第3話 キッチンスタッフの階級
大体どこのレストランでも上司の言うことが絶対という縦社会ではありますがそれはイギリスでも同じです。
まずキッチンで一番偉いとされているのがヘッドシェフですがホテルの場合、この地位はジェネラル・マネージャーと同等と考えられています。また規模の大きなホテルではエグゼクティブシェフなどと呼ばれ、普通のレストランのヘッドシェフとの違いを表した言い方がなされます。
ヘッドシェフの仕事はメニューを考案し、スタッフの採用とシフト決め、キッチン設備や調理器具の管理や購入、衛生管理責任など途方もない仕事量とそのすべての責任を担います。
しかしその下の副料理長(通称スーシェフ)の仕事はスタッフの指導と食材の発注くらいでヘッドシェフに比べて仕事の量と責任が少ない分、ストレスもかなり少ないです。
ヘッドシェフが事務作業に追われる中、実質このスーシェフがキッチンを仕切ることが多く、キッチンスタッフを思うように使うことが出来るのでみんなが羨むポジションでもあります。
キッチンの役職は
1, Head chef またはExecutive chef 料理長 キッチンすべての責任者
2, Senior sous chef シニアスーシェフ 副料理長
3,Sous chef スーシェフ
4,Junior sous chef ジュニアスーシェフ
5,Senior chef de partie シニアシェフデパーティー
6,Chef de partie シェフデパーティー
7,Demi chef de partie デミシェフデパーティー
8,Commis chef コミシェフ
9,Apprentice chef アプレンティスシェフ
という順番があり、大きなホテルではさらに特別料理担当として
・Breakfast chef 朝食担当シェフ
・C&B chef 結婚式などのイベントシェフ
・Pastry chef デザート担当シェフ
・Prep chef 準備やサポートのシェフ
などがあります。
そしてこの特別料理担当シェフの地位はそのホテル経営の力の入れどころによって決まります。もしそのホテルが宿泊と朝食に力を入れている所だと朝食担当者が役職の上位に食い込んできます。
また女性の利用客をターゲットにしたアフタヌーンティーに力を入れているホテルなどではデザート部門をディナー部門と切り離してペストリーヘッドシェフに権限を与え、その部署の中でさらに階級を分けたりします。
反対に小さなホテルだとディナーシェフの中で手が空いたスタッフが交代で朝食やデザートを担当します。
またよくあるのが朝食担当者を朝食兼料理補助のように使い、朝食サービスの時間が終わった後にデザートやアフタヌーンティーの準備の他、別のシェフの仕事を手伝わされます。
このようなホテルでは朝食担当のシェフはなかなか役職の上のほうには上がれないことが多いです。とにかく上下関係を重んじるキッチンなので誰が誰より立場が上なのかが明確にわかるように表されており、一つでも役職が上だとその人の言うことは絶対なのです。
そしてそれとは別にお皿や鍋を洗ってくれ、キッチンをいつも清潔な状態に保ってくれる存在がいます。それが
・Kitchen poter 洗い物やキッチンの掃除を担当
です。彼らはみんなが帰った後、最後まで残ってキッチンを掃除し、ごみを捨て、電気を消して帰ります。またシェフたちが忙しく手伝いが必要な時は手助けしてくれます。
このキッチンポーターの方々とうまく付き合うことが出来ると、こまごまとした問題が起こった時にさりげなく手を貸してくれるのでとてもありがたい存在です。
日本では料理の世界に飛び込んだ若者は必ずこのお皿洗いから始って仕事をしながら横目で技術を盗めなどと言われたりします。しかしここイギリスでは料理人とは違う部署としてグループ分けされていて経験を積むとキッチンポーターの班長的な存在になります。
そして最近ではキッチンのスタッフがどうしても足りないとき派遣会社に応援を頼むレストランが増えています。レストラン経営は繁盛期、閑散期があるのでフルタイムスタッフを増員するのが難しいうえ、スタッフ内のトラブルも多いのでいきなり辞めてしまうというリスクもあります。また新しくできたレストランに数人まとめて引き抜かれたりすることもあります。
派遣会社から派遣されてくるシェフの時給はかなり高く設定されているのでほとんどが短期で契約解除されます。大体、どの派遣スタッフも一通りのレストランキッチンの知識を持っているので仕事をすぐに始められ、スタッフともすぐに打ち解けます。
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