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第97話

自分の気持ちに余裕が出てきたのかもしれない。




新の家に転がり込んだときは「殺されたくない」「何もしたくない」の2つの感情しかなかったのに。今の私、どうしちゃったんだろう。



文香とのおしゃべりは心底楽しいし、お菓子作りは頑張ってるし、姉がどうしているのか知りたくなっている。



新は元気になったんだねと喜んでくれたけど、私が「新に寄りかかったままでいいのか」という新しいモヤモヤを抱え始めたことは知らない。



状況は好転しているように見えて、実はその場で足踏みしていただけ……とかなってないかな。やっぱりちょっと不安なモネである。




 

とりあえず姉について新に相談すると、ちょうどインドさんから調査の中間報告をしたいと連絡がきていたらしく、リモートで話を聞くことになった。

 

 



『お姉さんは会社と家を往復する毎日を送ってます。三日前から、家から一歩も出てないのが少し気になるぐらいですかね』


「……お姉ちゃんはダブルワーカーで、会社の閑散期は在宅ワークしてた」


『じゃあ、いつも通りの日常ってことなのか』

 




私がいなくなっても、姉は普通の日々を送っていることを知って、ホッとしたようなもの寂しいような、複雑な気持ちになった。この気持ちを表すことばが何も出てこない。そのくらい、説明できない感情だった。

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