第82話

コーヒー豆の配送を終えたあと、新はシャワーを浴びに行く。その時には大体日が暮れている。冬は日が短いし、近くに街灯もないから外はすぐに闇に包まれる。



少し前までは、長い夜が始まると底なしの沼に沈むような気持ちになっていたけど、今はだいぶ落ち着いた。





今夜の夕食は新の手作り照り焼きチキンピザだった。甘辛く味付けした鶏肉ときのこがたっぷりのっている。食欲をそそる匂いにお腹が鳴りそうだ。



お茶とスープを準備するのは私の役目。それらをテーブルに置いて、二人で向かい合わせに座ってからいただきますの挨拶をする。





……手を合わせる新は纏う空気すらも美しかった。瞼を持ち上げて、私を捉えた青い瞳が細まって、そこに光が敷き詰められていく。



文香が鑑賞、と表現していた理由がとても分かる。新の容姿端麗具合は他の人とは次元が違う。勝手に視線が吸い寄せられるというか。




こんなに目立つ見た目をしているのに、よく殺し屋家業をやれてたなと思う。これは新の七不思議のひとつだ。




……ああ、まただ。油断するとすぐ見惚れてしまう。




私は思考をぶった斬るために、目の前のピザにガブリとかみついた。

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