第4話

「タウラ下級歩兵、貴官は先の戦場で何をしていた?」

「はっ!後方で戦況を見ていました!」


 どうやら私が戦場で仕事をしていなかったことに、ツーロン中佐殿は気づいていたようですね。


「そうかそうか。つまり貴様、戦友が奮闘する中でのうのうと見学をしていたと?

ハッハッハッ!……ふざけてんじゃねぇぞキサマ!!!今日の戦闘で何人が死んだと思っている!!あいつらが死んだのも全部、キサマのせいだ!!キサマの分の穴埋めでアイツらは死んだ!キサマは、自分のせいで、味方を死なせたんだ!!!」

「ッ!すみません!すみません!」


 それは流石に横暴だ。なんて言えるわけもなく。

 実際、私が仕事をしなかったせいで少なからず戦闘に影響は出たはずで、その結果味方が死んだ。と言うのは普通にありえることですし。


「…ふぅ……。一応、言い訳を聞いてやる。なぜ戦闘に参加しなかった」

「っは、はいっ…じ、実は私ッ、軍に入って2日目で、まだ何の訓練も受けてないんですッ。なのに、私いつの間にかこんなっ、こんな最前線にいてッ!」

「ハ?」

「で、ですからっ」

「オマエは上官に向かって嘘をつくというのか!」


 信じてくれません。まあそりゃ、いかにもエリート部隊って感じのするココに、訓練もされてない新兵が送られてくるなんて信じられませんよね。


 ッ!マズイです。中佐殿、私に銃口を向けてきました。


 正直このときの私は内心冷や汗をかいていました。

 私は彼の評判や噂というものを、当然ですがかけらも聞いていなかったので、彼がどんな人物なのか全くわかりませんでした。

 最悪このまま撃ち殺されてしまうのではないかと、気が気でなかったのです。


「キサマ、『盾』は展開しないのか?このまま撃ったら、キサマ死ぬぞ?それとも死にたいのか?」

「は?『盾』、ですか?……し、支給されていませんので…」


 「盾」ってどういうことでしょう?しかも、展開するって一体??


「…は?キサマ『盾』の展開すらできないのか?歩兵として最低限使えなくてはならない初歩の魔法だぞ!士官学校で一体何をしていたんだ!!」

「えっ、ま、魔法って魔導士しか使えないものなんじゃ……?」

「ナニ?確かに一般人にはそういう事で通してはいるが……もしかして貴様、本当に訓練を受けていないのか?」

「そ、そうですよ!ついさっき軍隊に入りましたので」


 どうやら、ようやく私が嘘をついていないと信じてくれたみたいです。


 ツーロン中佐は何かを考え込むように沈黙しました。

 少しして何か案を思いついたらしい中佐殿は、私についてくるように命令しどこかに向かって歩き始めました。



「……あ、あの…ち、中佐殿?一体どちらへ……」

「……。」


 さっきから中佐はこんな感じでずっと無口です。

 やっぱり怒ってらっしゃるのでしょう。こんな無能をよこした、軍の人事部に。




「おい、ユーリ!コイツに盾魔法の使い方を教えてやってくれ!どうやらあっちでは訓練を受けさせる余裕もないらしい!」

「は、ハイッス!あ、よろしくっす、自分ユーリ高等歩兵っす!えっと……」

「あ、失礼しました!自分はタウラ下等歩兵です!よろしくお願いいたします!」


 私はどうやら、このユーリ上級歩兵のもとで「盾」とやらの使い方を教わることになったようです。

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