第88話

用事を終えた男が、興味深そうにこちらをじろじろと見てくる。私の尻尾は怖さを紛らわせるように、新の腰にぎゅうぎゅうと巻きついた。





「猫ちゃん、ちょっと見ないうちに赤ん坊みたいになってんな?」


「……童顔マンに言われたくない」


「あ?誰が童顔マンだコラ」



 


肉食動物のような獰猛な目で睨まれるのはかなり怖かったけど、新の腕の中にいる私は気持ちが大きくなっていた。負けじと睨み返せば、男は馬鹿にしたような笑い声を上げる。

 



 

「お前さあ、カインドに甘やかされるだけの人生、楽しいか?情けないとかダセェとか思わねえの?」


「う、うるさい……そっちこそ新にビビってんのめっちゃダサいから。殺し屋なのに死ぬのが怖いとかダサすぎ!」


「ああ!?誰だって死ぬのがいっちばん怖いだろ!?カインドがいなけりゃなにもできない猫女が調子に乗ってんじゃねえぞ!」


「私だっていざとなれば1人で生きていけるもん!てか、生きるし!人間として!」




「モネ、相手にしなくていいんだよ」




 

息を荒くする私の背中を撫でたあと、新の冷ややかな視線は男へと向けられた。

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