったということでしょうか?」


「そうですね。ありがたい影響しかない状態です。

しかも、屋敷中の空だった物を含めて魔石の全てが満タンに充填されているとのことです。」


「?

それもよかったねってことですか?」


ハンクスさんが眉間を揉む。

「よかったねってことなんですが。

普通は魔石への充填はそこそこコストのかかる仕事でですね。

魔石を充填するのにもお金がかかります。

瘴気の影響が長く続いていたせいで魔石の使用を節約もしていましたしウチとしましては大変ありがたいのですが今その対価をマコト様にすぐにお支払いすることができないのです。」


「ん?たいかいらないです。うっかりやってしまったはぼくのミスです。」


「そういうわけにも…」


「はい!では[たいざいひ]です!ここでおせわになるたいかです!」

元気に手をあげて応える。

対価として押し切るぞ!

そう。お風呂からでたら衣服一色用意されていたのだ。部屋も浴室、トイレ付だし、小さいからと言って手伝ってくれるという従僕さんも紹介された。

これは高級ホテル並みの料金が必要なのでは?と思っていた。

しかしこの世界に身ひとつで来たらしいオレには支払えない。



「対価…滞在費…確かに大人でいらっしゃるようだ」


「へやや、みのまわりのもの、しょくじ、すいどうこうねつひ…たいかがたりないのでは!?

そうだ!ぼくマモノ持ってます!

おにくたべられるやつかな?ツノのあるまっくろのうし、くま、ブタもなんかよくわかんないのもあります!」


「魔物を持っている…なぜ…どこに…」

ハンクスさんがまた眉間を揉みはじめた。


「白虎さんのとっくんでかったやつでぼくたべなかったし白虎さんもたべきれないっていうのでもってます。

くさってません!いつだしてもしんせん!獲りたてほやほや!だしますか?

大きいしいっぱいなので庭でだしますか!」


どうにかして追加で滞在費を捻出しなくてはと思ったオレは真剣だったんだがハンクスさんと執事さんがドン引いていたのだった。


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