第7話 手合わせ4
(……とりあえず、相手の攻撃を防御できる算段はついた)
アレンはそんなことを考える。
大型の猛獣との戦いで身につけた脱力からの剣を使った投げ技、名前はそのまま『刃投げ』。
どうやら人間にも有効なようだ。
防御ごと吹っ飛ばされた時はどうしようかと思ったが、カウンター手段があれば思い切って踏み込んで。
そうと決まれば、こちらから仕掛ける。
僕は地面を蹴った。
「速い!?」
ゴライアスは驚いて目を見開く。
僕はゴライアスの懐に飛び込むと、肩に向かって剣を振る。
「ちっ!!」
命中。
……したが、僅かに掠っただけ。
服を裂いて少し皮膚を切ることができたが、僅かに血が流れただけ。
これだけの大男ではダメージのうちに入らないだろう。
「先に一撃入れられたのは二十年ぶりだぞ!!」
ゴライアスが反撃の剣を打ち込んでくる。
僕はそれを右にステップして回避。
反撃でもう一撃。
今度もゴライアスは巨体に似合わぬ反応の速さと素早さで躱す……が、躱しきれずに脇腹の部分に命中。
今度は前より深く入れられた。
少しずつ、人間との戦いに慣れてきた気がする。
「ちょこまかと鬱陶しい速さだな!!」
ゴライアスはそう言うが、実はそこまで速くはない。
鍛えても筋力がないエルフなのだから、実際の速度として速く動けるということはないのである。
しかし、加速の早さ。
最高速に乗るまでの時間は丁寧に削ってきた。
これも野生動物を見て学んだこと。
猫や虎型モンスターなどは一瞬でトップスピードまで到達する。
これに対抗するには、彼らの動きを研究し取り入れるしかなかった。
今の僕は大体スタートからコンマ二秒以内で、最高速に達することができる。
(よし……ぺースを掴んだぞ)
僕は素早さを駆使して、ゴライアスに次々に斬撃を叩き込む。
ゴライアスは剣を使って防ぎ、それができなければ躱し……と簡単に仕留められはしないが、徐々に切られた箇所が多くなってくる。
完全にこちらが有利な状況だ。
……しかし。
(……倒れない!! なんてタフさだ!!)
致命傷は完全に避けられているとはいえ、もう数十回は剣を喰らっている。
のはずなのに、全然倒れる気がしない。
「はは。なんだ人を化け物を見るような目で見て」
ゴライアスは笑って言う。
「こっちがお前をその目で見たい気分なんだぜ? ……まあ、しかし、このままだとめんどくせえな」
ゴライアスはそう言うと、地面を強く蹴って大きく後退した。
そして一度こちらとの距離を取ると。
「こうなったら力技だ」
そして、基本的に片手で扱っていた剣を両手で持ち。
振り上げた形のまま構えた。
「お前、我流だろ? これ剣技では『上段の構え』って言うんだぜ」
ゴライアスは言う。
「敵が何してこようと関係ねえ。最速で最強の一撃を先に叩き込んでやるって構えだ」
そう言いながら、足を擦るようにして動いてこちらに近づいてくる。
凄まじい威圧感。
とはいえ、引いたところで何かできるわけでもない。
ゴライアスの剣の間合いに僕が入った。
(こちらから打って出る!!)
そう思って前進しようとした時。
(……!!)
僕は凄まじい威圧感を感じ、全力で横に飛んだ。
次の瞬間振り下ろされるゴライアスの剣。
速い!!
攻め込んでいたら、先に剣を叩き込まれていただろう。
しかし、驚いたのはその後だった。
ズドオオオオオン!!
と、ゴライアスの剣が命中した地面にクレーターが発生したのである。
「なっ……!!」
驚く僕にゴライアスは言う。
「技量勝負の負けを認めたみたいで癪だが……腕力も剣の腕のうちってことで納得するぜ」
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