三日月
東京の夜、輝夜美月は静かに夜空を見上げていた。仕事を終え、立ち寄った高層ビルの屋上。そこには、澄み切った夜空に浮かぶ満月が輝いている。どこか懐かしく、そして切ない光。それを眺めるたびに、彼女の胸にいつも感じる得体の知れない想いがこみ上げてくる。
その翌朝、彼女は広告代理店「ルナクリエイティブ」で、会社の新しいプロジェクトに抜擢される。月をテーマにした大規模な広告キャンペーン。そのリーダーを務めることになった美月は、クリエイティブディレクターとの打ち合わせに挑む。
現れたのは、少し無愛想で、ラフな服装に無造作にセットされた髪。彼は軽くあいさつをすると、早速仕事の話に入る。
その人は、藤原亮と名乗った。
「月なんて、ただの天体だろう。それをどうやって広告に神秘的に見せるつもりなんだ?」
藤原は無表情のまま問いかける。その言葉に、美月は一瞬戸惑いながらも、しっかりと彼を見つめ返す。
「月はただの天体じゃないわ。人々に夢や憧れ、そして何か大切な感情を呼び起こすものよ。」
美月は確信に満ちた声で答えたが、藤原は肩をすくめて笑うだけだった。お互いに仕事に対する強い信念がぶつかり合い、二人の関係は最初から緊張感に満ちていた。
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