第84話

煮え切らない言葉にイラッとして、我慢できずに言ってしまった。恋愛には興味ないくせに、という余計な一言は喉元でぐっと押し殺してあげた。



違うと否定されるだろうな。だから一応身構えていたけど、新は驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返している。




 

「嫉妬……?」

 




漢字2文字を舌の上で転がすように呟いたあと、ぱあっと花が咲いたように笑う。

 




「ああ、そうかも。これが嫉妬か」





新の眼差しが垂れ下がり、空気の甘さ濃度が急上昇した。これは、予想外だ。




余計なことを言ってしまった気がして、私は焦りで目を泳がせた。

 




「あの、ち、違うかもよ?」


「いや、当たってると思う。だって、俺はモネを独り占めしたいんだから」

 




……私は項垂れるしかなかった。



新がタチの悪い飼い主へとレベルアップしたみたい。恋愛に興味のない人が独占欲を覚えてしまうの、絶対良くない。いろいろとややこしくなるじゃん。



あと、この私の鼓動の高鳴りも良くない、本当に良くない。あーもう、勘弁してほしい。


口角が上がりそうなのを必死に堪えてる私は、嫉妬されて喜んでいるみたいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る