第75話

「新。これ……何?」



 


最近は手伝いの合間に宅配の荷物整理もするようになった。でも、先ほど届いたこの木箱には大量の麻の袋が入っていて、これ以上開けることを躊躇してしまう。



まさかマヤk……?と恐れ慄きながら伝票を確認してみても、送り主の名前が日本語じゃないから読めない。




 

「コーヒー豆だよ」




 

顔をあげれば、新がすぐ近くでニコニコと微笑んでいた。





焙煎前のコーヒー豆は香りがほとんどしないと言う。



なんだ、無駄にドキドキしちゃった。新の元殺し屋という肩書きのせいで、反社会的な発想が先に来てしまう。

 





「書いてある言葉、全然分かんない」


「ポルトガル語だね。南米から送られてくるから」


「ふーん。これ全部でいくらするの?」


「ん?無料だよ」


「……無料?」


「うん」




 

……いや、無料なわけがない。



むしろ高いんじゃないの?日本から見たら南米って地球の裏側にあるんでしょ?輸送費だけでもすごいお金かかると思う。




もしかして私を揶揄ってる?馬鹿にしてる?そう思って懐疑的な目で新を見ても、彼には全然伝わってない。むしろどこか嬉しそうな、はにかむような子どもっぽい笑みで見下ろしてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る