第2話 葉っぱの香り

飯野さんと別れた後にすぐに山家さんのところにいくとなにか不自然な気がしたので一度パソコンで週案を作る。来週は続きの歌やってリコーダーやって新しい曲を聴いて終わりかな。なんていつも通りの流れを各クラスの欄に打ち込み喉を潤してから、山家さんの元に向かう。頼まれてから20分程経ったが山家さんは相変わらず真剣に取り組んでいる後ろから申し訳ない顔をして話しかける。「山家さ〜ん。今少し大丈夫ですか…?」後ろを振り向いた山家さんの目はキリッとしていて、一瞬不機嫌なのかと思ったがそういう雰囲気でもなかったため話を続ける。

「実は博多の出張に1泊2日…2日後からお願いできないかと、話がありまして…」少しの沈黙もとても長く感じた。山家さんは右手に握っているアメリカンショートヘアのボールペンで、手帳に出張の場所と時間を記入した。「はい。別にいいですよ。問題ありません。」と淡々と告げた。表情一つ変わらない山家さんが羨ましい。私ならどんなことであれ頼まれたりしたら、快い返事と爽やかな笑顔をつけて「全然問題ありません!大丈夫ですよ!気にしないでください!」なんて一言二言添えて良い人だと認知させる。ひとまず飯野さんからのミッションは成功した。離れた席で私たちのことを見ていた飯野さんは深くうなづいた。山家さんのネコグッズの中に葉っぱマークの消しゴムを取り出し匂いを嗅ぎ出した。

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