第9話 手合わせ6
「!?」
ゴライアスは心底驚いた。
アレンの取ったのは自分と同じ上段の構え。
その意味は『防御を捨てて、相手に素早く強く打ち込むことに全てをかける』こと。
おそらくだが、唯一対抗できている剣のスピードに勝負をかけると言うことだろう。
狙いは理解できる。
理解できるが。
(……なんて度胸だよ。さっきまで俺の上段からの振り下ろしにボコボコにされたってのによ)
そう。
見ただけで明らかな体格と筋力の差。加えてつい先ほど、その恐ろしさを嫌と言うほど味わったはずだ。
なのに躊躇なく、防御や回避の保険を捨てて上段の撃ち合い勝負を挑んできた。
(……何より覚悟を決めたコイツの威圧感)
歴戦のゴライアスが思わず後退りたくなるほどだ。
凄まじい集中力と殺気で剣を構えこちらを見ている。
ビリビリと肌で感じる研ぎ澄まされた意思。
勝つのは俺だ。
その執念が伝わってくるようだった。
だがそれはゴライアスとて同じ。
勝つのは俺だ。
負けるのは好きじゃない。
「いくぜ、誇り高きエルフの剣士」
ゴライアスはそう言って力強く踏み出した。
本日最高速。
アレンも地面を蹴った。
こちらも本日最高速。
よって一瞬でお互いの間合いは詰まる。
必然、剣と腕のリーチが長いゴライアスが、先にアレンを間合いに捉える。
アレンの剣が届かず、自分の剣が届く距離。
その距離になった瞬間に剣を振り下ろした。
火の出るような凄まじい速さと威力の打ち込み。
喰らったら今のアレンなら戦闘不能は不可避だろう。
しかし、アレンの体がここでさらに加速した。
(……!?)
防御や回避を捨てたからだろうか、本日の最高速をさらに超えてくる。
よって二人の剣がどちらも命中する間合いに踏み込まれた。
(だが……結果は変わらない!!)
なぜならゴライアスはもう剣を振り始めている。
ようやく間合いに踏み込み、今から剣を振り下ろすアレンに負ける道理はない。
アレンの剣が振り出される。
(勝った!!)
ゴライアスが勝利を確信する。
だが振り出されたアレンの剣の軌道は……。
(いや待て!! これは……!?)
そして。
互いの一撃が交錯し。
「……」
「……」
ゴライアスはまた口元をニヤリと歪めた。
「……まったく、これだから真剣勝負はやめらんねえなあ」
ズバッ!!
とゴライアスは胴体を深々と切り裂かれ、その場に倒れたのだった。
ーー
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