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第20話
殻が割れ、分厚い綿を燃やした先に隠れていた「忘れさせてほしい」という願い。それが見えた先に待っていたのは、随分と直接的で乱暴な干渉だった。
無慈悲に思考回路を断つ。意識を引っ張り落とす。一時的に、忘れる。
でも、何だか両方の腕を使って慰められた気がした。不破に触られることは、やっぱり嫌ではなかった。
目が覚めるとベッドの端にいた。不破の姿はない。シャワーを使う音もしない。体を起こした。体に残る余韻と、もう一方のベッドの乱れには、気付かないふりをした。
リビングにも姿はなかった。当たり前だ。この部屋の静けさが、ここには私しかいないことを教えている。
「……夜の間にお礼を言うべきなのね」
ため息を吐いて、ふとテーブルに目が止まった。
テーブルの上には昨日の私が着ていた洋服があった。綺麗に畳まれている。確か昨夜不破が、クリーニングサービスがある、というような話をしていた。それを利用してくれたのだろうか。
「お礼くらい、言わせてくれてもいいのに」
1人きりの部屋にしゃがみ込んだ。
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