第6話 厳しいレストラン事情
華やかに映るレストラン業界ですが多くのレストランの経営はあまりゆとりがあるものではありません。なのでレストラン経営者側も従業員一人一人の生活を保障することは難しくなります。なかにはかなりきわどい経営と雇用形態をとっているレストランもいくつかありました。
そのためにレストランで働いているスタッフのほとんどは厳しい生活をしいられます。
接客スタッフはキッチンスタッフに比べてさらに条件が厳しくなります。接客経験が長くても正社員なることは難しく、シフトを安定して入れてもらうことが出来ません。キッチンのように暴力的な言葉が飛び交うことはありませんが、たくさんの人がいろんなストレスを感じています。
イギリスではチップ制度があるのでそれが少しはスタッフの助けになっていると思いますが将来に希望が持てずに転職していく人も多いです。そのため、接客スタッフは常に入れ替わりが激しく、安定した接客レベルを維持することが難しくなります。
年々最低賃金の引き上げが行われて少しずつ低所得者の収入が守られてきていますがそれはレストラン側からすると大変な問題です。小規模なレストランで言えば今の最低賃金は10年前のマネージャクラスの時給になります。
最低賃金は10年前に比べて1,5倍上がりましたがレストランの商品の値段はそれほど上がっていません。なので人件費をカットして今までと同じクオリティーでというのはとても厳しいのです。
またひと昔は原材料を購入してキッチンで大量に生産したほうが安くつくというのが常識でしたが今では人件費が上がりすぎているのでフライドポテト一つにしても冷凍のものを買うほうが経費の節約になります。ゴミの量も減らせますし忙しい時とそうでないときのストックコントロールが冷凍食品ならしやすいからです。
またレストランはどこも夜の営業が中心なので出勤時間が遅く、帰宅も夜中になります。そして平日よりも週末が忙しいのでレストランで働いている間は週末のイベントに参加することが出来ません。
そういう事情もあって結婚して家族が出来ると平日の仕事を希望して辞めていく人も多くいます。若い時からレストランで働き、10年以上の経験を持ちながらも別の職種に転職していく人がとても多いです。なのでレストランでは接客スタッフもキッチンスタッフも比較的若い年代のスタッフが多くなります。
繁盛期と閑散期の幅が大きいのも問題です。大体、夏は忙しく、クリスマス前も忙しくなります。しかしクリスマスを過ぎるとぱったりと客足が途絶えます。ここから春になるまでレストランは大変厳しい時期を耐えなければなりません。
そのため、クリスマス前のかき入れ時に従業員を多く採用しますがクリスマスの後にすっぱりと切り捨てなければなりません。従業員もそれを承知しており、びくびくしながら働いています。
年間を通しての売り上げの上下は予測できますが時々起こる物価上昇や不景気などもいち早く売り上げに影響が出ます。誰もがレストランで食事をすることを一番に節約するからです。
最近はSNSなどの発達でレストランの宣伝が容易になりましたが、それと同時に悪く書かれることも心配しています。悪意のある書き込みをされることもあってレストラン従業員はとても気を使っています。情報は写真付きでアップされるので信憑性があり、レストラン側が反論する場所も限られます。
しかしSNSによって昔よりサービスが丁寧になっているのも事実です。もちろんいいコメントが書かれることも多く、それが従業員全体の励みになります。接客スタッフに名札を付けているレストランではいい評価がもらえるとその人の昇給や昇進の助けになります。
評判のいい接客スタッフは年に一度のスタッフオブザイヤーに選ばれて羨望のまなざしが向けられます。
それは若いスタッフのやる気と希望を生み出します。
そしてここ最近は急激にアレルギー対象食品が増えて料理を提供するのが年々難しくなってきています。お客さんの中には2つ、3つのアレルギーを持っている方もおられます。
忙しく緊迫した仕事の中で素早く正確に判断できなければとても怖い事態も起こりえます。
いまだに完全なマニュアル通りのレシピがなくシェフ一人一人の舌と技術に頼っているレストランにこの事故は起こりやすいです。
なぜならシェフがその日の気分や使いたい材料を使って自分の味で料理するとその人が非番の時にその食品の原材料は誰もわからなくなります。今はグルテンアレルギーが多い中、意外にグルテンが入っているものも多く、例えばマスタードや醤油などがあまり知られていません。
そういう隠し味的なものを使ったことがきちんとすべてのキッチンスタッフに熟知されていなければ事故は必ず起こります。なのでどんなに小さなレストランでも原材料をきちんと明記しなければならないはずですがそれがきちんとできているレストランはとても少ないです。
このようにアレルギーやダイエット食が増えていくとメニューを作ることも難しくなり、すべてのダイエット食品やアレルギーに対応した商品を提供するとなると味や経費も大きく変わってきます。
そしてここでも期待されているのが冷凍食品です。すでに工場で生産された食品ならば完全に衛生管理された食品が高水準で安定して手に入り、その上すべての材料が記載されています。
購入した食品の原材料をコンピューターに入力し、メニューごとにアレルギー対策をすれば事故は格段と減らすことができます。
または食品の廃棄問題も深刻です。レストランとしてはできるだけ経費を節約したいのでストックコントロールを完璧にしたいところですがレストランは日や天候によっても客足が左右されます。それらを完璧にコントロールすることは難しく困難です。
肉や魚は冷凍保存ができますが生野菜や果物はすべて廃棄処分されます。レストランで廃棄される食材の量は一般の方からは想像もできないほどの量です。
この問題にも冷凍食品の活躍が期待されています。
このようにレストランのメニューに冷凍食品やパッケージされた冷蔵食品が幅を利かせるようになればレストランのシェフの仕事の価値が変わってきます。若いシェフが学ぶ場も少なくなりますし、シニアシェフも調理の技術というよりキッチンのマネージメント能力が高い人のほうが重宝されます
そしてこのままいくと遠くない将来必ずシェフはロボットに仕事を奪われると考えられます。
今考えられているシェフロボットはプロフェッショナルの手の動きから目の動きを完璧にコピーしてミシュランレストラン基準の物をロボットにコピーさせる技術を開発していますが衛生管理と適度な温度での食品の温めと盛り付け程度ならそれより簡単に早く実現するでしょう。その時、完全にロボットは人間にとって代わります。
いつの日かどこのレストランも経費削減のためにそのような店舗に作り替えると思われます。
経費削減と従業員の確保、宣伝や口コミの評判、衛生管理や廃棄物の問題などレストランが抱える問題は多いです。
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