第33話 聖女様とテレビゲーム

 水沢さんが家に来てから少し経ち、俺たちは一緒に対戦ゲームをすることにした。テレビの前に二人で並んで座り、コントローラーを手に取る。


「益山くんって、こういうゲーム得意そうだよね?」


水沢さんは少し緊張した様子で言う。


「まあ、そこそこ得意かもしれないけど、そんなに気負わずにやればいいよ。ゲームって楽しむものだからさ」


「うん、そうだよね!でもせっかくだから、ちょっと本気で頑張ってみようかな!」


 まぁたしかにこのゲームはかなりやりこんだ方だし、二人で遊ぶのに対戦ゲームをやる、というのは如何程のものか、とは思う。

 でも水沢さんがこれがやりたいって言っただけなので。しょうがないっ!


 そんな水沢さんの顔が少し真剣になるのを見て、俺も気合いが入った。


 ゲームがスタートし、俺たちは最初から白熱した勝負を繰り広げた。ゲームの内容は、アクションと戦略が重要な格闘ゲームだ。


 何度も練習してきたこのゲーム、さすがに水沢さんには負けない自信があった。


「えいっ!」「おっと、こっちだ!」


 水沢さんが操作するキャラクターが俺のキャラクターに攻撃を仕掛けてくるが、俺はそれを軽々とかわして反撃に出る。

 何度か対戦を繰り返すが、やはり俺の方が一歩リードしている。


「うぅ…なかなか勝てないなぁ」


 水沢さんは少し悔しそうに唇を噛んだ。

 俺もさすがに彼女をずっと負かし続けるのは申し訳ないと思い、少しアドバイスをすることにした。


「水沢さん、攻撃のタイミングをもう少し変えてみるといいかも。相手が防御している時に無理に攻撃するよりも、少し引いてから一気に攻める方が効果的だよ」


「なるほど…タイミングをずらす、ね」


 水沢さんは俺のアドバイスを真剣に聞いてくれて、次のラウンドでは実践してみることにした。


 そして数回目の対戦。


「おっ、いい感じじゃない?」


 水沢さんの動きがだんだん鋭くなってきて、今まで簡単にかわしていた攻撃が、思ったよりも的確に当たるようになってきた。彼女の成長スピードには驚かされる。


「よし、このまま行くよ!」


 水沢さんは勢いに乗って、俺に猛攻を仕掛けてくる。

 なんとか反撃を試みるものの、彼女のタイミングが完璧に合い、こちらの防御を突破していく。


「しまった………!」


次の瞬間、俺のキャラクターが倒れ、ゲーム画面に「YOU LOSE」の文字が表示された。


「やったー!勝ったー!」


 水沢さんは両手を挙げて大喜び。俺は少し驚いたが、その笑顔を見ていると自然と笑みがこぼれた。

 こ、こいつすごい才能だ……!


「すごいな、水沢さん。まさかここまで成長するとは思わなかったよ」


「ありがとう!でも、益山くんのアドバイスがあったからこそだよ。ほんとに嬉しいなぁ」


 水沢さんは目を輝かせながらコントローラーを置いた。彼女がこんなに楽しそうにしている姿を見ると、俺もなんだか幸せな気持ちになる。

 にしても末恐ろしい成長速度だ……。


「はぁー!楽しい!」


 大きな笑顔を浮かべる水沢さん。その無邪気な表情に、俺は胸が温かくなった。


 その後も俺たちは何度も対戦を繰り返した。


 俺が勝ったり、水沢さんが勝ったりと、勝負は交互に進んでいく。

 けれど、どんな結果でも二人で笑い合って過ごす時間は、本当に心地よかった。


「益山くんとこうしてゲームするの、すごく楽しいね」


「俺もだよ。なんだか、こうやって一緒に何かを楽しむのって、やっぱり友達といるからこそだよな」


 俺たちはゲームの手を止めて、少しの間その余韻を味わっていた。


「次は何しようか?」


 と水沢さんが楽しそうに言い、俺は次の遊びの提案を考えながら、彼女との楽しい時間が続くことに感謝した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る