第80話

思い切り眉を寄せつつ吐き捨てるようにそう否定すると、文香の猛攻がぴたりと止んだ。





「恋人じゃない……?」


「うん。ちがう」


「えっと、じゃあ、お二人はどんな関係で?」


「わかんない。近いのは……主人と飼い猫?」



 


ガタガタと慌ただしく席を立ち、仰け反る文香はこう叫んだ。

 



「主従プレイってことですか!?」と。






新が戻ってきたとき、私は文香の口を手で塞いでいる状態だった。



顔が真っ赤な私と後ろに倒れないように抵抗する文香。そんな私たちのどこをどう見たらそう捉えられるのか、新は「仲良しだねえ」と笑っていた。


 




蔵の入り口で、新と二人で文香を見送る。



その間、私はそわそわして落ち着きが全くなかった。どうしても文香に聞きたいことがあって、どうしようどうしようと迷いに迷って。



結局我慢できなくなった私は、新の腕の中をすり抜けて、白バンに乗り込む文香の背中を追いかけた。


 



「文香!」


 



運転席に腰掛けた文香は、なんとも言えない表情をしている。




 

「……モネさん、ご年齢は?」


「え、ねんれい?二十歳だけど」


「ああ、やっぱり。歳下ですよね……いやいいんですよ?私の名前如き気安く呼んでいただいて……」


「?」

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