第2話 白虎さんといっしょ
池に落とされたオレは慌てた。
どうかんがえてもこの赤児ボディでは泳げない。
力を抜けば身体はプカっと浮かぶのでは?と思って実行してみたがうつ伏せのままオシリだけ浮いていく。仰向けになりたかった。
息が続かない!
ぷはっと息を吐いてしまう。
「うぐぐぐぅ」
ん?
あれ?息ができる。っていうか水を吸い込んでしまったのに苦しくない。
「ほえ?」
首のあたりを引っ張られる感覚とともに水から引き上げられた。
『飲めた?』
ホワイトタイガーさんが引き上げてくれたようだ。
「あばば」
溺れるかと思った。
『あなたは人とは色々違うから水の中も大丈夫でしょ。
さぁ!濡れてしまった体を乾かすのに魔法の使い方を教えるから色々やってみましょう。』
「ほえ!?」
魔法というワードが衝撃的すぎてすごいこと言われてる気がするけどスルーしてしまおう。
魔法!使いたい!
『あなたは大人だったし、発達した世界から来たから色々できると聞いているわ。
魔法は想像と創造力、そして魔力量。
魔力量は心配しなくても大丈夫!さあ魔力を感じるところからよ。』
それからはホワイトタイガーさんの魔法講座に夢中になってしまった。
自分の中の魔力を感じ流れてと出す量などの加減を教わる。
髪を揺らす程度の風を吹かせようとしてもうっかり竜巻がおこる程のめちゃくちゃ具合だった。
魔力が多いとそうなるらしい。
微風の練習から池に落ちた自分を乾かすためにぬるめの温風にするまでに1日かかった。
『そろそろ休みましょう。寝る子は育つのよ。』と言われてどこで寝るのかと思ったら
ホワイトタイガーさんのお腹がモフっと寄ってきた。
もふもふに埋もれる至福の時間よ。
温かさにすぐに寝てしまうのだった。
ホワイトタイガーさんはこの世界では白虎と呼ばれる聖獣らしい。
この聖域の主で長く生きているのでオレのお世話を頼まれたということだった。
心地よい気温と良い空気の中で過ごす日々で魔法も順調に覚えた。
『わたしは決まった属性の魔法しか使えないけどあなたはなんでも使えるはず。
想像力を駆使して頑張ってといわれ、色々やっては聖域を壊しそうになったりした。
火を使えば業火だったし消すために慌てて水魔法を使えばゲリラ豪雨だった。
そのおかげで修復や浄化、土魔法で辺りを慣らしたり植物芽吹かせたりもした。
特に浄化は加減が難しく1日の終わりに自分を綺麗にしようとして浄化の中で1番簡単な魔法クリーンを使ったつもりが聖域全体の浄化なってしまい池の水質が大幅に向上したり聖域の範囲が広がったりしてしまった。
加減覚えるの大事。
その加減を覚えつつ外に漏れ出る魔力を身体の中から漏れないよう練習もした。
身体に慣れるために座ったままラジオ体操の動きをしてみたり、一人で立って歩けるようになってからは朝晩の日課がラジオ体操。
そして聖域の外にある森で魔獣と呼ばれる獣を相手に戦闘訓練。
かぷっと優しく咥えられたと思ったら聖域から連れ出され歩いて帰れる範囲にポイポイ置いていかれる。
歩けるだけの幼児に酷い仕打ちだと思うのだが白虎さんはオレを幼児扱いしないのだ。
探査というか、自分の位置や外敵が向かってくるのに気づけてしまうのでこの方法でも全然問題がなかった。
歩くことで体力をつけさせたいらしいし魔法の加減も練習できる。
無駄な殺生はしたくないので向かってきて殺されると感じてから攻撃している。
最初魔獣に爪で攻撃されて「死んだ」って思ったのだがなんと無傷。
魔獣の爪折れてた。魔獣に体当たりされてもびくともしなかった。
どう見積もってもオレのが軽いのだが体当たりされたのに吹き飛んだのは魔獣。
物理的な法則はどうなっているのか。不思議ボディ。
殺してしまった魔獣さんは異次元BOXに収納できるという便利機能付きなので帰宅後白虎さんのご飯となるのだ。
オレの食事は自分で魔法で水を出し、聖獣さんが何処かから取ってきてくれた果物を魔法で切って食べている。
タンパク質は摂らないのか?とりあえず摂らなくても大丈夫らしい。不思議ボディだから。
野菜が食べたいと言ったら池の周りに生えてる草が食べられるって教えてくれたのでムシャムシャ。リーフレタスっぽい草をそのまま食べました。
ドレッシングというものはここにはないのだ!
ちょこちょこ喋ることにも慣れ、身体も動かせて魔法も使えるようになった頃、白虎さんに
『そろそろ人間の生活にも慣れた方がいいでしょう。
ここを出てちょっと田舎ののんびりした街から慣れていきましょう』
と言われて連れ出されたのだった。
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