おとなりは、ブルー

48話‎𖤐

祝!給湯器復活ー!!おめでとう!拍手!!


留守番電話に届いたメッセージを聞いて、ため息をひとつ。いや、そんなふうに落ち込んではならない。

親元を離れて一人暮らしをしている女の子の為にと、大家さんがわざわざ委託している不動産会社に連絡して、早めにと手配してくれたらしい。なんて優しく親身で仕事がはやい大家さんだ。


喜ばしいこと、なのに。



《給湯器、無事に復活しました。いままでありがとうこざいました》



今日、本当は会えるはずだったのに、元の形に戻っただけ。落ち込む必要なんてひとつも無いのに、むなしさが残る。


……これで会う理由が無くなっちゃった。


送ったメッセージを眺めて、腕の筋肉を休ませる。


いやいや、隣に住んでいる利点を盛大に活用して、たまに、偶然を装ってベランダに出たらいい。そうだ、そうしよう。


偶然を装ったとして、わたしの勝ち目はいかほどか。


和泉さんは、妹の子守りからやっと解放されて肩の荷を下ろしているのだろう。ようやく好きな人とのアレコレに専念できると安堵しているのかもしれない。


……そうだ。和泉さんには、好きな人がいる。それをわたしは決して忘れてはならないし、心に刻むべきだ。


変に会う約束は作らずに、偶然、会えた時に話そう。



神様、それから、お母さん。


好きな人に、好き、と。たった一言を言えないわたしに、勇気をください。

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