第5話

 ユーリ上級歩兵の指導を受けることになった私、タウラ・ノイエですが、訓練初日で体力不足がばれてしまいました。

 そこで翌日、ユーリさんはある命令を私に下しました。


「タウラちゃん、体力ダメダメじゃないっすか。よく昨日の戦闘で生き延びれたっすね……。うん、タウラちゃんには体力トレーニングからやってもらうっす!ってことでハイ、シャベル」

「ありがとう、ございます…?あの……これで何を?」

「何って、グラウンドを作るんっす!こんな戦場にグラウンドなんてないっすから、自力で作るんっすよ」

「えぇ……」


 というわけで始まってしまいましたユーリさんの基礎体力トレーニング、初日はグラウンドの自作から!

 って!バカなんじゃないですか?私まだ14歳ですよ?そんな子供に重労働なんてありえませんよ!


「あ、これ一応上官命令だから。従わなかったらどうなるか、分かってるよね?」


 はうぅぅぅ……ユーリさん、セコイっすよ。



 ということで、丸一日作業して出来上がったグラウンドは驚くほどデコボコで。

 泣きながら先輩方と完成させた頃にはすっかり、昇ったはずの月が沈んでおりました。


「はいタウラちゃん、お疲れっす。朝ごはん食べたら14時まで休んでていいっすよー」



 というわけで一旦サージ先輩と合流して朝食を食べ、仮眠をとりました。



「おっ、タウラちゃん!ユーリから聞いたぞ、体力トレーニング頑張ってるんだって?……ところでな?『盾』はこんな感じで…ほら、半透明にできるんだぜ?知ってたか?」

「おぉぉ!お見事です、先輩!ユーリさんが言ってましたよ、それが出来るのは変態だけだって。……先輩やっぱり変態だったんですね」

「お、おっふ……その冷たい視線も久しぶりだ、いつも以上に嬉しいな…ふへへ」

「うっわ……。まあ、別に先輩に冷たくしてたわけじゃないですけどね。そもそも、どれだけ冷たい視線を送ったかは覚えてませんが」


 あの後サージ先輩とは話していなかったので、まだ怒ってたりしないか不安でしたが、杞憂だったようです。


 鬱陶しくないと言ったら嘘になりますが、普段通りの先輩とお話ができて少し安心です。


「タウラちゃん、この後は仮眠かい?」

「はい、14:00までの仮眠を許可していただきました」

「そっか…じゃあ、オレがついてやろうか?他の隊員に襲われでもしたらことだからな」

「え?いや、いいですよ。むしろ先輩に襲われる気がします」

「えぇ……流石にそんなことは、無い…」

「なに狼狽えてるんですかっ、まったく」

「いや、真面目な話、女性兵を襲ったら罰則あるから。しかも我らが小隊長殿はそう言うの細かいからね、破ったら問答無用でクビだな」


 ツーロン中佐、部下の安全のためにそんなに気を使ってらっしゃるとは。


「そう、ですか…じゃあ…おねがい、します……スゥ、スゥ」

「ありゃりゃ、……お休みタウラちゃん」




「マドリーシヤ大攻勢」まだ残り5ヶ月と11日

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