第83話

「文香ちゃんとは友達になれた?」





新の笑みに、違う何かが混じっている。それに気づいた私は、熱々のチーズと戦う手を止めた。





「わかんない」


「まだわかんないの?2人でヒソヒソと仲良く話してたのに」





ピクッと三角耳が震えた。気のせいだろうか。新の言葉に棘があった、ような。

 




「何を話してたの?」


「……言いたくない」





新は一瞬、物悲しげに瞳を揺らした。すぐにいつもの穏やかな表情に戻ったので、幻でも見たような気分になる。

 




「俺、モネには一番に頼られてると思ってたな」


「それは、そう。頼りっぱなしだよ。新がいなかったらとっくに殺されてるし」





私がぐーすか寝ている間に刺客は送り込まれている。その人たちを新が音もなく叩きのめして追い払ってくれているのだ。



新はなにも言わないから、内緒にしたいのかもしれないけど。私たちはずっと一緒にいるから、流石に気付いていた。

 




「そうじゃなくて……うーん、なんて言えばいいのかな」

 



 

マグカップ片手に長い足を組んで思案する新は、しっくりくる言葉を探すように、形のいい唇を動かし続ける。

 




「モネに隠し事されると、なんとなく、不安になるというか……。文香ちゃんと仲良くなって欲しいと思っていたはずなのに、いざその現場を目にすると、モネをこう、腕の中に閉じ込めておきたくなったんだよね」



「……新、嫉妬してる?」

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