第8話 「黄、青、赤、そして幸せ色に染まる、私たちの世界」お題・色相

 黄色い傘で、二人で相合傘あいあいがさで帰る。

 私の持っていた女性用の折りたたみ傘は小さくて、二人とも傘から体がはみ出し、青色のブレザーに雨がみ込んでくる。


 けれど、これ以上くっつくことも出来ない。

 相合傘に誘っただけでもキャパオーバーなのに、これ以上何かしたり、言ったりしたら心臓が破裂はれつしそうだ。


 そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか私の体には雨が当たらなくなっていた。

 見ると、これ以上私がれないよう、傘を持っている彼がこちら側に傘を差し出してくれていた。

 あわてて、彼のほうに傘を押し出す。


「だ、駄目だよ。君が濡れるよ?」

「俺はいいよ。傘に入れてもらっただけでも、嬉しかったんだし。……まして、相手が君だから」

 そう言って、傘の下でうつむいた彼の顔は少しだけ、赤くなっていた。

 それを見て、私も顔が熱くなる。


 黄、青、赤。様々な色に囲まれた私たちの世界は、ほのかに幸せ色にまっている気がした。

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