第95話

ボールにバターと砂糖と卵黄を入れて、ヘラで混ぜ合わせていく。隣で新が小麦粉とアーモンドパウダーのグラム数を測っている。鼻歌を歌うぐらいには上機嫌だ。




 

「なんか、嬉しそう?」


「すっごく嬉しいよ。モネにやりたいことが見つかったんだから。しかも、俺を頼ってくれて。今日は記念日だね」


 

 


新はいちいち大袈裟で困る。自分のことのように喜んでくれるから、私はなんだかむずむずしてしまう。



しっぽを立てて新にすり寄りたい、頭をこすりつけて甘えたい。そんな衝動とたたかう羽目になるので、新との暮らしも快適ばかりじゃないのだ。

 

 



「モネはお菓子作りが好きなの?」


「うん」


「食べるのも好き?」


「どっちも好き。だから、三角耳が出てもバレないように、帽子の制服がある和菓子屋さんとか、ドーナツ工場とかで働いてた」


 


 

新のうつくしい青い瞳が細まって、頭と三角耳をするりと撫でられる。

 

 



「これからはモネが作りたいものを作っていいんだからね」


「……うん」

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