第32話 反省会
————翌日の放課後。
昨夜は様子のおかしい
あの時は夜が遅いこともあって、そのまま解散ということになり、登校日に改めて集まることにしたのだった。
そんなこんなで屋上にやってきた私、久美だけど——冷たい外気に包まれて、思わず身震いする中、
すると、殿宮くんはこれでもかというほど大きく見開いて驚く姿を見せた。
「ぇえ!? 俺が
「ちょっと友樹くん、もうちょっとオブラートに包んでよ……」
「どうしてだ? 本当のことだろう」
友樹くんがあまりにもストレートに説明するものだから、殿宮くんはショックを受けているようだった。
「でも、恥ずかしいんだけど」
「そうか。それはすまなかった」
「わかってくれればいいよ」
「初めてのキスだということも伏せた方がいいのか?」
「ちょっと、友樹くん!?」
素直すぎる友樹くんに私が狼狽えていると、殿宮くんは真面目な顔をして告げる。
「俺、久美さんにキスしたんですか? 上手にできましたか? それとも——」
「殿宮くん、それ以上言ったらいくら私でも殴るよ」
「殿宮さんがキス!? ずるい! ククルスばっかり」
ふいに、後ろから声がしたかと思えば、
「花柳くん?」
「……すみません。なんでもないです」
「とにかく、友樹くん——何もかも言うのはやめて!?」
「わかった。ノルンのプライバシーを守ろう」
「もう遅いけどね」
「久美さんは
「そんなことないよ。これ以上言ったら絶交するつもりだし」
「これ以上って、キス以上のことをしたんですか!?」
花柳くんが驚いて飛び上がるのを見て、私は慌てて否定する。
「してないよっ!」
すると、殿宮くんが至って真面目な顔で告げる。
「そうですよ。それ以上のことをしていたら、久美さんは俺にメロメロになっていたはずですから」
「殿宮くん、やっぱり殴っていい?」
「久美さん、今日は好戦的ですね」
「それで今日はこんな屋上で……俺が久美さんを襲ったという話をしに来たんですか?」
「違う違う、そうじゃなくて……誰かが殿宮くんを操っていたみたいなの」
「操る? どうやって?」
「魔法で」
「俺たちの他にも魔法使いがいると?」
「たぶん」
私が曖昧に頷くと、全部聞いていた花柳くんも考えるそぶりを見せる。
「殿宮さんを操った誰かは、どうするつもりだったんでしょうか」
「魔法が絡んでるみたいだから、花柳くんにも来てもらったのよ。もしかして、あなたや
「まさか! 僕たちは何もしてませんよ」
「そうですよ! あれ以来、待田さんとククルスには攻撃なんてしてませんし」
花柳くんの後ろから盛田くんも現れる。どうやら話を聞いていたらしい。自分は違うとばかりに
「そういえば、私が蒼くんに捕まってた時、花柳くんと盛田くんが友樹くんたちに危害を加えたんだよね」
「こら花柳くん、キミ余計なこと言ったね?」
「すみません、盛田先輩」
盛田くんが花柳くんをたしなめるのを見て、私はさらに訊ねる。
「具体的に何をしたの? 殴り合い?」
「そんな可愛いものじゃありませんでした」
殿宮くんが真面目な顔で告げると、友樹くんが口を挟む。
「こら、殿宮。あの時のことはノルンには内緒にする約束をしただろう」
「そんなことを言ったら、バレバレじゃないですか」
「で、何があったの? 教えて」
私が強い口調で訊ねると、四人は黙ってしまう。
「言わなかったら絶好だからね?」
「今日のノルンは厳しいな」
「友樹くんが変なこと言うから、気になるんでしょ!?」
「そうか」
「さあ、白状しなさいよ」
「実は……」
それから友樹くんは、私が捕まっていた間のことを教えてくれた。
盛田くんと花柳くんが魔法で友樹くんを攻撃したこと。
そして友樹くんがさらに強い魔法を見せつけて、盛田くんたちを降参させたこと。
全てを聞き終えた瞬間、私は声を上げた。
「ええ!? 盛田くんと花柳くんが友樹くんをガラン王子だと思って殺そうとした!?」
「すみません」
しょんぼりと肩を落とす盛田くんと花柳くんだったけど、私は簡単に許したりはしなかった。
「すみません、じゃないよ! いくらガラン王子に似てるからって、どうしてそこまで? 友樹くんが強くなかったら、大変なことになってたよね」
「本当に面目ない」
盛田くんは反省したように項垂れていたけど、私はなんだか嫌な気分になって身を翻す。
「……ノルン、どうした?」
「悪いけど、盛田くんと花柳くんとはしばらく話したくないから」
私が出口に向かうのを見て、殿宮くんも声をかけてくる。
「久美さん、どこ行くんですか?」
「帰るの」
「じゃあ、俺たちも」
「ダメ。今日は一人で帰る」
「どうして?」
「大事なことを黙ってた友樹くんや殿宮くんも同罪だよ!」
「そんな……」
いつも流されてばかりの私だけど、こんなに怒ったのは初めてかもしれない。
自分の知らないところで、自分を巡って争いがあったことを聞いて、どうしても耐えられなかった。
もう、忘れたいのに……どうしてみんな前世を掘り返そうとするんだろう。
私はもう、前世とは違う人生を送りたいのに。
「ああ、もう。今夜はやけ食いだね」
そして下階に続く階段を降りていたその時——。
「——あの、ノルンさん」
「あ……友樹くんの弟の——
短く刈り上げた頭に、体格の良い男の子に声をかけられて、私は思わず目を瞬かせる。
確か、
「ちょっと生徒会長のことで、一緒に来ていただきたいんですが」
「生徒会長がどうかしたの? 別にいいけど、どこに行くの?」
「なに、すぐそこですよ」
***
————翌朝。
久美に遠ざけられたもの、どうしても謝罪したい
「おはようございます、
いつも久美と一緒にいる真紀に声をかけると、真紀は目を丸くして告げる。
「久美? 久美ならお休みみたいだよ」
「休み?」
「うん」
「そう……ですか。昨日は元気そうに見えたのにな」
匡孝が考えるそぶりを見せる中、ガラガラと戸が開く音とともに
「殿宮、ノルンは?」
「それが、今日は休みみたいで」
「昨日はあんなに元気だったのに?」
「そうですね……メッセージに既読もつきませんし……あのあと、熱でも出したんでしょうか?」
殿宮の言葉に、妙な胸騒ぎを覚えた友樹は、久美の机をじっと見つめた。
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