第2話 夢

 アイズは目の前に広がる緑豊かな草原を見つめていた。

風が心地よく吹き抜け、平和な日常が戻ったかのようだった。


「アイズ!」


振り返るとそこにはリナがいた。

彼女は笑顔で駆け寄り、無邪気な声で言う。


「何してるの?」


「わからない……気付いたらここに」


 リナは彼の腕をつかみ、優しく微笑んだ。


 しかし、突然空は曇りはじめ、平和だったはずの景色が薄暗くなる。


「アイズ、私たちは終わらせなきゃ。この戦争を」


 リナの姿は大人へと変わり、その言葉はアイズの胸に刺さった。アイズは何も言えないまま彼女が遠ざかるのを見つめる。



 目を覚ますとアイズは夢だったことを理解するも、彼女の言葉が胸に残り続けていた。


 あの戦闘から一週間は経った。

リナの言葉がアイズの中で繰り返される。ペチンッ、と自らの頬をはたくと、アイズはドアを開けた。


「おいアイズ! やっと起きたか。お前が寝坊なんて珍しいな?」

 部屋から出ると、廊下の向こうで待っていた仲間のダッグが笑いながら話しかけてくる。彼とは入隊試験の時からの長い付き合いだ。


「……少し、夢を見ていただけだ」


 アイズがつぶやくと、ダッグはアイズの肩を軽くたたきながら笑った。


「夢? お前まさかリナの夢でも見たんじゃないか?」隣にいた

カインがにやりと笑う。


「ああ、アイズがこんな顔をするなんてリナしかないな、絶対。顔、真っ赤だぞ」


「ち、違う! こ、これはただ……」


 慌てて否定するアイズにカインはさらに笑みを深める。


「ま、いいさ。でも、リナのことばっかで任務のこと忘れんなよ」


「そうそう。お前は次の任務控えてるんだからさ」


「……わかってるよ」 


アイズは肩をすくめる。


 常に死と隣り合わせの戦場では、ちょっとした冗談が重苦しい空気を和らげる。


「リナ、君に会えるのも、そう遠くはないかもね」

                                   つづく


~あとがき~

今回も見てくださりありがとうございます。

面白かったら応援、フォロ―よろしくお願いします。

それではまた次回もお楽しみに~

次回、ダッグ死す!?(冗談)

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