【完結】悪役令嬢は王太子のバチェラー(婚活バトルロワイヤル)に招待されました!~私を愛することはないっていいながら、特別待遇なのはどうして?~
第5話 語りつがれることとなってしまったバチェラー開幕戦
第5話 語りつがれることとなってしまったバチェラー開幕戦
今まで演じてきた数々の悪役令嬢たちを、私の
自分の顔が変わっていくのがわかる。苦悩を顔にはりつけ、辛さで化粧をし、屈辱で紅を塗る。
目があった令嬢が、腰を抜かした。ある令嬢は他の令嬢の後ろに隠れてしまった。
腰を抜かした令嬢はワインボトルを持っていた。私はそれを借りると、ボトルからワインを垂らし、口に塗ったくった。より、紅が強調されただろう。令嬢にボトルを返した。
「アハハハハハハ、アハハハハハハ。この王城の地面はだれかの血とワインを吸っているから、こんなに元気なのでしょうか」
笑うと、取り囲んでいた令嬢たちが、後ろに飛ぶように避けた。
「あらあら、どうしてお逃げになるのですか」
いままで侮蔑の表情で見下していた令嬢たちの顔が青くなり、脂汗がでてきた。
「あなた方も、私の仲間です。だって、私と同じ、悪役令嬢そのものですもの。バチェラー、結婚。女の一生が決まる大事なイベントごとに場違いな、顔がこわーい下位貴族の小娘がいたら、勘にさわりますね。暴言のひとつやふたつ、ついてもいいとお思いでしょう」
言葉を切って、私をドラキュラ扱いした令嬢(令嬢自身も肌が白く、唇が細くて赤い。伝承のドラキュラに似ていた。コンプレックスを私にぶつけたのかな?)と、化け物扱いした、ギトギトした化粧の令嬢に近づく。2人ともカタカタとふるえ、その場から動けなくなった。
「あなた方の暴言は、とてもよかった! たしかに私は吸血鬼、化け物といった容姿をしております。とてもよい、悪役令嬢友達になれそう。どうです? いまから一緒にお茶会でも」
満面の笑みをむけると、ドラキュラ令嬢はその場にへたりこみ、ギトギト令嬢は一目散に逃げてしまった。
「あらっ。大事なバチェラーを辞退されるのですか? もったいない! もどっていらして!!」
そんな声を無視し、令嬢とは思えないほどの速さでギトギト令嬢は逃げ去った。
そして、ドラキュラ令嬢は足をふるわせ、涙を流した。どうやら、粗相をしてしまった様子。
「あらっ。申し訳ございません。お近づきになりたかっただけなのですが」
ドラキュラ令嬢の股の部分にハンカチを当てた。
「こ……こんな屈辱ははじめてだ! 絶対許さないから! 触るなっっ!」
ドラキュラ令嬢は男性のようなしゃべり方をしてさらに粗相の幅をひろげた。涙や色々なものでグズグズになったドレスを抱いて、泣いた。
やりすぎたな、と思って、悪役令嬢の
「代えのドレスはありますか? ないなら妹がたくさんのドレスを持っていますから、使ってください」
「っっ!! ……感謝する」
私は殿下にあたまを下げた。
「私、やり過ぎたのではありませんか。殿下が選んだ大切なご令嬢を1人辞退させてしまい、お1人には致命的な痛手をあたえてしまいました……」
「いや……。素晴らしかったです。バチェラーとは、バトルロワイヤルです。王太子妃は厳しい責務。ここで脱落してしまうような者には務まりません。とても良い演技でした」
ニーナが近づいてきた。
「姉さま。大丈夫?」
「ええ。問題ないわ。それより、ドレスの余りはある? ……さきほどの令嬢に貸してあげてほしいの」
ニーナは歩みを止めた。
「あまっているドレスはないよ。全部、私のものだから」
ニーナは清々しいほどの笑顔で言った。
「そう……。では、他の方に当たりましょう」
「それより、ほんとうだったんだ……バチェラーに参加すること」
ニーナはまた、歩みを止めた。私も立ち止まる。
「ええ、悪役令嬢としてだけどね」
「だめだからね。殿下は、姉さまには絶対にあげないから。いつもどおり、私に譲ってね」
ニーナはそのまま、私を見ないで行ってしまう。
ニーナは昔から、私がどんな立場に置かれているのかまったく理解していない。
「ではバチェラー参加者は集まってください。ご案内します」
殿下の声にぞろぞろと令嬢たちは王城へ入っていった。
殿下は壁に立てかけてあった細長いものを直接、私に手渡してきた。
「えっっ?」
ずっしりとした質感に、すこし肩が動いた。
バチェラー、令嬢、ドレス。それらとはあまりにも違っている場違いなもの。
木製の……バット、ですけれど。
首をかしげた。バットの木目をじっとにらみ、殿下を見た。
「どうぞ、これで、あなたをドラキュラ呼ばわりした令嬢を叩きのめしてください!」
にっこり、微笑まれる殿下。
私の貼り付けていた笑顔は、いとも簡単に剥がれ落ちたのだった。
そ、そこまでやるのですか。これが、
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